【自戦記】小山怜央四段、鈴木環那女流三段も大苦戦!? 詰将棋解答選手権2025レポート|将棋情報局

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【自戦記】小山怜央四段、鈴木環那女流三段も大苦戦!? 詰将棋解答選手権2025レポート

小山怜央四段、鈴木環那女流三段、竹中健一氏、小林智晴氏による詰将棋解答選手権参加レポート!
鈴木環那女流三段が「追い込まれて幸せを感じた」理由とは?

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詰将棋解答選手権2026も目前。今年はついに現地解説イベントも併設会場で行われるとあって、盛り上がりもひとしおである。
そんな機運をさらに盛り上げるべく、4名の方々が昨年、一昨年の解答選手権の自戦記をご寄稿くださった。その豪華なメンツは小山怜央四段、鈴木環那女流三段、元アマ名人の竹中健一氏、元赤旗名人で奨励会三段リーグの編入試験にも挑戦した小林智晴氏の4人。
プロ棋士、女流棋士、奨励会員がアマチュアに交じって同じ土俵で戦うところも解答選手権の特徴のひとつだが、この4人は研究会仲間でもあり、まとめ役の竹中氏の掛け声のもと、みんなで解答選手権に挑戦した様子をレポートにまとめてくれたのだという。
競技参加者の率直な気持ちを読むと、解答選手権を観るうえでの気持ちも変わってくるかも?

 
2025年詰将棋解答選手権チャンピオン戦東京会場の様子
2025年詰将棋解答選手権チャンピオン戦東京会場の様子

詰将棋は団体戦だ  竹中健一(元アマ名人)

1.団体戦に至る経緯

 いつの間にか研究会の対局前や休憩時間にみんなで詰将棋を解く時間が増えた。これはひとえに、鈴木女流三段が詰将棋をよく解くようになって、解けない作品や難しかった作品をみんなに解かせて苦しめようという魂胆がスタートなのではないかと思うが、とにかく詰将棋を解くのが苦手だった小林さんまでもこの流れに巻き込まれていった。

 いつだったかは定かではないが、研究会のときに詰将棋解答選手権の話題になり、2024年3月の解答選手権チャンピオン戦には4人で出場しようということになった。みんな勝負師なので、4人を2対2に分けてチーム戦をやることも決まった。敗者チームは、特定の戦型について相手チームにレクチャーしなければならないというもの。研究を披露するというのは両方にとってメリットがあるので、結果的には誰も負けではないのだが、それなりに準備が必要ということもあり、勝ちたいという意欲が生まれたのだと思う。次回の研究会までに、小林さんがアカシヤ書店で2万円分くらいの詰将棋の本を購入してきたのはさすがに驚いたが……(言ってくれれば貸し出すのに……)。
 ちなみに、チーム分けは、私と鈴木女流、小山プロと小林さんとなった。戦前予想では、小山プロと私はほぼ互角、鈴木女流と小林さんの差が勝敗を分けると言われていた。
 ご存じない方のために簡単に補足しておくと、詰将棋解答選手権チャンピオン戦は下記のようなルールになっている。
・東京と大阪の2会場で行われる
・前半と後半で各5問、合計10問が出題される
・前半と後半、それぞれで与えられる時間は最大90分 (途中退出は可能、再入場不可)
・1問10点で100点満点で採点される
・解けていると思われるのに誤記した場合は0.5点マイナスされる
・初手から4手ごとに部分点が与えられる
・同点の場合は時間が短い方が順位が上になる
・手数は7手~39手、未発表作が出題される
・盤駒は使っても構わない
・電子機器などの使用はできない
・解答用紙に解答を書いて提出する
 主なルールはこのようになっている。
 問題はかなり難しく、全問正解する人はわずかという状態が続いている。

2.事前準備

 この年、小山プロ、鈴木女流、小林さんはいずれも初参加。
 竹中のみ何年も出ているということで経験値が活きそうではあるが、それではフェアではないということもあり、直前対策として過去問を実際の問題形式にしてみんなに解かせることとし、その日はどのような問題が出やすいかという構想作などの傾向を話したりもした。普段解いている詰将棋のレベルとの違いは理解したと思うが、実際にそのような問題が解けるかはなんとも言えないところだ。

3.2024年当日

 前日練習の結果から当日の結果がかなり心配されたが、思ったよりも善戦したように思った。みんなの結果は下記の通り。
竹中 53点(10位)
小山 39.5点(29位)
鈴木 20点(64位)
小林 12点(77点)
 結果的に、内部の対抗戦は鈴木・竹中組が勝利を収めることとなった。
※後日行われた小山プロの角換わり講座、小林アマの雁木講座は非常に勉強になったことは言うまでもない。
 当日、小山プロと同門の内山女流も参加していて、一緒に打ち上げに行ったことから、勉強会への参加と来年の団体戦への参加がなんとなく決まったこともここに付記しておく。

4.1年間の準備

 今回の結果に懲りてもう出場しないという人が出るかと思ったが、メンバー中最下位に沈んだ小林さんから、「環那先生が出るなら出ます」と挑発にもとれる発言が飛び出し、自然と2025年も全員参加する流れとなった。内山女流もまじえて5人で他のグループと団体戦も面白そうだという話が出ていた。大会直前の1月か2月にこのメンバーで詰工房に行ったことがある。そのとき、詰工房(編注:東京近郊の詰将棋愛好家による定期会合)のメンバー5人と対抗戦をやることになった。あとから考えたら、普段から選手権レベルの作品を見たり作ったりしているメンバー5人なので勝てる要素はほぼなかったのだが、楽しむことがメインだったので、このような対抗戦をやることが決まったのだと思う。ちなみに、詰工房メンバーはかなり強力で、50音順に、會場健大、井上徹也、岸本裕真、久保紀貴、長谷川大地。負けた時の罰ゲームは将棋情報局に原稿を書くということになった。その結果、この文章が掲載されているわけであるが……(結果を言うまでもない)。このような団体戦をやるのも選手権の別の楽しみ方だと思う。次回もチャレンジャーを募集したいと思う。
 さて、話を戻すと、解答選手権に出題される詰将棋は普段の勉強ではなかなか太刀打ちできないことをみんなが理解してくれた。そこで、若島正さんの『盤上のファンタジア』『盤上のフロンティア』の2冊は必読書という話はしたが、果たしてこのメンバーが読んだかどうかは定かではない。1年間、特別な練習はしなかったように思う。それでも直前対策はやりたいという。過去問はみんな目を通しているだろうと思い、全く違う形式を取り入れることにした。前日練習は他のメンバーも追加して、希望者を集めてやることにした。内容は、過去に多くの選手権に参加している竹中が、有名作家の作品などから7手~39手までの難問集を厳選して100問×2セット準備し、その解図である。朝から御徒町将棋センター5階に集合し、ひたすら解いて解答を書くという特訓。普段解いている作品との違いを感じてもらう目的で難問を選んだが、今でも某研究会でこのときの作品群を奨励会員たちが喜んで?解いていると聞いた。有効に使っていただけるなら準備した甲斐があったというものだ。

5.2025年当日

 当日はそれぞれが最善を尽くそうという考えでいて、対抗戦のことはすっかり頭の隅に追いやっていたメンバーも多いと思う。私もその一人で、昨年より良い結果を出したいという思いだけだった。それでも焦りがあったのか凡ミスを繰り返して、平凡な点数と順位に沈んでしまったのは悔やまれる。他のメンバーも2回目の参加で緊張はなかったと思うが、選手権用の癖のある作品に苦労したのだろう。昨年より点数も順位も伸びたのは小林さんだけだった。ただ、作品は昨年よりも簡単だったようで、点数が伸びても順位が下がったり、悔しい結果だったメンバーも多い。

6.勝敗

                       
詰工房チーム 合計277.5点、平均55.5点 研究会チーム 合計209.0点、平均41.8点
井上徹也 79点(5位) 竹中健一 55点(23位)
長谷川大地 62.5点(17位) 小林智晴 44点(45位)
岸本裕真 50.5点(38位) 内山あや 41点(59位)
會場健大 44点(45位) 小山怜央 37点(64位)
久保紀貴 41.5点(57位) 鈴木環那 32点(72位)
 詰工房チームが圧勝という結果だった。中でも井上氏は全体の5位とチームを引っ張った。ただ、全員40点以上と総合力でも手合い違いだった。
 研究会チームも前年の結果よりは点数が伸びているメンバーが多く、詰将棋に抵抗がなくなったのと2回目の出場ということで慣れてきた結果だと思う。
 なによりも、詰将棋を避けてきた小林智晴さんが詰将棋を解くようになった効果なのかわからないが、2024年度の赤旗名人戦で優勝したことが嬉しかったのは言うまでもない。

7.今後について

 こうして惨敗を喫した今年の団体戦だったが企画としては面白いので、続けたいところである。ところが、多忙なメンバーも多いため、毎年全員参加できるかわからない。こちらのチームメンバーとして戦ってもいいという有志を募集したい。腕に自信のある方の立候補をお待ちしている。当然ながら、メンバーが揃えばチャレンジャーも募集したい。3人でも5人でもいいので解答選手権を個人競技とは別の観点で楽しもうではないか!
 

60点を取るまでは  小山怜央四段

 みなさま初めまして!棋士の小山怜央です。
 今回とあるきっかけで、詰将棋解答選手権(以下、選手権)に出場した感想を書く事になりました。最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

1.出場したきっかけ

 私は詰将棋が好きかと聞かれると、好きだけどラブではなくライク。どちらかというと、実戦の終盤が好きなタイプです。
 ですがそんなある日(約10年前)将棋世界で選手権の記事を見て、「棋士がたくさん出ていて、自分の実力を測る楽しそうなイベントだな。いつか出場してみよう」と思ったわけです。しかし当時私は岩手在住でしたし、上京してからも新型コロナウイルスがはやるなど、なかなか出場が叶いませんでした。
 それから時が経ち2024年。久しぶりに選手権の開催が決定したと聞き、早速申し込みました。ついに出場が叶ったわけです。

2.2024年大会

 こうして2024年大会がデビュー戦となりました。当日までに個人で行った対策としては、詰将棋サロン名作選と過去問を解いたぐらい。また、一緒に出場する仲間の方々が対策会を開いてくださり、竹中さんから選手権についての手厚いコーチングを受けました。(これが大変助かりました)
 過去問を解いた感じ、どちらのラウンドも頑張れば3問は解けそうだけど4問は厳しそう。ということで60点目標としました。
 そして当日。緊張感が高まる中、選手権の第1ラウンドが始まりました。まずは1問目から挑むも大苦戦。なんとか10分ぐらいで解答したのですが、違和感に気づきました。なんと1問目から17手詰で、過去問と比べると明らかに手数が長い。他の問題も全体的に難しく、第1ラウンドは2問しか解けずに終了しました。
 第2ラウンドも同じような感じで、終わってみると合計39.5点。目標の60点には全く届きませんでした。問題が難しくしょうがない部分もありましたが、誤記で0.5点落としたのと、第1ラウンドの第4問は頑張れたのではないかという反省は残りました。
 後で解説を聞くと、やはり難易度が高かったのですが、面白い仕組みの問題が多くまた来年も出てみたいなと思いました。

3.2025年大会

 前年の選手権は反省がいくつかありましたが、なんとなくコツが掴めたような気もしました。当日までの対策は前年とほぼ同じで、詰将棋サロン名作選と過去問。そして今回も仲間の方々が対策会を開いてくださり、それなりに自信をつけて選手権に臨む事ができました。
しかし当日、とんでもないやらかしをしてしまいます。電車を盛大に間違えてしまい、受付に間に合わなくなってしまったのです。仲間に連絡し、係の方に聞いてもらったところ、開始前に到着すれば出場可能という事だったので、全力ダッシュしなんとか0回戦には勝利。汗だくで選手権に挑む事になりました。
 第1ラウンドは、今回も序盤から苦戦したものの、なんとか30分ぐらいで2問目まで解答。しかしそこからが地獄でした。3問目~5問目がどれも分からず、5分~10分つついては別の問題へ。それを繰り返しているうちに時間切れとなってしまいました。
第2ラウンドも1問目以外分からず、5分~10分つついては別の問題へ。結局1問しか分からず時間切れとなってしまいました。
そして最終結果は37点。今回は平均点が高めだったので、悲惨な結果となってしまいました。今回も課題はいくつか残りましたが、どの問題も中途半端に解こうとしてしまうのは、私のよくないところなのかもしれません。これは実戦で読みがまとまらない事と関係がありそうと思いました。

4.今後の選手権について

 選手権に2回出場してみて、楽しかったというのが率直な感想です。普段は長時間詰将棋に集中するという時間がなかなかなく、選手権が終わった後は充実感がありました。また、選手権で解けなかった問題の解説を聞くと、気づかなかった作意や変化がいくつもあり、詰将棋の奥深さと作者の凄さに気づかされました。
 しかし、やはり解けなかったり負けたりするのは悔しい。今後は毎年出場するかどうかは置いといて、目標の60点を取るまでは何回も出場したいと思います!
 

極限まで追い込まれるという幸せ  鈴木環那女流三段

集中して考える鈴木環那女流三段(2025年の詰将棋解答選手権チャンピオン戦にて)
集中して考える鈴木環那女流三段(2025年の詰将棋解答選手権チャンピオン戦にて)

”とんでもない所に来てしまった”

 1時間経っても1問も解けない。

 詰将棋解答選手権の最初の1問目はウェルカムドリンクならぬウェルカムプロブレムとして知られていて、比較的解きやすい問題だと認識していた。

”大丈夫きっと解ける”
 何度も自分を励ましながら1時間半考えて、結局1問も解けずに私の2024年詰将棋解答選手権第1ラウンドが終わった。

 休憩時間は気分を変えるために一旦家に帰ることにした。

 私たちの詰将棋コーチである竹中健一さんにそのことを伝えると『ちゃんと戻ってきてくだいね』とすべてお見通しといった表情で言われギクッとした。どうやら私の心は1手詰みより簡単らしい。

 赤信号の横断歩道で”このまま会場に戻らないなんていう一手はないよね”そんなよからぬことをやっぱり考えている自分に笑ってしまった。

 第2ラウンドが始まる前にBSフジのインタビューで『詰将棋はどんな存在ですか』と聞かれ、『ずっと大好きなんですが、なかなか解かせてもらえない一方的な片想いです』と斜め45度の返答にディレクターの方は目をパチクリさせていた。 

 今度また同じ質問をされたら、小山四段風に『詰将棋は私にとってライクではなくラブです』と答えてみることにしよう。

『なぜ詰将棋解答選手権に出場しようと思ったのですか?』続く質問に『それは私が一番知りたいです…』と苦笑いするしかなかった。

 第2ラウンドが始まってから5分もしない内に後ろからペンを走らせる音がする。

”きっと名前を書いているんだ”
 でも次第にカリカリという波音が全体から襲ってくる。

 焦りから思考が停止してしまう。

 これはひとりで解いていたら味わえないことだ。

”何と戦っているんだ”と自分に喝を入れて耳栓をぎゅっと奥に押し込む。

 周りが解けているかどうかなんてどうでもいい、ただ自分を越えられるかどうかの勝負だ。

 あっという間に1時間が経過して残り30分。答案用紙は真っ白。頭は更に真っ白。

”ああ、1問も解けないのか……”
 高い天井を見上げて私はニヤッとした。

 極限まで追い込まれたこんな状況で、なぜかここに来てよかったなと思った。

 たとえ今日1問も解けなかったとしてもまた来年必ず出場しようと決めた。

 世の中には難しい問題が沢山ある。
 どれだけ時間をかけて一所懸命に考えてもわからないことがある。

 そういうものと出会えることはなんて幸せなのだろう。自分自身に挑戦することは生きている中でいちばん贅沢な時間かもしれない、そう思った。

 詰将棋解答選手権に久しぶりに出場することが決まってからの日々はとても楽しかった。

 仲間と過去問を解いたり、研究会の合間に詰将棋をたくさん解くようになった。

 選手権の前日には竹中さんが特訓会を開いてくださって、詰将棋を解くコツや選手権対策を伝授してくれた。

 その奥深さに触れて詰将棋が更に好きになったのは竹中さんのおかげだ。

 その青春のような日々を思い返しながら、問題を眺めていると不思議なことが起きた。

 急に作意と詰め上がりが頭に浮かんだのだ。
 目の前に現れた最終図から逆算して詰ますという今まで経験したことない詰まし方だった。

 突然勝ち筋が見えた時のように鼓動が速くなって心臓に手を置きながらゆっくり慎重に確認しながら書き入れた。

 残り15分。
 1問解けたことで肩の荷がすっかり下りた。
 するとまた不思議なこと起きた。

 さっきまであれだけ必死になって考えてもわからなかったのに、また突如として答えが降ってきたのだ。

 自分でも何が起きているかわからないまま、急いで書き入れて何度も何度も詰み手順をなぞった。

 残り2分になった時、あることに気がついた。

 21手詰めだと思っていたが、手数が2手伸びる玉方の逃げの妙があるではないか。
 こういう引っ掛け問題があると特訓会で教わっていた。

 これは23手詰めが正解なんだ…!
 震える手で素早く書き直してギリギリ間に合った。

 答案用紙が回収されて解答用紙が配られるまでの時間、後ろに座っていた岩村凛太朗三段(現四段)と齊藤光寿三段と感想戦をした。
『この問題って何手詰めかな?』
 ギリギリで書き直した問題の手数を確認したかった。

 2人から返ってきた答えは『21手』だった。

 そうか間違えたのかと落胆気味に『2手伸びないかな……?』と聞くと数秒して2人同時に『そうか!』と頭を抱えた。
 2人は私が問題すら見ることができなかった遥かに難しいラスボスに臨んでいたからこそのミスだった。

 ひどすぎるなんて言いながら笑い合う時間が尊くて、詰将棋人生の中で一番の思い出と言っても過言ではない。

 2024年第2ラウンドは2問解くことができた。
 私にしては上出来だ。そして何よりこの日大切なことにいくつも気がつくことができた。 
 それが一番の収穫だった。

 さあ、そして2025年の詰将棋解答選手権はどうだったかというと、この時のことは御三方が詳しく書いているのでそちらをご覧いただきたい。

 研究会仲間の小林智晴さんが私のことを恩人だなんて書いてくれている。それはこちらのセリフである。真面目で誠実な人柄で後輩の面倒見がよく皆に慕われている。私もそのひとりだ。おっといけない、ちょっと指しすぎて(褒めすぎて)しまった。

 その小林さんは2025年の詰将棋解答選手権で覚醒とも言えるほどの成績で、私は完敗だった。
 この決着は近いうちに必ずつけようと思う。

 最後に詰将棋解答選手権のスタッフの方々に心から感謝を申し上げたい。素晴らしい学びの機会を本当にありがとうございました。
 

詰将棋の世界に触れて  小林智晴(2024年度赤旗名人)

1.出場に至った経緯

 鈴木環那女流三段(以下、かんな先生)は、私にとって恩人である。先生と研究会をご一緒させていただくようになってから、さまざまな棋士・奨励会員・アマ強豪の方々とのご縁に恵まれ、今日まで楽しい社会人将棋ライフを送ることができている。
 そんな私は、「かんな先生からの頼みやお誘いは断らない」というマイルールを掲げている。ある日の研究会終わり、先生が「小林さん、詰将棋解答選手権のチャンピオン戦に出ましょう!」とおっしゃったので、つい「はい、出ましょう!」と返してしまった。
 これが、詰将棋嫌いのアマチュアが詰将棋界に足を踏み入れることになった最初の1ページである。

2.完敗だった前回大会

 今回の出場は2回目となる。チャンピオン戦は、前半・後半各90分で39手以下の詰将棋が5問ずつ出題され、1問10点の計50点満点×2ラウンドで総合得点を競う個人戦だ。参加者はプロ棋士、奨励会員、アマ強豪、詰将棋作家など多彩で、全国の詰将棋愛好家が一堂に会する。
 初参加だった前回は、研究会仲間のかんな先生・竹中健一さんと、小山怜央四段・私の2チームで裏団体戦を行っていた。事前予想では竹中さんと小山四段が互角で、かんな先生と私の点差が勝敗を分けると言われていた。
 いままで詰将棋にほとんど触れてこなかった私は、まずは詰将棋に触れ始めるところから始めないといけないと思い、アカシヤ書店という囲碁・将棋書籍の専門店に赴き、作品集を手あたり次第買い漁った。
(2万円以上買ったのに、未だに半分以上解いていないのは内緒。まずは形から入るタイプなので許して)
 大会直前には過去問で平均20~30点ほど取れるようになり、「ボロ負けは避けられそう。40点取れたら上出来だな」と、今思えばかなり楽観的に当日を迎えた。
 結果は、かんな・竹中チーム73.0点対小山・小林チーム51.5点で敗戦。個人成績も完答1問の12点(77位)で4人中最下位。かんな先生は誤記で点数を落としていたものの2問以上解けており、完敗だった。また、解説を聞いても理解できない問題も多く、まさに手も足も出なかった。同じ将棋というゲームをしているのに、ここまでの場違い感を味わったのは初めてだった。
「これが最初で最後のチャンピオン戦かな…」と落ち込んでいたのだが――。

3.流れで決まった再チャレンジ

 時は流れ、次回大会の申し込みが始まろうとしていた1月某日。いつものように研究会を終え、雑談していると、自然と「今年も出るのか」という話題になった。最初は渋っていた私も、周囲に乗せられて次第に気持ちが高まり、最終的には「出ます!」と宣言していた。
(正確には、前回かんな先生に完敗したのが悔しすぎたこともあり、「かんな先生が出るなら出ます!」と言ったのは、ここだけの話)
 今回は裏団体戦として、詰将棋愛好会「詰工房」チームとの5対5の対抗戦が決定。こちらのメンバーは、小山四段・かんな先生・竹中さんに加え、内山あや女流二段が参戦することになった。
 ただ、大会直前には新人王戦2回戦(対 古賀悠聖六段)が決まり、詰将棋対策はほとんどできなかった。それでも、前回以降、日常的に詰将棋を解く習慣がついていたので、それが少しでもプラスに働くことを祈るばかりだった。

4.いざリベンジの舞台へ

 大会当日。会場は東京タワーの目の前で、久しぶりに見るその存在感に少し感動しながら会場入りした。開始までは、竹中さんが用意してくださった7~39手の難問集を解きつつ、久々に会う知り合いと談笑しながらリラックスして過ごした。
・   前半戦
 1・3問目を完答、2・4・5問目は部分点狙いの方針で臨んだ。しかし1問目がなかなか解けず焦り、3問目も詰み筋が見えず不安が募る。
そんな中、部分点狙いの2問目が思いのほか読みやすく、解けた勢いで1問目も突破。前半は21点(完答2問)で折り返した。
・   後半戦
 6・8・9問目を完答、7・10問目は部分点狙いとした。前半で2問完答できたことで気持ちに余裕が生まれ、後半は3問完答を目指すことに。
6問目は、角の打ち場所を一度間違えそうになったが無事クリア。続く8・9問目は、図面がコンパクトな割に収束が見えず苦戦した。残り30分で手を付けていなかった7問目に取り組むと、幸運にも綺麗な収束が見えたところでタイムアップとなった。

5.最終結果

 団体戦は、詰工房チーム277.5点対研究会チーム209.0点で敗戦。70点近い大差で、力の差を痛感する結果となった(対戦ありがとうございました!)。
 個人成績は後半23点(完答2問)で、最終44点(45位)。問題は昨年よりやや易化傾向だったようだが、点数が伸びたことは喜ばしい。一方で、指し将棋のプレーヤーとして、実戦形に近い9問目を解けなかったのは非常に悔しかった。
(あと、かんな先生に前回のリベンジができたのでよかった。次回大会で決着つけましょう)

6.詰将棋解答選手権を通じて得たもの

 今回の出場を通じて、3つのことを強く感じた。
①詰将棋は将棋の上達に役立つ
 詰将棋を解く習慣がついてから、実戦での詰み・不詰みの判断や条件整理が以前よりスムーズになった。
②将棋というゲームの奥深さ
 実戦では百数十手で終局する将棋で、千手を超える問題が生まれたり、盤上に駒が散りばめられた初形から最終的に3枚だけ残る詰みが成立したりする。これこそ将棋の奥深さだと実感した。
③新しい世界を知る喜び
 前回大会で味わった衝撃も、今では新鮮で貴重な体験だったと思える。大会後の打ち上げでは選手や有名作家の方々とお話ししたり、名作の裏話を聞いたり、みんなで問題を解いたりと、将棋を指すだけでは得られない時間を過ごすことができた。詰将棋選手権に出て本当によかったと心から思う。

 今年の詰将棋選手権の申し込みは2月頃に始まる。
 このレポートを読んで少しでも興味を持ってくださったあなた、いつもとは少し違う新しい将棋の世界を、一緒に味わってみませんか?

(編注:2026年の詰将棋解答選手権は、選手募集を既に締め切っています)

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