2026.06.03
【将棋世界】女流棋士の現在地 岩佐美帆子女流初段
2022年にデビューし、今春2026年4月に女流初段へと昇段した岩佐美帆子女流。岐阜で将棋と出会い、着実に力を伸ばしてきた。豊島将之九段に師事し、勝ち切る力を求めて研鑽を重ねている。現在の課題やこれからの目標などについて語っていただいた。
昇段という節目
──女流初段へのご昇段、おめでとうございます。
「ありがとうございます。女流1級には1年でなれたのですが、そこから初段になるまでに3年かかってしまって……。やっと昇段できたので、ほっとしました」
──周りの反応はどうでしたか?
「地元・岐阜の方々からも『早く初段になって』と言われていて、対局のたびに『あと〇勝だよ』と声をかけていただいていたので(笑)、ようやく応えられてよかったです」
師匠・豊島将之九段
──女流棋士になってから変化したことはありますか?
「将棋のスタイルは昔からあまり変わっていないかなと思います。自分ではどちらかというと受け将棋だと思っていたのですが、師匠から『攻め将棋だよ』といわれて認識を改めました。負けず嫌いで強気なところが、そのまま将棋にも出ているのかもしれません。無理に攻めて自分から崩れてしまうこともあるので、そこは気を付けています」
──得意戦法はありますか。
「子どもの頃は矢倉を指していて、棒銀で攻める将棋でした。今は角換わりも指しています」
──矢倉や角換わりは豊島九段も指しますが、将棋を参考にすることはありますか?
「師匠の棋譜は並べて勉強しています。最近は角換わりは少なくて力戦調の将棋多いですが」
──将棋のことで豊島九段から怒られることはありますか?
「師匠は優しいので怒られることはないです。悪い手を指してしまった場合もダメ出しするのではなく、会ったときに『こうやって考えるといいよ』とアドバイスをしてくださいます。逆に、私が内容のよい将棋を指せた時には『あの将棋はよかった』というメールをくださったり、イベントでお会いした時に直接伝えてくださったり……。いつも気にかけていただいて、本当にありがたいです」
順位戦とリーグ戦、その現在地
──女流順位戦について教えてください。
「月に1回必ず対局があるのはありがたいなと思います。現在はD級に在籍していますが、前期は2勝6敗で降級点ギリギリでした。先後が決まっていて準備ができる棋戦なので、そこで勝てなかったのはすごく悔しかったです。実力が足りていないことを実感しました」
──トーナメント戦との違いは?
「前々から日程が決まっているので、そこに照準を合わせて臨めます」
──D級所属という現在地に対する自己評価は?
「同世代でC級に上がっている方もたくさんいるので、自分も早く上がりたいという思いがあります。ただ、実力的には五分五分かなという感覚です。より勉強に励まないといけません」
──今期の手応えはいかがですか?(※インタビュー時点で3勝1敗)
「今期は前期よりはよいので、少し安心しています」
──その他の棋戦で意識するものはありますか?
「全部大事ですが、女流名人戦と女流王位戦は予選を勝ち抜くとリーグ戦があるので、そこで戦ってみたいという気持ちはあります。公式戦でたくさん対局したほうが強くなれると思うので、リーグ入りできるように頑張りたいです」
勝ち切るために
──理想とする将棋を教えてください。
「序盤でよくなった時に中終盤で逆転されることがよくあるので、優勢の将棋をそのまま勝ち切ることが理想です」
──そこを目指すうえでの現在の課題は?
「やっぱり終盤かな、と思います。考えないといけない局面でパッと指してしまって崩れることがあるので……。どこが大事な局面なのかを見極める力と、そこで最善手を指す力をつけたいです」
──普段の勉強法を教えてください。
「研究会で指した将棋を振り返って、自分の考えた手とAIの手を比較しています。あとは詰将棋と棋譜並べをしています」
──棋譜並べはどのようにしていますか?
「駒を並べるのは、休みの日など時間があるときに2時間くらいです。普段はパソコンで見ることが多いです」
──自分の将棋の特長、ここを観てほしいという点はありますか?
「対局によって全然違いますが、序盤で差をつけて、そのまま勝ち切ることができた将棋は観てもらいたいです」
その先を見据えて
──今年度の抱負を教えてください。
「1つは女流順位戦の昇級。あとは、公式戦を多く指したいので、女流名人リーグや女流王位リーグに入ることが目標です」
──タイトル挑戦についてはいかがですか?
「いずれは挑戦したいですが、まだ現実的ではない気がしています。この間、清麗戦で伊藤沙恵女流四段と初めて対局したのですが、勝負の仕方がうまくて強いなと感じました。まずはトップの方々に近づけるように頑張りたいです」
柔らかな雰囲気の奥に、揺るがない勝負への執着を秘める岩佐美帆子女流初段。負けず嫌いで、勝ち気な攻め将棋。その内面は、どこか美濃の武将を思わせる。初段昇段は、あくまで通過点にすぎない。最後まで勝ち切るために、彼女の戦いは、これからも続いていく。
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