【将棋ニュース】将棋はこれまで海を何回渡った?|将棋情報局

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【将棋ニュース】将棋はこれまで海を何回渡った?

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4月3日に行われた第11期叡王戦五番勝負第1局は伊藤匠叡王が斎藤慎太郎八段を下し、防衛に向けて幸先のよいスタートを切りました。この第1局はシンガポールで行われたもので、日本国外での対局は昨年の第73期王座戦五番勝負第1局、藤井聡太王座VS伊藤叡王(肩書きは当時のもの、以下同)戦がやはりシンガポールで以来、通算では27回目となります。

海外対局は1976年の第1期棋王戦、内藤國雄九段VS大内延介八段戦がハワイで行われたことから始まります。将棋盤、駒、駒台のみならず、脇息、座布団、ちり箱なども東京から空輸したと、当時の棋王戦担当記者である田辺忠幸氏が振り返っています。

第1期棋王戦の観戦記の冒頭|将棋世界昭和51年(1976年)3月号より、記:田辺忠幸​​​​​

2度目の海外対局は1985年の第46期棋聖戦、米長邦雄棋聖VS勝浦修八段戦がアメリカ・ロサンゼルスで行われました。日本将棋連盟創立60周年を記念して行われたものです。

二上達也九段による棋聖戦ロスツアーレポート|将棋世界昭和60年(1985年)9月号より

3度目は1990年の第3期竜王戦、羽生善治竜王VS谷川浩司王位戦のドイツ・フランクフルトです。過去に2回はアメリカでしたが、初のヨーロッパ対局です。4度目の第4期竜王戦はタイのバンコクで行われ、これがアジア初となりました。11度目となる1997年の第10期竜王戦はオーストラリアのゴールドコーストで行われ、こちらは初の南半球での対局となります。

将棋世界平成9年(1997年)12月号表紙​​​​​

将棋を海外に普及する目的もあり、90年代は毎年のように海外対局が行われていましたが、00年代以降は隔年ペースとなり、また近年では新型コロナウィルスの影響もあって海外対局は減少傾向にありました。2023年にベトナムのダナンで行われた第94期棋聖戦で復活し、昨年と今回のシンガポール対局へと続いています。

海外対局ならではの苦労というのはいろいろあるようで、例えば対局用の分厚い六寸盤を持ち込むのがその1つ。大きいものを持って行くという物理的な苦労だけではなく、入国審査で中に不審物を仕込んでいないか疑われてX線で調べられるということがあったとか。もちろん時差ボケの影響も無視はできません。普段のタイトル戦が対局前日に現地入りするのに対し、海外対局ではその数日前に現地へ入るのは、時差ボケ解消の意味合いもあるようです。

筆者は1度だけ海外対局の取材経験があります。04年の第17期竜王戦、韓国・ソウルで行われた森内俊之竜王VS渡辺明六段戦でした。当時の筆者は雑誌・近代将棋の編集部員という立場でしたが、弱小編集部の若僧ということもあって対局者や担当記者の方々が泊まる対局場のホテルを取れる余裕など当然なく、そこから離れた安宿を確保。着いた当日にすぐさま自身の宿から対局場のホテルまで、海外の見知らぬ道をガイドブック片手に30分ほど歩き、場所を確認しました。対局場ホテルのフロント辺りで読売新聞の担当記者に見つけていただき、翌日の観光に同行の許可をもらえたのはありがたかったです。海外対局で受けるカルチャーショックのせいか、普段ではなかなか見ることができない棋士の一面に立ち会うことができたのは幸運でした。

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著者

相崎修司(著者)
将棋雑誌「近代将棋」の編集を経てフリーの観戦記者に。
2026年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦の観戦記を執筆。
将棋世界をはじめとする各誌にも寄稿。