2025.03.07
悲喜こもごもの最終局 大橋七段快勝で羽生九段は降級 第83期順位戦B級1組13回戦
第83期順位戦B級1組(主催:朝日新聞社・毎日新聞社・日本将棋連盟)は、最終13回戦全6局の一斉対局が東西の将棋会館で行われました。このうち関西将棋会館で行われた羽生善治九段―大橋貴洸七段の一戦は102手で大橋七段が勝利、7勝5敗の勝ち越しを決めました。敗れた羽生九段はB級2組への降級が決まっています。
■羽生九段の大一番
13人で2つの昇級枠と3つの降級枠を争う今期のB級1組。11位で本局を迎える羽生九段は勝てば残留、負ければ降級とわかりやすい状況です。羽生九段の先手番で始まった対局は矢倉へと進展、後手の大橋七段が中住まいに組んだのは玉の堅さより広さを重視する現代的な作戦選択です。大橋七段が仕掛けて左辺から競り合いが始まりました。
分岐点となったのは17時を過ぎたころ、羽生九段が手番を握った終盤入り口の局面でした。直接的な桂打ちで中住まいに迫ったのは右辺に控える角のにらみを利用した一手ですが、攻め駒が桂と角のみで細い攻めの感は否めません。その後も羽生九段は垂れ歩や叩きの歩で攻めの手を繋ごうとしますが、実戦はここから大橋七段の手厚い受けが光る展開となりました。
■粘り許さぬ快勝譜
丁寧な受けでペースをつかんだ大橋七段は好機に反撃を開始、先手玉そばに配置した2枚の歩を起点にすばやい寄せを実現します。終局時刻は21時47分、最後は形勢の開きを認めた羽生九段が投了。リードしてからは一気の収束を見せた大橋七段の快勝譜となりました。羽生九段としては序盤の銀桂交換で手にした桂での攻めが細く、その後も粘りが利かなかった格好です。
これで7勝5敗となった大橋七段は2年連続勝ち越しの安定した成績。一方4勝8敗での降級が決まった羽生九段は局後のインタビューに「ミスも多かったので(降級は)仕方のない結果かな」と振り返りました。今後の去就については「年度末までには答えを」としていますが、来期順位戦をB級2組で戦うことになれば第50期以来34期ぶりのこととなります。
B級1組では羽生九段のほかに三浦弘行九段、山崎隆之九段の降級と、近藤誠也八段、糸谷哲郎八段の昇級が決まっています。
大橋七段は対羽生九段戦3局目にして待望の初勝利を挙げた
水留啓(将棋情報局)