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長女・リサが執筆した自叙伝「Small Fry」は暴露本か?

冷酷だったスティーブ・ジョブズとの複雑な父娘関係が1冊の本に

文●山下洋一

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9月に米国などで故スティーブ・ジョブズの長女リサ・ブレナン・ジョブズの自叙伝が出版された。自分と母親に冷酷でもあった父の姿を正直に書いており、一部からは暴露本とも呼ばれているが、型破りな父親との関係を描いた家族のポートレートとして、ブレナン・ジョブズの作家デビュー作は良好な評価を得ている。

 

アイ・アム・ユア・ファーザー

Macintosh、iPodやiPhoneを世に送り出したスティーブ・ジョブズは、数多くの起業家やエンジニアにとって偉大な父親のような存在になっている。しかし、ジョブズの本当の子ども、高校時代の同級生の母との間に生まれたリサ・ブレナン・ジョブズ(以下、リサ)にとってジョブズは偉大な父ではなかった。それどころか彼女のこれまでの生涯は父親から否定されてばかりだった。でも、誰にとっても父親が理屈抜きで特別な存在であるように、リサは自分の本当の父親を求めた。その父親は有名で、信じられないような生活を送っていて、常識外れな行動ばかり取る。自分を深く傷つけることが珍しくない。それでも父親のことが好きで、ありえないほど型破りな父との関係に娘として心の中で折り合いをつけてきた。米国などで出版されて話題になっている「スモール・フライ(Small Fry)」は、そんなリサの半生を綴った本だ。

ジョブズがリサを認知しなかったのはよく知られている。だが、出産の数日後にジョブズはリサと母親のところに現れた。そして、そこにいた人たちに「この子は私の子じゃない」と言いまくりながら、なぜか熱心に名前を考え、シンプルであることにこだわり「リサ」と名づけた。普通の人々には理解しがたい行動だ。

認知問題はDNAテストにまでもつれるが、ジョブズはリサが3歳のときに会いにきた。「私が誰かわかるかい?」とたずね、手で髪をはらって顔をよく見せ、そして「I'm your father」と述べた。成長した娘の顔を見に来た父親なのに、まるでスターウォーズのダース・ベイダーである。

スモール・フライの話題では、「お前には何もやらない」や「お前の臭いはトイレみたいだな」といったジョブズの攻撃的な発言だけが切り取られ、それらの言葉から受け取る印象だけが独り歩きしている。たしかに読んでいて衝撃を受ける発言なのだが、そんなひどいことを言われたと批判する内容にはなっていない。その背景にある物語が綴られているのだ。

たとえば、リサが子どもの頃、ジョブズは乗っていた黒いコンバーチブルのポルシェをこすって傷つけてしまうと、塗装修理せずに新車に変えていた。リサは普段ジョブズの怒りの琴線に触れないように注意を払っていたが、そんな行動に興味を覚えて、「いらなくなったら私がもらえる?」と聞いてしまった。ジョブズにそんな直球な質問をしたらどうなるか。結果は「お前には何もやらない!」だ。感情的になって出てきた言葉だが、家族としてジョブズから否定されてきたリサには重い言葉になった。

 

 

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「Small Fry」とは、「子どもたち」「ちっぽけなもの」といった意味。リサは2011年にジョブズが亡くなってしばらくしてから執筆を開始、シリコンバレーに戻り、家族や当時の関係者へのインタビューを重ねて完成させた。




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