2026.04.06
西山朋佳女流三冠が語る、個性と可能性――勝負の最前線で見つめる将棋の未来
第19期マイナビ女子オープン五番勝負挑戦者、西山朋佳女流三冠インタビュー
桜の季節は女王の季節。女王のタイトルをかけて、第19期マイナビ女子オープン五番勝負が始まる。挑戦者に名乗りを上げたのは、西山朋佳女流三冠だ。
主催の株式会社マイナビは「一人ひとりの可能性と向き合い、未来が見える世界をつくる」をパーパスに掲げて、全ての人の活躍を応援する企業だ。そのパーパスに関連して、西山が考える個性と、それを生かした可能性の追求について聞いた。
豪腕という個性
「実は私も、マイナビの就活サイトをのぞいたことがあるんですよ。日本将棋連盟の求人を見たりしました(笑)。私は将棋でやっていくと早い段階で決めていたので、応募しようと思って見たわけではないのですが、求人情報といえばマイナビというくらいの大手サイトという印象があります」と話す西山。「マイナビさんは、それぞれの持っている個性や長所にフォーカスして、そのよさを伸ばしてくれる企業なのかなと思っています」と語る。
そんな西山の個性といえば、やはり頭に浮かぶ言葉は「豪腕」だ。しかし、西山には少し違和感もあるという。
「皆さん、いい意味でおっしゃっていると思うのでありがたいのですけど、豪腕っていうといかにも無理筋で攻めかかっているみたいじゃないですか? 全然成立していない手順を、ただ力任せに押し通しているみたいな。私の場合、しっかりと読みを入れて、自分なりに最善だと思って指しているので、そうした手を豪腕と言われたことには当初、少し驚きました」
尖らせたまま
それでも、「あとで自分の将棋を見返したときに、我ながら派手だな、気持ちのいい指し回しだなと思うことは多いです」と胸を張る西山。そうした個性はどのようにして磨かれてきたのだろうか。
「特別に個性を磨こうとした感覚はなかったんですけれど、実戦重視の勉強方法が現在のスタイルに結びついているのかなとは思います。何回か、勉強の仕方を座学中心に見直してみたことがあったんですが、そうすると自分のよさが消えていく感覚があって、そのたびに元の方法に戻したことがありました」
個性には、裏返しとしての短所もつきものだ。
「派手な手を指せるという反面、早期決着を好んでしまうところがひとつの短所かなと思います。気質的にせっかちなんですかね。回りくどくても安全な指し回し、といった勝ち方を受け入れられないことが多いです。そういう価値観が、自分の将棋を狭めている側面はあるのかなと」
しかし、長所を消してまで短所を補おうとは思わない。
「私には、ひたすらにいいところを伸ばすことが合っていると思うんです。能力を表すレーダーチャートみたいなものがあるじゃないですか。それに例えていうと、短所をカバーしてきれいな多角形を目指すというよりは、いま突き出ている部分を尖らせたまま、その形のままに拡大していくイメージです。いちばん強い部分に、他の部分が引っ張られて伸びて行けばいいですね。そういう将棋のほうが、自分でも見ていて面白いなと思いますし、応援したいと思ってもらえるのではないかなと思います」
藤井聡太竜王・名人との対戦で得たもの
個性は難局を突破するための力となり、そこに将来の可能性が生まれる。西山はどんなときに自分の可能性と向き合っているのか。
「厳しい相手と当たることになったときの事前準備では、自分の可能性について考えることがありますね。いまの自分では太刀打ちできないけれど、対局本番までにどれくらいスキルアップできるか試行錯誤しているとき、自分の能力はまだまだ伸ばせるんじゃないかなと思ったりします。昨年は藤井聡太竜王・名人と公式戦で対局することができました。そのときも、実力では全然及ばないことは自覚しつつも、いろいろな技術や作戦の理解度を深めるいい機会になり、少しでも勝つ可能性を上げることはできるな、という実感を持つことができました。とても大きな経験になりました」
最近では、将棋の理解度を深めるために芸域を広げる挑戦も試みたという。
「私は昔からずっと振り飛車でやってきたんですけど、さすがにこのままじゃ見識が狭すぎるかなと思い、何回か居飛車を採用してみたことがあります。自分には不可能なものだと思っていたんですよ。でも、実際に居飛車を掘り下げて研究してみると、思いのほか楽しかったんです。これなら自分でもできるかもしれない、と思うことができました。食わず嫌いしないで、チャレンジしてみれば、絶対にできないと思っていたこともできる場合があるんだなと思いました」
新しい世界へ
西山個人のことだけでなく、将棋界にはどんな可能性を感じるか、尋ねてみた。
「将棋はゲーム自体にすごく高い完成度があるので、それを中継する上での楽しみ方も、もっと増やしていけるんじゃないかなと思います。私自身、観る将的な楽しみの広げ方にも興味を持つようになりました。自分でもそうした取り組みを増やしていけたらいいなと思っています。たとえば、女流棋戦が一斉に大広間で行われていたら、その広間全体を映像中継してみたりとか、どうでしょうか? それに関連してお話すると、マイナビ女子オープンの一斉予選って、まさにそうした女流棋士の真剣勝負をライブで見届ける機会ですよね。私も一斉予選に出たことがありますが、応援して下さる方に初めて接することができる機会だったので、すごく励みになった記憶があります」
最後に、一人ひとりが自分の可能性を信じて進み続けていくためにどんな心構えをすればいいか、聞いてみた。
「自分の感情が動くものが見つかったときに、それを突き詰めてみること、だと思います。情熱を持ってひとつのことに取り組んでいくうちに、いつの間にかある種の流れのようなものが生じてくる瞬間があると思います。次第にその流れは自分だけでなく、周りにも波及していくような大きな流れになって、きっと新しい世界に連れていってくれると思います」
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