2024.12.01
【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2024年12月編
皆さんこんにちは。「まわりの仲間より優れていることは、特に立派なことではない。本当の気高さとは、過去の自分より優れていることだ」でおなじみの編集部島田です。
将棋情報局ゴールドメンバー限定記事「編集部島田が綴る 今月の藤井聡太」第28弾です。早いもので今年ももう終わりですね。毎年この時期は体調を崩して年末年始の休みを棒に振っている私ですが、今年は元気です。
12月上旬に軽く風邪をひいて、そこから超回復したのが功を奏したようです。
将棋も健康も先手を取ることが大事ということですね(ほんと?)。
さて、12月は「将棋教室ラボ」と「SUNTORY将棋オールスター東西対抗戦」の取材に行ってきました。
「将棋教室ラボ」って何?と思われた方もいるでしょうが、これは日本将棋連盟と東急様がSAPIX様の協力のもとに行っているプロジェクトで、「子どもに将棋を教えたら考える力が身につくか?」を検証しようという試みでございます。面白いですよね。
昔から「将棋をやると頭がよくなる」と言われてきましたが、本当にそうなのか、という話です。もし、このことが実証されれば、将棋はソロバンや学習塾と並んで子どもの習い事の一つとして考えられるようになるのでめちゃくちゃ素晴らしいことだと思っています。
当日は2か月前に将棋を覚えた小学3年生の子どもたちが8枚落ちで棋士と対局する、というものだったのですが、みんな本当に強くて驚きました。子どもの吸収力、恐るべしです。
成果を検証するためのSAPIXの試験は3月に行われるそうなのでとても楽しみです。
あと、最後に子どもたちから棋士への質問コーナーがあったのですが、今後の目標について聞かれた中村太地先生が「学校の授業でみんなが将棋を指すようになること」とおっしゃっていて、1人で感動していました。A級棋士でありながら普及にも精力的に動いている太地先生、偉すぎます。微力ながら私も太地先生の夢をお手伝いできればと思った一日でした。
さて、私の活動報告はこれくらいにして、12月の藤井先生の対局を振り返っていきましょう!
11、12日 竜王戦七番勝負第6局 佐々木勇気八段戦 勝ち
甲子園での羽生善治九段との対局やSUNTORYもあったので、やむなしでしょうか。今回は竜王戦を振り返った後に、現地取材に行ったSUNTORYについても語っていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
ではまいりましょう!
劣勢を跳ね返し竜王4連覇達成!
11,12日 佐々木勇気八段戦
第37期竜王戦七番勝負(主催:読売新聞社)第6局
藤井先生が3勝2敗と竜王のタイトル防衛に王手を掛けて迎えた第6局は鹿児島県指宿市の「指宿白水館」で行われました。
「指宿」と書いて「いぶすき」と読みます。普通の人はなかなか読めないですが、羽生先生が永世七冠を達成した場所として有名ですし、竜王戦の対局場としてよく使われているので将棋ファンなら読めるやつです。
といいつつ、私はずっと「ししゅく」と読んでたので偉そうなことは言えません(笑)。
指宿白水館といえば砂蒸し風呂、そして砂蒸し風呂といえば「永世蒸し王」の称号を持つ佐々木勇気八段です。さらに対局前には指宿の観光大使にまで任命されましたので、もうここまでくると佐々木先生のホームグランドと言っていいでしょう。
そして、今回の竜王戦はここまですべて先手番が勝っており、特に佐々木先生が先手番の時は2局とも完勝でした。本局も佐々木先生の先手番ということで、藤井先生にとってはいろんな意味で踏ん張りどころだったと思います。
しかし、その逆境を跳ねのけて本局に勝利し、見事にタイトル防衛を果たしたのは皆さんご存じのとおりです。それでは、改めて対局を振り返ってみましょう。
第1章 相掛かり
佐々木先生の作戦が注目されましたが、選ばれたのは相掛かりでした。藤井先生に的を絞られないようにいろいろな作戦を考えていてすごいです。
ただ、今回の佐々木先生の指し方は藤井先生が広瀬先生に敗れたJT杯の将棋を下敷きにして、そこから改良を加えたものなので、当然藤井先生も研究しています。
ということで指し手はどんどん進み、1日目の午前中で早くも終盤戦に突入してしまいました。「これ?2日制でしたよね?」と言いたくなるような急展開にドキドキしましたね。
そして本局のポイントは1日目の封じ手前にやってきます。
ここでは佐々木先生がややリードしていて、藤井先生が銀を動かした手に対して馬を前線に進出させれば佐々木先生が優勢を保てていました。
しかし、そのあとが猛烈に難しく読み切ることは佐々木先生をもってしても無理だったようです。佐々木先生は残り時間でも大きくリードしていて、そのアドバンテージを失いたくないという気持ちも働いたようでした。
結果的に馬を進出しないで端に角を打ったのですが、この手が悪く、ここから佐々木先生に形勢の針が振れることはありませんでした。
佐々木先生の研究で部分的に端に角を打つ手が最善になる展開もあったようで、今回は研究で得た知識がノイズになってしまいました。
第2章 しのげている
2日目は形勢は悪いながらも佐々木先生が藤井玉に肉薄する展開で迫力満点。佐々木先生の攻めが届くか、藤井先生がそれをしのぎ切るかという勝負になりました。
ここで藤井先生が玉を右側に移動していって、序盤に取り残された端の金に近づいて行ったのが好着想でした。藤井先生の将棋はなぜかこのようにすべての駒が働くようになっています。まぁそうなるように指してるんですけど、これってそう簡単にできることではないんですよね。全然使えないと思っていた駒が最終的に輝いたりするので毎度のことながらさすがすぎます。
本局でも端にポツンと一軒家状態で鎮座していた金が玉のほうに寄ってきて、最後は玉頭を守る重要な守り駒になりました。
佐々木先生の攻めが一瞬途切れた瞬間に今度は藤井先生の端角一閃!!
あちょー!!
これが激痛の一手で、いきなり佐々木先生に受けがなくなり投了となりました。
第3章 砂に埋めた端角
対局後、白水館名物の砂蒸し風呂に入った佐々木先生。今回のシリーズのいろいろな場面が頭をよぎったのではないでしょうか。
佐々木先生の「端角は指宿の砂に埋めました」という発言が悔しさもあり、前向きな感じもありでいいセリフでした。また、大盤解説会で出た「悔いはない、いやあるか」というのも心情を表していていいなと思いました。
今回佐々木先生が見せた作戦はどれも素晴らしいものばかりでした。藤井先生に2回圧勝するのは並大抵のことではありません。また、おやつや食事、各地でのコメントでもたくさんの話題をふりまいてくれました。この竜王戦にかけていたと思うので落胆は大きいと思いますが、またタイトル戦の舞台に戻ってくることを期待しています。
第4章 変化を求めた1年
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