現役東大将棋部員が解説! 自分の土俵で戦う四間飛車・立石流|将棋情報局

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現役東大将棋部員が解説! 自分の土俵で戦う四間飛車・立石流

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こんにちは。東大将棋部の金田夏輝です。前回、四間飛車のオーソドックスな居飛車穴熊対策として藤井システムを紹介しました。

ですが、藤井システムは1手間違えるとたちまち不利になる激しい戦型。居飛車側はもちろんですが、振り飛車側も正しく攻めをつなげるには技術と研究が必要です。

研究なんて面倒! もっと簡単に自分のペースで戦える指し方はないのか? 穴熊にだけは組ませたくない! そんな欲張りな方もきっといらっしゃると思います。

私自身も前回述べたような研究に基づく序盤を指すようになったのはここ1年ほどの話です。ということで、今回は私が以前から愛用している、前述したような欲張りな願いをかなえてくれるとっておきの指し方をご紹介したいと思います。

それが、立石流です。

 

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初手からの指し手

▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △4四歩
▲4八銀 △4二飛 ▲6八玉 △6二玉
▲7八玉 △7二玉 ▲5八金右△8二玉
▲5六歩 △7二銀 ▲5七銀 △4五歩
▲2五歩 △3五歩 ▲9六歩 △9四歩 (第1図)

今回は後手番を四間飛車側として解説していきます(先手番でも同じような感じで指して問題ないです)。

立石流とは故・立石勝己さんというアマ強豪の方が発案された指し方で、1990年代にはプロ棋界でも流行しました。小林健二九段は立石流を駆使して第28回早指し選手権戦で優勝しています(1994年)。

第1図まで、先手は持久戦を目指して手堅い駒組みをしているのに対し、後手はとりあえず四間飛車に振ってとりあえず美濃に囲います。立石流においては駒組みのこの分かりやすさが魅力です。重要なのは、左銀を3一で保留していることです。

そして、囲いきったあとはおもむろに△4五歩と角道を開けます。そして▲2五歩には普通△3三角と受けますが、無視して△3五歩と突きます。

 

第1図からの指し手①

▲7七角 △3二金 ▲8八玉 △7七角成▲同 桂
△2二銀 (第2図)

▲7七角はやや苦心した手。代えて▲2四歩△同歩▲同飛には、△8八角成▲同銀△2二銀(参考1図)としておいて問題ありません。その後は本手順と同じ構想を目指すだけです。

後手は金を△3二金と使います。四間飛車では珍しい手ですが、この後角交換をするのでその時に自陣への角の打ち込みを防ぐ意図があります。

そして、角交換して△2二銀と上がります。代えて△3三桂と跳ねる手もあり、一長一短ですが、△2二銀の方がやや安全です。理由は後述します。

 

第2図以下の指し手

▲7八銀 △4四飛 (途中1図)
▲6六歩 △3三桂 ▲8六歩 △3一銀
▲8七銀 △4二銀 ▲7八金 △4三銀
▲6八金右△3四飛 ▲2六飛 △5二銀
▲1六歩 △1四歩 ▲6五歩 △5四歩
▲8五歩 (第3図)

第2図以下、後手は△4四飛~△3三桂とします。この△4四飛が作戦の骨子で、このときに△2二銀と上がっていることで▲7七角と打たれる手を消しています(途中1図)。△4四飛~△3三桂の後は銀を繰り替えていきます。なお銀を繰り替える前に△3四飛としても問題ありません。

先手が2筋を交換している形の場合、形によるものの△2四飛とぶつければ先手は飛車交換に応じにくく、結局▲2五歩や▲2六歩と謝ることになります。なお場合によっては2筋交換型には△2四飛のぶつけ以外にも△4四飛~△2四歩と突いて、△2五歩~△2四飛と2筋の逆襲を目指す手もあります。この辺り、自由に考えを膨らませていっていただければと思います。

後手の左銀は、一度2二に上がったあと3一に引いているので、2手損です。後手から角交換しているのでさらに1手損です。しかし、第3図は後手の理想形で、作戦勝ちといえます。

なぜなら後手が仕掛けの権利を持っているのに対し、先手にはほとんど有効な指し手がないからです。このあとは後手は(後手なので)金の往復運動などで千日手を狙ってもよいですが、せっかくなので仕掛ける順を見ていきましょう。

 

第3図以下の指し手

△3六歩 ▲同 歩 △5三角 ▲2八飛
△3六飛 ▲3七歩 △2六飛 ▲同 飛
△同 角 ▲2一飛 △2八飛 ▲1一飛成
△2九飛成(第4図)

まずは△3六歩と突き捨てます。▲同飛と飛車交換から飛車を打ち込み合う展開は、後手が桂香を回収できる一方で先手は香車しか取れず、これは後手ペースです。そのため▲3六同歩ですが、△5三角~△3六飛~△2六飛が習いある手筋で、第4図となってはやはり後手だけ桂香を取れる形となっており後手有利です。2六の角が▲6二香の筋を防いでいるうえ、どこかよいタイミングで△3一歩と金底の歩を打つ形がめちゃくちゃ堅いというのもポイント。あとは△2五桂~△3七桂成と活用していけば自然に勝ちに近づいていきます。

ここまで立石流の成功例を見てきました。先手が銀冠に囲う形を見てきましたが、矢倉や穴熊など別の囲いでも同じように指しておけばOKです。むしろ穴熊は駒が偏り、角の打ち込みや浮き駒が生じやすく、歓迎というくらいの気持ちでおおらかに指すのがよいでしょう。

本当にこんなにうまくいくのかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが私自身、大学の大会で他大のエースの方との対戦でこれに似た展開になったこともありますので、令和の現代、あえて昭和~平成初期に流行った立石流の対策が分からない居飛車党には意外とうまくいくこともある、ということなのかもしれません。

 

このように、立石流は理想形に組めれば作戦勝ちという恐ろしい戦法です。居飛車側から見ると、「いかにして理想形に組ませないか」が重要になってきます。

次は、居飛車側のよくある対策とその攻防を紹介したいと思います。

 

第1図からの指し手②

▲2二角成△同 銀 ▲7七角 △3三銀
▲8八玉 △3二金 ▲7八銀 (第5図)

有力な対策とは、角交換して先手から▲7七角と設置し、△4四飛とさせないというもの。立石流を牽制する指し方として、私の経験からいってもよく遭遇する対策です。第5図では後手はどのように駒組みを発展させていけばよいのでしょうか。

 

第5図以下の指し手

△4三金 ▲8六歩 △3四金 (第6図)

△4三金~△3四金が私イチオシの指し方です。こうしないと△4四銀には▲2四歩△同歩▲同飛があるので3三の銀を動かせません。

記事前半で、立石流の理想形への組み方を解説したところで角交換後△3三桂より△2二銀といったん上がってから△4四飛と浮く方が安全と述べたのは、▲7七角と設置された時に△3三桂と跳ねていると先手からの飛車先交換を防げないこともありやや駒組みがしにくいからで、私自身も全国大会で先に桂跳ねで▲7七角と設置される将棋を指したこともありますが、やはり先に△2二銀としておく方が第6図の構想が実現しやすいので安全といまは考えています。

 

第6図以下の指し手

▲8七銀 △4四銀 ▲7八金 △3三桂
▲6八金右△5四歩 ▲9八香 △6四歩
▲9九玉 △6三銀 ▲8八角 △7二金
▲7七角 △7四歩 ▲1六歩 △1四歩
▲8八角 △2五桂 ▲2六飛 △2四歩
▲7七角 △7三桂 ▲8八角 △6五歩
▲7七角 △6四角 (第7図)

先手は銀冠穴熊に組みましたが、その後指す手がなく手待ちするしかない状況です。後手はより玉頭に手厚い木村美濃に発展させた後、△2五桂を決行。さらに△6四角まで打てては完封態勢です。

さらにいうと、▲7七角と打つ将棋は居飛車側はほとんど経験がないはず。序盤の構想に悩む居飛車側に対して経験値の差を生かして時間差をつけることができれば、時間的にも心理的にも優位に立つことができます。このように経験値でアドバンテージを取りやすい点も、立石流の長所でしょう。

 

実戦的に勝ちやすい立石流、いかがでしたでしょうか?

先後の差や駒組みの細かい手順の違いなど、緻密な研究が必要な藤井システムとは全く異なる思想の、広い意味での穴熊対策である立石流。藤井システムについて述べた前回の記事とは違って将棋AIの評価値など特に参考にせず自分の経験と感覚をもとに書かせていただきました。 

アマチュアでも最新型を追い、評価値を追求する現代だからこそ、立石流には一発勝負用の戦法として優秀な側面があると考えています。さらに、後半で述べた△3四金の構想も単なる私の自我流にすぎないので、読者の皆さまにおかれましても創意工夫のしがいのある戦法なのではないでしょうか。

本記事が読者の皆さまの一助になれば幸いです。お読みいただきありがとうございました。

 

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著者

金田夏輝(著者)
2005年大阪生まれ。7歳で将棋を始め、2022年の高校竜王戦優勝など高校大会で活躍。2024年東京大学将棋部に入り、同年学生十傑戦で準優勝するなど大学将棋でもトッププレイヤーの一人。2026年度は東大将棋部の主将を務める。