2025.01.01
【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2025年1月編
限定記事や限定動画など特典が盛り沢山!将棋情報局ゴールドメンバーご入会はこちらから
皆さんこんにちは。「些細なことは気にしないでおきましょう?だって、些細なことですもの」でおなじみの編集部島田です。
将棋情報局ゴールドメンバー限定記事「編集部島田が綴る 今月の藤井聡太」第29弾です。遅ればせながら新年あけましておめでとうございます。今年も将棋を楽しんでまいりましょう。
さて、1月は「将棋流行語大賞2024」の発表会に行ってきました。1位の「きのーねー」は納得の受賞。そして2位が「5等分の豊島」、3位が「ミニしま先生」と私の担当した書籍から2つも流行語が生まれてうれしかったです。
発表会で思ったのが、吉池隆真四段のお話のうまさ。相手が山本博志先生だったからということもあったでしょうが、よどみないトークにびっくりしました。顔もかわいいし、きっとこれから人気が爆発することでしょう。
また、『ぼくは将棋で世界をえがく 藤井聡太ものがたり』の紹介記事を書かせていただきました。
https://book.mynavi.jp/shogi/detail/id=146848
編集の方と絵を描かれた方にインタビューさせていただいたのですが、お二人ともめっちゃいい人で、そりゃいい絵本になるわ、と納得した自分がいました。私とは人間性が大差でした(;^_^A
この記事に書ききれなかったので追記させていただきますと、私の一番好きなページは4,5ページで藤井聡太少年が木に登っているところです。
そこで「わあ、たかいところで見るけしきってぜんぜんちがうんだ!」というセリフがあります。これが、藤井先生が将棋を続ける理由「強くなれば違う景色が見られるかもしれない」の暗喩になっている。
将棋という頂上が見えないほど高い木を登りつづけている藤井先生。その気持ちは子どもの頃から微塵も変わっていないんだ、と思って冒頭4ページでもう泣きました(笑)。
改めてとてもいい絵本だと思うので、まだ読んでいない方はぜひ読んでください。
そして、1月の島田の活動のメインイベントは29日に藤井先生のインタビューに同行したことです! 『将棋世界』のインタビューで、藤井先生が竜王戦を振り返るもの。佐々木勇気八段との6局についてたっぷり語っていただきました。
竜王4連覇という偉大な記録を打ち立てられたわけですけど、インタビューをする応接室に藤井先生が入られたとき「あ、本日はよろしくお願いします」(脳内再生推奨)とペコリと頭を下げながら入室されて「いや、この謙虚さよ!」と思ってインタビューを始める前に、母は涙をこらえることができませんでした。
今回の記事ではこのインタビューのお話もできるだけ織り込んで振り返っていきたいと思います。
・・・では、1月の藤井先生の対局を振り返っていきましょう!
では1局ずつ振り返ってまいりましょう!
これまでタイトルを取るか防衛するだけで、一度も奪われたことがなかった藤井先生。それが前期の叡王戦でついに崩されました。伊藤匠七段の挑戦を受けて2勝3敗で敗れてしまったのです。
残念ながら七冠になってしまったわけですが、叡王戦以外はすべて防衛を続けています。そして、叡王のタイトルを奪取してふたたび八冠に返り咲く「八冠ロード・アゲイン」が始まったのです。
本戦から出場の藤井先生の相手は増田康宏八段。棋王戦で挑戦を決めており、その前哨戦という意味でも大きな注目が集まりました。
第1章 角換わり腰掛け銀
振り駒の結果、藤井先生の先手番になったので目指すは角換わりです。増田先生はそれを受けて立つ選択をしました。以前増田先生にインタビューした際に、藤井先生と戦う時には「定跡の中で少し外す」というお話をされていました。本局も角換わりを受けたうえで少し珍しい形にする狙いだったのだと思います。
実際、増田先生は6筋の位を取って角を打つという前例の少ない形にしました。
しかし、こうなったときでも最善手を続けられるのが藤井先生の強さ。形勢は互角のまま推移しました。
第2章 強気VS強気
本局のポイントになったのは54手目。増田先生が強く飛車取りに銀を進めた場面です。これに対して飛車を引くようでは抑え込まれてしまうとみた藤井先生は、飛車を寄って銀取りに当て返します。これが強手で好手でした。
こうすると飛車が取られてしまうのですが、代わりに角を取り返して十分指せると見切っていた藤井先生の大局観がすごい。
増田先生が飛車を打って攻めてきたときに玉の頭に銀を埋めたのが手堅い一手。将棋では玉の前に銀を打つことを「ヘルメットをかぶる」と言い、だいたいの場合良い手になります。そのあと玉から離れていた金も囲いにくっつけて金銀4枚の要塞を築き上げた藤井先生がはっきり有利になりました。
追い込まれた増田先生は上部脱出に望みを託しますが、藤井先生が玉の退路に歩を打ったのがその望みを打ち砕く一手で、増田先生の投了となりました。
第3章 新しい気持ちで
藤井先生は今年最初の1局で勝利。そしてこれが新将棋会館での初勝利にもなりました。八冠に向けての再出発ということもあり、いろんな意味でいいスタートになったのではないかと思います。
将棋の内容としては得意の角換わりの中で少し珍しい形を指されて「全体として判断に悩む局面が多かった」と振り返っていましたが、角換わりは藤井先生が最も慣れた道でもあります。
形は違っても、角換わりの急所や玉の距離感は変わらないので、「角換わりで少し外す」戦い方は藤井先生にとって比較的戦いやすい相手なのではないかと思っています。
実際、先日行われた増田先生との棋王戦第1局でも同じような形で勝っていましたし。
とにもかくにも叡王戦本戦2回戦に進出した藤井先生、次は戸辺誠七段との対戦になります。「戸辺攻め」に対して、藤井先生がどんな将棋を見せてくれるのか、とても楽しみです。
完全版はこちらで読むことができます。
ゴールドメンバー入会はこちら
限定記事や限定動画など特典が盛り沢山!将棋情報局ゴールドメンバーご入会はこちらから
将棋情報局ゴールドメンバー限定記事「編集部島田が綴る 今月の藤井聡太」第29弾です。遅ればせながら新年あけましておめでとうございます。今年も将棋を楽しんでまいりましょう。
さて、1月は「将棋流行語大賞2024」の発表会に行ってきました。1位の「きのーねー」は納得の受賞。そして2位が「5等分の豊島」、3位が「ミニしま先生」と私の担当した書籍から2つも流行語が生まれてうれしかったです。
発表会で思ったのが、吉池隆真四段のお話のうまさ。相手が山本博志先生だったからということもあったでしょうが、よどみないトークにびっくりしました。顔もかわいいし、きっとこれから人気が爆発することでしょう。
また、『ぼくは将棋で世界をえがく 藤井聡太ものがたり』の紹介記事を書かせていただきました。
https://book.mynavi.jp/shogi/detail/id=146848
編集の方と絵を描かれた方にインタビューさせていただいたのですが、お二人ともめっちゃいい人で、そりゃいい絵本になるわ、と納得した自分がいました。私とは人間性が大差でした(;^_^A
この記事に書ききれなかったので追記させていただきますと、私の一番好きなページは4,5ページで藤井聡太少年が木に登っているところです。
そこで「わあ、たかいところで見るけしきってぜんぜんちがうんだ!」というセリフがあります。これが、藤井先生が将棋を続ける理由「強くなれば違う景色が見られるかもしれない」の暗喩になっている。
将棋という頂上が見えないほど高い木を登りつづけている藤井先生。その気持ちは子どもの頃から微塵も変わっていないんだ、と思って冒頭4ページでもう泣きました(笑)。
改めてとてもいい絵本だと思うので、まだ読んでいない方はぜひ読んでください。
そして、1月の島田の活動のメインイベントは29日に藤井先生のインタビューに同行したことです! 『将棋世界』のインタビューで、藤井先生が竜王戦を振り返るもの。佐々木勇気八段との6局についてたっぷり語っていただきました。
竜王4連覇という偉大な記録を打ち立てられたわけですけど、インタビューをする応接室に藤井先生が入られたとき「あ、本日はよろしくお願いします」(脳内再生推奨)とペコリと頭を下げながら入室されて「いや、この謙虚さよ!」と思ってインタビューを始める前に、母は涙をこらえることができませんでした。
今回の記事ではこのインタビューのお話もできるだけ織り込んで振り返っていきたいと思います。
・・・では、1月の藤井先生の対局を振り返っていきましょう!
1月の対局まとめ
8日 第10期叡王戦本戦 増田康宏八段戦 勝ち
12、13日 第74期王将戦七番勝負第1局 永瀬拓矢九段戦 勝ち
19日 第18回朝日杯将棋オープン戦 阿久津主税八段戦 勝ち
19日 第18回朝日杯将棋オープン戦 服部慎一郎六段戦 負け
25,26日 第74期王将戦七番勝負第2局 永瀬拓矢九段戦 勝ち
先月は公式戦が1局しかありませんでしたが、1月は5局と多く4勝1敗という成績でした。朝日杯ではベスト4進出ならずでしたが、タイトル戦はすべて勝っており、さすがの一言です。8日 第10期叡王戦本戦 増田康宏八段戦 勝ち
12、13日 第74期王将戦七番勝負第1局 永瀬拓矢九段戦 勝ち
19日 第18回朝日杯将棋オープン戦 阿久津主税八段戦 勝ち
19日 第18回朝日杯将棋オープン戦 服部慎一郎六段戦 負け
25,26日 第74期王将戦七番勝負第2局 永瀬拓矢九段戦 勝ち
では1局ずつ振り返ってまいりましょう!
叡王奪還に向けて好スタート!
8日 増田康宏八段戦
第10期叡王戦(主催:株式会社不二家)本戦1回戦
これまでタイトルを取るか防衛するだけで、一度も奪われたことがなかった藤井先生。それが前期の叡王戦でついに崩されました。伊藤匠七段の挑戦を受けて2勝3敗で敗れてしまったのです。
残念ながら七冠になってしまったわけですが、叡王戦以外はすべて防衛を続けています。そして、叡王のタイトルを奪取してふたたび八冠に返り咲く「八冠ロード・アゲイン」が始まったのです。
本戦から出場の藤井先生の相手は増田康宏八段。棋王戦で挑戦を決めており、その前哨戦という意味でも大きな注目が集まりました。
第1章 角換わり腰掛け銀
振り駒の結果、藤井先生の先手番になったので目指すは角換わりです。増田先生はそれを受けて立つ選択をしました。以前増田先生にインタビューした際に、藤井先生と戦う時には「定跡の中で少し外す」というお話をされていました。本局も角換わりを受けたうえで少し珍しい形にする狙いだったのだと思います。
実際、増田先生は6筋の位を取って角を打つという前例の少ない形にしました。
しかし、こうなったときでも最善手を続けられるのが藤井先生の強さ。形勢は互角のまま推移しました。
第2章 強気VS強気
本局のポイントになったのは54手目。増田先生が強く飛車取りに銀を進めた場面です。これに対して飛車を引くようでは抑え込まれてしまうとみた藤井先生は、飛車を寄って銀取りに当て返します。これが強手で好手でした。
こうすると飛車が取られてしまうのですが、代わりに角を取り返して十分指せると見切っていた藤井先生の大局観がすごい。
増田先生が飛車を打って攻めてきたときに玉の頭に銀を埋めたのが手堅い一手。将棋では玉の前に銀を打つことを「ヘルメットをかぶる」と言い、だいたいの場合良い手になります。そのあと玉から離れていた金も囲いにくっつけて金銀4枚の要塞を築き上げた藤井先生がはっきり有利になりました。
追い込まれた増田先生は上部脱出に望みを託しますが、藤井先生が玉の退路に歩を打ったのがその望みを打ち砕く一手で、増田先生の投了となりました。
第3章 新しい気持ちで
藤井先生は今年最初の1局で勝利。そしてこれが新将棋会館での初勝利にもなりました。八冠に向けての再出発ということもあり、いろんな意味でいいスタートになったのではないかと思います。
将棋の内容としては得意の角換わりの中で少し珍しい形を指されて「全体として判断に悩む局面が多かった」と振り返っていましたが、角換わりは藤井先生が最も慣れた道でもあります。
形は違っても、角換わりの急所や玉の距離感は変わらないので、「角換わりで少し外す」戦い方は藤井先生にとって比較的戦いやすい相手なのではないかと思っています。
実際、先日行われた増田先生との棋王戦第1局でも同じような形で勝っていましたし。
とにもかくにも叡王戦本戦2回戦に進出した藤井先生、次は戸辺誠七段との対戦になります。「戸辺攻め」に対して、藤井先生がどんな将棋を見せてくれるのか、とても楽しみです。
帰ってきた金
ゴールドメンバー入会はこちら
将棋情報局では、お得なキャンペーンや新着コンテンツの情報をお届けしています。