『明日から指せる吉池流右玉』レビュー|将棋情報局

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『明日から指せる吉池流右玉』レビュー

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はじめに

今回は、2026年4月刊『明日から指せる吉池流右玉』のレビューを書かせていただきます。

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本書の著者は吉池隆真四段です。吉池四段は若手の人気棋士で、2025年の加古川青流戦で優勝するなど大活躍されています。2025年度の勝率ランキングでも上位の成績をおさめており、将棋大賞で新人賞を獲得しています。

参考:【将棋ニュース】2025年度将棋大賞が決定 藤井聡太竜王・名人が6年連続6回目の最優秀棋士賞

吉池四段は右玉を得意戦法としており、将棋連盟の棋譜中継アプリでも、よく右玉の棋譜を見ることができます。

本書のまえがきでは、吉池四段は自らのことを“右玉歴10年、生粋の「ミギギョリスト」です。”と語られています。ミギギョリストの吉池四段が執筆した右玉の棋書ということで、発売を楽しみにしている方も多いことと思います。

皆様、はじめまして。棋士の吉池隆真です。私のことをご存じない方も多いと思いますので簡単に自己紹介させていただきます。右玉歴10年、生粋の「ミギギョリスト」です。  「いきなり何だ?」と思われた方もいそうですが、将棋には右玉という戦型があります。元々は玄人好みのマイナーな戦法で、下段飛車の守備力が強いことと、「玉飛接近すべからず」という古くからある格言を破っているのが特徴です。そんな右玉も最近ではプロ棋界でもよく現れるようになってきました。この本を手に取ってくださった方の中にも、見たことや指したことがある人は多いでしょう。  本書は1冊丸ごと右玉を解説しており、「なかなか攻めきれない」、「受けきれない」、「そもそも、うまい組み方を知らない」など、基礎を学びたい方向けの本になっています。  右玉は基本的に受けてカウンターを狙う作戦だと思われがちですが、それだけではありません。今回紹介する「どんどん攻めていく右玉」という一面もありますので、その魅力も感じてもらいたいと思います。  奨励会時代から長い間苦楽を共にし、病める時も健やかなる時も指し続けていた右玉。  研究会や奨励会などで指した実戦例も織り交ぜながら執筆しました。今回、対振り飛車編、対居飛車編と2つあります。どちらも読んで実戦でも指して、その強さを知ってもらいたいと思います。  それでは……行ってらっしゃい! 令和8年4月 四段 吉池隆真 
 

本書で取り上げられている戦型

本書は右玉の棋書ですので、もちろん右玉について書かれているのですが、右玉と言っても、対居飛車、対振り飛車といろいろあります。

本書では、目次にある通り、対振り飛車と対居飛車の両方について触れられていて、対振り飛車は、対四間飛車、対三間飛車、対中飛車が解説されています。対居飛車は、角換わり、雁木が解説されています。広範囲に学習できるようになっていますので、本書をマスターすれば、実戦で似た局面が多く出てくるのではないかと思います。


 

対象となる読者

右玉の棋書ですので、もちろん右玉をメインで指す右玉党の方には必見の書籍です。

また、タイトルが「明日から指せる」とされている通り、これから右玉を指したいという方にもオススメの書籍となっています。基本から丁寧に解説されていますので、右玉に対する前提知識がなくても、この棋書から右玉をスタートすることが可能です。

級位者~有段者まで幅広く読めるレベル感になっています。初手から解説されていますので、序盤の駒組みの注意点から、ひとつずつ学習していくことができます。級位者の方も安心して読んでいけるでしょう。

右玉は地下鉄飛車から6筋に飛車を回って▲6五歩と突いていく戦い方が基本なのですが、本書ではそこから解説されています。右玉が初めての方でも大丈夫です。


 

本書の特徴

まえがきから抜粋しますが、
“右玉は基本的に受けてカウンターを狙う作戦だと思われがちですが、それだけではありません。今回紹介する「どんどん攻めていく右玉」という一面もありますので、その魅力も感じてもらいたいと思います”
とあるように、相手の攻めてきたところをカウンターする戦い方だけでなく、積極的に右玉側から攻めていく戦い方についても触れられています。

また、右玉側の複数の指し方について紹介されています。例えば、対四間飛車の節で、△5四銀に対して、▲6六歩の指し方と、▲7七桂といった指し方が紹介されています。好みや状況によって指し方を変えることで、作戦の幅を広げることができるでしょう。

第1章の対振り飛車編と第2章の対居飛車編の両方で、最後の節に「対振り飛車右玉の呼吸」と「居飛車右玉の呼吸」という節が設けられています。この節の内容が秀逸で、受け方や入玉の仕方など、痒いところに手が届く技が紹介されています。「ふりほどく受け」「根元を断つ受け」の項は、今まで自分の将棋でできていなかったことでしたので、目から鱗が落ちました。

 

印象に残った箇所

印象に残る内容が多かったので、選別するのが大変でしたが、本書から2箇所だけ、特に面白いと感じた内容を紹介します。

1. 対四間飛車で▲8四歩の拠点を作る

▲5七角と設置した形で、地下鉄飛車▲8九飛車とした局面。後手は△2四歩から攻めてきますが、2筋には歩を打たずに、この一歩を活用して▲5五歩とします。後手はこの歩を取ると銀ばさみになるので、引くしかないですが、▲6五歩から仕掛けて、▲8四歩と拠点を作ることができました。

2. 雁木右玉で△8七歩成を許してもよい場合

後手の棒銀のような攻めが炸裂しそうな局面。△8六歩からの攻めが厳しすぎますが、ここで、▲7五歩とするのが強手。先手が右玉だからこそ指せる手です。後手は当然のように△8七歩成としますが、▲9五角から反撃できました。

こういった自分ではなかなか気づきずらい指し方が色々と学習できる棋書となっています。

 

おわりに

私は、対中飛車にだけ右玉を使うといった感じで、部分的に右玉を指しているだけだったのですが、本書を読んだことをきっかけに他の戦型でもどんどん右玉を指していきたいと思いました。

特に角換わり右玉は、▲6六銀と上がることで、あえて△8六歩と歩交換を誘って、カウンターを決めていく指し方が痛快です。私は、角換わりが苦手なので、右玉を採用したいと考えています。

右玉党の方がより右玉を理解する上でも本書は役に立ちますし、私のように本書を読むことによって色々な形の右玉を知り、作戦の幅が広がると思います。

また、右玉の狙いを知るという意味で、右玉を相手にするのが苦手という方も読んでみるといいかもしれません。

本書の著者の吉池四段は、将棋イベントに積極的にご出演くださり、何度かお会いしたことがあるのですが、お話が上手で面白いです。本書も、説明が明快で、どんどん内容に惹きこまれていきました。とても読みやすい棋書となっています。

是非、本書をご購入いただき、より良い右玉ライフを送られることを祈っています。

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著者

たろいも(著者)