2026.07.03
【将棋世界】女流棋士の現在地 森本理子女流1級
森本理子女流1級は、名古屋市立大学医学部医学科に在籍しながら、2023年に女流棋士としてデビューした。現在は5年生として病院実習に臨む一方、女流棋士として公式戦にも出場している。限られた時間の中でどのように対局に向き合っているのか。現在の課題、自身の棋風、女流順位戦での手応え、そして女流初段への思いを聞いた。
もう一回り強くなりたい
──2023年に女流棋士になられてから、公式戦での対局を重ねてこられました。ここまでを振り返って、どのように感じていますか。
「2024年は勝率も5割を超えていましたが、昨年度は少し成績が落ちたように感じ、昇段とはなりませんでした。『もう一回り強くなりたい』と自分では思っています」
──女流棋士になる前と後で、対局への向き合い方に変化はありましたか。
「女流棋士になる前では主に道場や大会で1日に何局も指したりしていました。研修会でも1日に4局指しました。しかし女流棋士になると、アマチュア時代と比べると持ち時間が長くなりました。最初はそのスタイルに慣れていませんでした」
──今は慣れてきましたか?
「はい。最近では持ち時間が長い方が考える時間が多く、楽しいと感じるようになりました」
課題しかない
──戦型選択については、どのように考えていますか?
「1つの戦型を研究するのも好きなのですが、様々な戦型を指すことも好きです。自分が楽しく指すことを意識しています」
──現在の課題はどこにあると感じていますか?
「課題が多いなと感じています。序盤も中盤も終盤ももっと研究しなければいけないと感じています。対局する時間を確保して、実戦の勘を鈍らせないようにしないといけないと思っています」
棋風は攻め将棋
──ご自身の将棋の特長を言葉にすると、どのような棋風ですか。
「自分では攻めっ気が強いと思います」
──それは大きな長所ですね。
「はい。いいところでもあると思うのですが、使い分けをもう少しうまくできたらいいなと思っています」
──持ち時間については、長い将棋と早指しのどちらが好きですか。
「どちらも好きです。ただ、周りからは早指しのほうが得意なんじゃないかと言われることが多いです」
──師匠の澤田真吾七段を参考にしている部分はありますか?
「澤田先生はすごく落ち着いていらっしゃるので、そこを見習いたいと思っています。私は顔に出やすいタイプなので」
──女流順位戦については、どのように捉えていますか。
「いろいろな方と対局できるので、すごく勉強になりますし、そういう機会をいただけるのはありがたいです」
──年間を通じて戦う棋戦でもあります。それについてはいかがですか?
「一年間を通じて戦うので、調子に波がある状態では勝ち続けるのが難しいと感じております。安定した実力をつけたいと感じます」
──現在、女流順位戦では白星を重ねています(※取材時4勝1敗)。手応えはいかがですか。
「手応えというよりは運よく勝つことができたのかなと。このまま頑張って、勝ち続けられたらうれしいです」
──好調の要因はありますか。
「好調という感じはしておりません。ただ、事前に次の対局相手がわかっていて、対策にかけられる時間が長いというのは大きいかもしれません」
──今期の目標は?
「やはり、昇級です。あとは健康に気をつけて頑張りたいと思います」
初勝利の喜びと、苦しい局面で見つける一手
──これまでの対局の中で、印象に残っている対局はありますか。
「女流棋士としての初勝利は印象に残っています。デビュー戦で今井絢先生に負けて、次もまた連続で今井先生との対局でした。その時に勝った対局は印象に残っています。女流棋士としての1勝目は、やはりうれしかったです」
──将棋を指していて好きな瞬間はどんなときですか。
「いちばんは勝ったときです。もう1つは、形勢が変わるような手を指せたときはとてもうれしいです。例えば、一見指す手が難しく見える状況の中で、詰めろ逃れの詰めろのようなよい手を思いついて形勢が変わるときはとてもうれしいです」
いい将棋を指して、たくさん対局したい
──目標にしている先生はいらっしゃいますか。
「特に目標としている特定の方はいないです」
──棋士では?
「奨励会という厳しい世界を突破されており、棋士の先生方皆さん尊敬しております」
──福間女流五冠、西山女流三冠の二強の状況については、どのように見ていますか。
「やはり実力があるからこその二強だと思います。棋譜を見て研究して、自分に足りないものを補っていきたいです」
──最後に、今後の抱負を聞かせてください。
「昨年度は勝率5割に届かなかったので、今年度は勝率5割以上の成績を残して女流初段に昇段したいです。また、たくさん対局するためにも勝ちたいですし、いい将棋を指して、応援してくださっている方の期待に応えられるように頑張りたいです」
医学部5年生として多忙な日々を送る森本女流1級にとって、将棋に使える時間は決して多くない。それでも、空き時間を見つけて一局に向けた準備を重ねている。
「もう一回り強くなりたい」。その言葉には、現状への課題意識と、さらに上を目指す意志がにじむ。医学と将棋、2つの道を歩む森本理子女流1級のこれからに注目したい。
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