2025.06.01
【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2025年6月編
将棋情報局ゴールドメンバー限定記事「編集部島田が綴る 今月の藤井聡太」第34弾でございます。夏です。外は暑いがビールはうまい今日この頃。先日、『詰将棋パラダイス』の水上編集長と中華のお店で餃子とメンマをつまみにビールを飲んだのですが、最高においしかったです(仕事せい)。
さて、そんな飲んだくれボーイの島田ですが、6月は14日に叡王戦第5局の取材に行ってまいりました。今回、叡王戦第4局と第5局に行ったのですが、いろいろと勉強になりましたし、やっぱり目の前で見るタイトル戦の迫力はすごかったです。
結果は伊藤匠叡王が3勝2敗でタイトル初防衛。藤井先生にも競り勝った終盤力の高さを再確認しました。事前にインタビューさせていただいたこともあり、斎藤慎太郎八段に感情移入してしまっている自分もいました。カメラの画像を見返してみたら、斎藤先生の写真を300枚くらい撮ってました(;^_^A。
今期叡王戦は熱戦ぞろいの素晴らしいシリーズで、それを間近で見られたのは幸運でした。
この経験を糧に、いつか藤井先生のタイトル戦も現地取材したいです。
あと、最近は『藤井聡太全局集令和6年度版』の制作にいそしんでおります。
今回は初めて巻頭にグラビアページを入れるということで、楽しく写真選びをさせていただきました。いい写真ばかりで迷いましたね。今は本文の編集をしていますが、『藤井聡太全局集』はところどころに本人のコメントが入っているので気が抜けません。今回もライターの鈴木宏彦さんがいろんなお話を引き出してくださっているので中身のほうもお楽しみに。また、予約してくださった方から10名のラッキーパーソンにサイン本が送られますので、ぜひチャレンジしてみてください。
・・・さて、前置きはこれくらいにして6月の藤井先生の対局を振り返っていきましょう!
6月の対局まとめ
3日 第96期棋聖戦五番勝負第1局 杉本和陽六段戦 勝ち
18日 第96期棋聖戦五番勝負第2局 杉本和陽六段戦 勝ち
30日 第96期棋聖戦五番勝負第2局 杉本和陽六段戦 勝ち
6月は杉本和陽六段との棋聖戦が行われ、3連勝で見事に防衛を果たしました。3日 第96期棋聖戦五番勝負第1局 杉本和陽六段戦 勝ち
18日 第96期棋聖戦五番勝負第2局 杉本和陽六段戦 勝ち
30日 第96期棋聖戦五番勝負第2局 杉本和陽六段戦 勝ち
今期はキャリアハイの成績を残すんじゃないかというのが「島田予想」でしたが、6月が終わった時点で7勝1敗(勝率0.875)と好調な滑り出しでございます。
6月もすべて強い勝ち方で調子の良さがうかがえました。
それでは1局ずつ振り返ってまいりましょう!
難解な持久戦を制して先勝
3日 杉本和陽六段戦
ヒューリック杯第96期棋聖戦五番勝負(主催:産経新聞社、日本将棋連盟)第1局
第1章 前面展望
前期、棋聖5連覇を達成して永世棋聖の称号を獲得した藤井先生。今期はタイトル戦初登場となる杉本和陽六段を挑戦者に迎えました。
何を隠そう、私は杉本先生にタイトル戦の意気込みについてインタビューをしておりました。AIの最善を追求するだけではない、人間らしい泥臭い戦い方をしたいとおっしゃっていて、最近のタイトル戦とはひと味違った将棋が見られそうだと期待していました。
(そして実際、第1局はそういう将棋になった)
対局場は栃木県日光市の「日光金谷ホテル」。対局者と関係者一行は前日に東武特急「スペーシアX」で現地入りしました。貸し切りになった「スペーシアX」の前面展望を満喫する藤井先生が楽しそうで見ているこちらもうれしくなりましたね。
藤井先生の影響で知った言葉はいくつかありますが、この「前面展望」もその一つ。「森林限界」とかもそうですね。
正直、いまだに前面展望の何が面白いのかわからないんですが(笑)、私もたまたま先頭車両に乗ったときは「あ、前面展望だ」と思うようになりました。
今回、車両の中で行われたインタビューでは「貫通扉」という言葉を使っていて、また一つ「聡太のおかげワード」が増えたのでした。
第2章 居飛車穴熊
将棋は杉本先生の先手で、三間飛車に。藤井先生は居飛車相手にはバランス型の薄い玉形を好まれますが、振り飛車相手には玉を固めて戦います。本局も居飛車穴熊に構えました。いつもと違う藤井先生の指し回しが見られるのでいいですね。
藤井先生の居飛車穴熊に対して杉本先生も「振り飛車ミレニアム」という堅い囲いを選んで持久戦の将棋になりました。そしてこれこそが杉本先生の狙いだったのです。
お互いに玉を固め合うと囲いに金銀をたくさん使うので、残った攻め駒は少なくなります。
すると攻めのバリエーションも限られてくるので、お互いに選択肢があまりない状況になります。そうなると実力差が出にくくなるのです。
そして、この形になれば、経験値でまさっているのは杉本先生のほうです。
この「藤井先生の選択肢を少なくした状態で経験値で勝負する」というのが杉本先生が描いていた勝ちパターンでした。この作戦は奏功し、終盤に入っても互角の形勢が続きました。
第3章 君がいるだけで心が強くなれること
長く続いた玉頭戦、ポイントになったのは123手目の局面です。杉本先生が金を打った手が詰めろ角取りになっていてすこぶる厳しい。普通は負けとしたものですが、ここからの藤井先生の受けがすごかった。端に金を打ったのがギリギリの受け。結局この金はタダで取られてしまうんですが、取られた瞬間に歩を打つと、相手から継続の攻めがないことを見切っていました。この歩が心強い。
相手の真剣を鼻先でかわすのが藤井先生の真骨頂です。
実際、杉本先生に継続手はなく、ここで大きな差がつきました。最後は眠っていた飛車をたたき切ってあっという間の寄せが炸裂。杉本先生の投了となりました。
本局は序盤から杉本先生の狙い通りのゲーム展開となり、終盤まで互角のねじり合いが続く熱戦でした。しかし、最後は持ち前の終盤力を見せつけて藤井先生の勝利、タイトル防衛に向けて幸先の良いスタートとなりました。
終盤では千日手になりそうな場面もあったのですが、実はそこで、藤井先生が密かに狙っていた大技がありました。それについては『将棋世界8月号』の山本博志五段の観戦記で本人に聞いた話として詳しく紹介されていますので、ぜひ皆さん読んでみてください(流れるような告知)。
強すぎ謙信。何もさせないで完勝
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