育成会から研修会へ ──女流棋士になるための主なルートの変遷|将棋情報局

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育成会から研修会へ ──女流棋士になるための主なルートの変遷

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2025年度は新女流棋士の誕生はありませんでした。2025年1月1日付けで八木日和女流1級が女流棋士になって以来、1年以上女流棋士は誕生していません。

現在の主な女流棋士資格を得るための条件は「研修会でB1クラスに昇級(最初からB1クラスで入会した場合でも研修会で48局指す必要があり、6か月かかる)」ですが、これをクリアする女流棋士志望者が1年以上出ていないためです。
半年ごとに行われる三段リーグの上位2人が必ず四段になり、1年に最低でも4人が新たに棋士になる制度と違い、女流棋士は年に何人と決まってはいません。そのため、0人の年もあれば7人の年も。そして、女流棋士資格を得るための条件は、「奨励会三段リーグ」の制度と比べ、頻繁に変更されてきました。ここでその歴史を振り返ってみましょう。

1974年 女流棋士の制度ができる

女流棋士一期生は6人。資格を得るための条件は明確ではなく、数少ない将棋の強い女性に声がかかって女性の「プロ」が誕生しました。最初は「女流棋士」という名称は定まっていませんでした。6人の中には当時、唯一の奨励会経験のある女性であった蛸島彰子女流六段、今はない将棋雑誌・近代将棋の企画で男性アマ強豪と対戦し何度も勝利して注目を集めた関根紀代子女流六段の他、女流(アマ)名人戦での上位者、将棋連盟の女性将棋教室の成績優秀者もいました。

女流アマ名人戦は2026年度で58期、プロの女流名人戦は53期です。先に行われていたのは女流アマ名人戦で、最初はアマ大会が「女流名人戦」だったのです。女流棋士誕生と同時に「女流プロ名人戦」ができました。発足時の女流棋戦はこの1つだけ。アマ大会と区別するために名称に「プロ」が入っていました。

その後も、ある程度の棋力や実績があり棋士の推薦があれば女流棋士になれるという状況が続き、女流棋士は増えていきました。小学生名人戦で準優勝した中井広恵女流六段も、この時代に11歳で女流棋士になっています。

 

1984年 女流育成会ができる

女流棋士発足から10年、女流棋士が20名に近づいてきて、女流棋士版奨励会のような「女流育成会」がスタートしました。1期生は清水市代現将棋連盟会長や大庭美夏女流初段、美樹女流二段姉妹、高群佐知子女流四段など9名でした。

育成会でどのような成績を収めれば女流棋士になれるかは何度か変更がありました。最初は女流育成会の総当たりリーグ戦で1、2位になった者と、女流棋士成績下位の者が入れ替え戦のような形で戦っていました。育成会で1位、入れ替え戦も勝ち抜いて、初の育成会出身女流棋士となったのが清水女流七段です。

当初は年1回だった女流育成会リーグが年2回になりました。

また、AクラスとBクラスに分かれる変更もありました。Bクラス1位でAクラスに昇級。Aクラス1位で女流2級にとなりましたが、2003年にはBクラスが廃止。

リーグで1位になって昇級点が1つ、もう1度昇級点獲得で女流1級となりました。この時期の2003年度後期と2004年度前期女流育成会で連続1位となり12歳で女流棋士になったのが福間香奈女流五冠です。

女流棋士になるには奨励会を経るルートもあります(退会時に1級なら女流1級、三段なら女流三段になれる)。福間女流五冠が奨励会に入ったのは女流棋士になって女流タイトルも獲得した後の19歳の時。一方、西山朋佳女流三冠は25歳で奨励会を三段で退会したときに女流棋士の資格申請をしており、同じ奨励会三段経験者でも女流棋士になったルートは違います。

『将棋世界Special 将棋のすごい記録大全 大山、中原、羽生、藤井―天才たちが打ち立てた奇跡の記録』(2024年、将棋世界編集部編)より

育成会在籍人数が減ったこともあり、2008年後期(2009年の3月まで)をもって女流育成会はその役目を終えました。最後のリーグ在籍者は10人、育成会ルートで最後に女流棋士になったのは渡辺弥生女流二段です。

 

2009年 研修会C1クラスで女流3級に

女流育成会に代わり、女流棋士の養成機関の役割を持つようになったのが研修会です。2009年4月から研修会C1クラス昇級で女流棋士3級になれると制度が変わりました。研修会はもともと奨励会の下部組織のような意味もあり、奨励会入会を目指す男子小中学生が多数在籍しています。女性だけの戦いだった育成会と違い、(主に年下の)男子に勝って昇級しなければ女流棋士にはなれなくなりました。

女流育成会員はアマ大会の出場に制限がありました。研修会員は男女とも制限はありません。

女流3級は仮資格のようなもので最長2年。「1年間で参加公式棋戦数と同数の勝星を得る」などの規定の成績を収めなければ女流棋士の資格を失ってしまう制度でした。
最初に研修会C1クラスをクリアしたのは室谷由紀女流三段。制度が変更されて3か月。2009年6月でした。翌2010年に規定の成績を収めて、正式な女流棋士2級になっています。
その後、平均して年に2~3人のペースで女流棋士2級が増えていきました。

 

2018年 研修会B2で女流2級に

2018年4月に研修会のC1からB2に女流棋士になれるクラスの引き上げがありました。ただし、仮資格の女流3級は無くなり、B2にクラスで正式な女流棋士2級になれることに。

研修会ではCDEクラスの昇級は、いいところどりで6連勝・9勝3敗・11勝4敗・13勝5敗・15勝6敗、ABクラスの昇級は8連勝・12勝4敗・14勝5敗・16勝6敗・18勝7敗。1クラス引き上げといっても必要な勝数が増えて一気に厳しくなったという見方もありました。

研修会B2クリアで女流棋士になったのは、2018年度には2人、2019年度には1人。その後は増加傾向で、2022年度には6人、2023年度は7人。
2018年度~2023年度は研修会B2クリア以外にも、アマチュアから女流(プロ)棋戦でベスト8の成績を収めたことによる女流棋士資格取得(礒谷真帆女流初段、野原未蘭女流二段)や奨励会退会による女流棋士資格取得(加藤桃子女流四段、西山朋佳女流三冠、今井絢女流初段)のケースもあり、女流棋士の数はさらに増えました。

 

2024年 研修会B1で女流2級に

そして、2024年4月には女流2級になるためには研修会でB1昇級と基準が引き上げられました。女流棋士がどんどん増えていくという状況は一変。B1をクリアして女流棋士になったのは2025年1月1日付けで女流2級になった八木日和女流1級ただ1人です。

女性アマのレベルは年々上がっていると言われます。今は少なくても今後、研修会B1をクリアする女性研修会員が次々に出てくるかもしれません。次なる制度変更は、いつ、どのようなものになるのでしょうか。

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著者

宮田聖子(著者)
2008年から将棋大会運営に関わる。スイス式トーナメントと2勝通過2敗失格の手合い付けが得意。2025年にマイナビ出版から「アマ最強への道 将棋強豪の勉強法と習慣」を上梓。子どもやアマ将棋界を盛り上げたいとペンネームで執筆してます。