なぜ教育現場において “Apple”が選ばれるのか❷|MacFan

特集

Appleが展開する教育向けソリューションの全容

なぜ教育現場において “Apple”が選ばれるのか❷

文●福田弘徳(株式会社Too)

教育機関に導入されるICTデバイスが多様化する今でも、iPadは根強い支持を集めている。その理由は、Appleという企業がiPadというデバイスだけを提供するのではなく、包括的な教育向けソリューションの提供に力を入れ、それが現場で高く評価されているからである。

【3】教育現場で役立つAppleプログラムの魅力

学びに役立つコンテンツの充実

こうしたアプリケーションと並んで、児童生徒や教員の学びを支えるスキルセットの獲得をサポートするコンテンツが充実しているのもApple製品が選ばれる理由だ。具体的には、「App Store」や「iBooks Store」、「iTunes U」、「iTunes」を介して、教員や子どもたちを対象にしたさまざまなコンテンツやツール、リソース、ビデオが無料で提供されている。たとえば、App Store内には、定期的にアップデートされている教育カテゴリが存在し、最新の教育向けアプリケーションは、ここから発見できる。また、「iBooks Author」を使えば、教員は指導内容に応じた教材をデザインし作成することができる。

子どもたちの多様な学習スタイルに対応し、今までにはなかった方法で学びを体験したり、表現したりするためには、こうしたコンテンツは教育現場で必要不可欠だ。学校や教員が一方的に提供する教材だけでなく、世界中のあらゆる情報にアクセスし、自分自身の知識欲や学習意欲を高めるうえで、豊富なコンテンツが利用できるAppleのプラットフォームは教育の現場で価値を発揮している。もちろん、教員が授業をデザインしていくうえでも、思い描いた授業を行うための教材が揃っている。子どもたちにとっても教員にとっても、学びの視野を広げ、世界中の情報にアクセスできる環境に価値があるのだ。

 

Appleが提供する教育コンテンツ

 

App Store

App Storeは、Appleの展開するアプリ販売ストア。ここでは、Apple純正ア プリのほか、サードパーティが開発したアプリが無料・有料ともに公開されて いる。公開されているアプリはすべてAppleが審査を行っているため、教育機 関でも安心して利用できる。

 

 

iBooks Store

iBooks Storeは、Appleが展開する電子書籍配信プラットフォームだ。教員 にとっては、学習プログラムや指導案の管理ソフトとして、生徒にとっては動 画や音楽などのインタラクティブな要素を含んだ「電子教科書」としての利用 や提出する課題のリーダアプリとしての活用が期待できる。

 

 

iTunes U

iTunes Uは、宿題の提出、成績管理、ディスカッションなどの機能で、クラスの 管理をシームレスにまとめることができるアプリケーションだ。授業の進行、 課題の評価、そして生徒とのやりとりまでがとてもシンプルになる。また、世界 中の学校の講義を聴講することも可能だ。

 

 

iBook Author

電子ブックを編集する無料のMac用オーサリングソフト「iBooks Author」。 児童生徒のiBooksアプリに書き出された「電子教科書」では、グラフィックや 音楽など、これまでにない学習体験を得られる。iBooks Authorを使って教 員が教科書をつくったり、生徒がレポートをつくるなどの例も広がっている。

 

 

 

MacとApple TVの採用も増加

Appleは、教員をサポートするアプリやカリキュラム、プログラムの提供にも積極的に取り組んでいる。たとえば児童生徒のiPadをモニタリングしたり、アプリを起動したり、特定の操作をナビゲートできる教員向けアプリ「クラスルーム」や、Apple製品を活用した授業を行うためのスキルやノウハウを獲得できる「Apple Teacher」、幼稚園から大学まで、どの学年でのコーディング指導にも役立つ、総合的なカリキュラム「Everyone Can Code」など、実に多彩だ。多くの教育現場で使われるこれらのプログラムの詳細を見ていこう。

 

授業を円滑に進める「クラスルーム」

教員がiPadを最大限に活用して授業を行うためのアプリケーションが「クラスルーム」だ。授業のワークフローを管理し、子どもが授業に集中するよう支援する。「画面表示」機能を使えば、教員はワンタップするだけで教室にいる生徒のiPad画面を見ることができる。「リモート操作」機能を使うと、すべての生徒のiPad上で、特定のアプリケーションやiBooksのページを同時に開くことができる。児童生徒たちが手元の課題やテストに集中できるように、必要に応じて、iPadを消音にしたり、1つのアプリケーションしか使えないようにiPadをロックすることも可能。

クラス概要」機能を使うと、教員は、児童生徒がどのアプリケーションをどれだけの時間使ったか確認したり、共有アイテムを保存することもできる。将来的にMacでも使える予定だ(2018年夏にベータ版が公開予定)。

 

授業デザインを変える「スクールワーク」

「スクールワーク」を使えば、アプリケーション内で、授業で使う教材の共有、課題を指定しての配布、児童生徒たちの進捗状況の確認が可能だ。また、それぞれの生徒のニーズに応じて指導方法を調整することもできる。一方、児童生徒たちは課題の確認や提出、自分の進捗状況の確認などをすべて、1つのアプリケーション内で行える。PDF、WEBリンク、書類などの配布資料を簡単に作成し、スクールワークに対応したApp Storeのアプリケーションを利用したアクティビティを割り当て、その進捗を確認することもできる。

スクールワークを開けば、教員は受け持っているすべての授業や今後の課題の確認を手軽に行えるようになる。

 

教育者を支援する「Apple Teacherプログラム」

「Apple Teacherプログラム」は、指導と学習にApple製品を活用したい教育者を支援するための無料のプロフェッショナルラーニングプログラム。教員が教室でiPadやMac、そのほかのApple製品を最大限に活用できるように、楽しくインスピレーションを与えるコンテンツを提供している。手順は簡単で、まずはApple IDを使ってApple Teacherに登録し、Apple Teacher Learning Centerにアクセスする。iPadかMacかを選択し、教材を使ってそれぞれの製品、アプリケーションのスキルについて学習する。そして、新しいスキルをマスターしたら、クイズに挑戦する。クイズは合格するまで何度でも受けることができ、合格すると成果の証にバッジを獲得する。すべてのバッジが揃うと、必要なスキルをすべて習得したことが証明され、Apple Teacherのロゴを取得できる。

教育機関や教員にとっては、iPadやMac、純正アプリケーションを授業に活用する方法を知れるという効果的なプログラムだ。無料の学習教材やヒント、アイデアを使って、自分のペースで学ぶことができる。

 

プログラミングが習得できる「Xcode」と「Swift Playgrounds」

「Xcode」を使えば、誰もがiPadやiPhone、Macで動作するアプリケーションを作ることができる。すべてのApple製品のソフトウェアを開発する際に、Apple自身が使っているツールと同じものだ。使用するプログラミング言語「Swift」はAppleが開発したもので、プログラミングをより簡単に、誰にでも使いやすいように設計されている。一方、「Swift Playgrounds」は、Swiftをインタラクティブに楽しく学べる、iPadのための革新的なアプリケーションだ。パズルを解きながら、Swiftの基本をマスターできる。Swift Playgroundsはプログラミングの知識を一切必要としないので、これからプログラミングを学び始める生徒に最適だ。

Swift Playgroundsには教師用ガイドも用意されており、教師もプログラミングの経験を問わず、授業に取り入れることができる。教員用ガイドには、概念を理解するための活動案から、振り返りのための質問、解説用Keynoteプレゼンテーションなどが用意されている。

 

コーディングを学べる「Everyone Can Code」

誰もがコードを学び、作成し、教えられるようにする、コーディングのためのプログラムが「Everyone Can Code」だ。コーディングを学ぶことで、問題解決や批判的思考力といった重要なスキルを習得できる。コーディングという、これまでにない新しい方法を取り入れて問題を解決していくことで、創造力が養われていく。創造性を備え、持続可能社会の創り手となることは次期指導要領にも言及されており、生きる力を育むために必要な条件として認識されている。スキルレベルや経験が異なるほかのメンバーとの共同作業が体験できるコーディングは、きっとほかの教科や学校以外の生活にも活かされるはずだ。

誰でもコードを学び、書き、そして教えることができるプログラムがEveryone Can Codeだ。コーディングは多くの場合、チームワークが求められる。個性を活かし、多様な人々との協働を促す教育の充実に努めることは次期指導要領に明記されている。

 

Everyone Can Codeが成功したことにより、Appleは「Everyone Can Create」という新しいカリキュラムを発表した(2018年秋に登場予定)。Everyone Can Createを使うと、さまざまな科目にクリエイティブな表現方法を取り入れることが可能になる。音楽、ビデオ、写真、スケッチを通してアイデアを生み出し、伝えていく方法を生徒たちに教えることで、児童生徒たちは自分のクリエイティブな才能を発見していくことができる。クリエイティブな思考が多方面で児童生徒の学びへの関わりを深めるということは、研究結果でも示されている。児童生徒の学びへの関心が深まると、自主的に学ぶようになり、問題解決やコミュニケーション、共同作業の力が向上するのである。

Everyone Can Createは、これまで想像もしなかった方法で結びつきを作り出して、児童生徒たちはこうした能力を学校でのさまざまな活動で発揮していく。このようなクリエイティブなスキルを活用していくことで、どんな科目においても、理解を深め、学んだことを発表できるようになるはずだ。

 

新プログラム「Everyone Can Create」

「Everyone Can Create」は、現在の「総合的な学習の時間」のように横断的な課題学習を既存教科の別枠として新たに設けるのではなく、これまでの授業や学習の中に音楽や映像、絵や写真といったクリエイティブな要素を簡単に盛り込めるようにするというアイデアだ。国語・算数・理科・社会、どのような教科であっても、児童生徒たちはiPadを用いて自分たちで調べ、考え、写真や映像、AR(拡張現実)などを利用して課題や宿題を作成したり、教室で大人顔負けのプレゼンを行えるようになる。このEveryone Can Createの展開に必要な学習リソースやガイドはこの秋よりすべて無料で提供開始される予定だ。

 

 

【4】教育現場でのApple製品導入・管理の容易さ

教師本来の役割をこなすために

教育現場でICTの導入を検討する際は、導入方法やプログラムが整っていることも重要だ。どこの学校にも専任のIT担当者がいるわけではなく、最新のデバイスやITスキルを備えた教員ばかりではない。こうしたテクノロジーを採用したいと考える学校のために、教員が1からタブレット導入や管理の仕組みを検討することは、教員本来の役割ではない。教員はいかに授業の中にテクノロジーを取り入れるか、子どもたちの学習体験を高めることができるか、ということを考えなければならないのである。

Appleは、教育機関がiPadやMacを導入する際に避けて通れない「ユーザ」「デバイス」「コンテンツ」の3つのポイントを管理するための「Apple School Manager」という教育機関向けのWEBサイトのポータルを提供している。数多くのデバイスを遠隔で管理、設定するためのモバイルデバイス管理(MDM)の仕組みと組み合わせることで、日常的なiPadやMacの管理業務の負荷を軽減し、授業に役立つアプリケーションやコンテンツをスムースに配信できるようになっている。

総じて、Apple製品を導入を計画する際に重要といわれているのは、「Apple School Manager」「デバイス管理」「教室のためのツール」の3つの要素だ。これらをしっかりと理解しておくことが導入成功の鍵となる。

 

Apple製品の導入の大事な3要素

 

 

❶Apple School Manager

Apple製品を導入する際に大事になる1つ目の要素の「Apple School Manager」は、WEBベースのポータルである。IT管理者はこのツールを使って、「ユーザ」、「デバイス」、「コンテンツ」のすべてを1カ所で管理できる。管理者はインターネットからこのポータルにアクセスして、職員、教員、生徒用アカウントの作成や、モバイルデバイス管理(MDM)ソリューションへのデバイスの割り当て、アプリケーションや教材の購入などを行う。

Apple School Managerの登録は、すでに「Volume Purchase Program(VPP)」または「Device Enrollment Program(DEP)」のアカウントを持っている場合は登録する必要がなく、デバイスとコンテンツを自動的に移行できるオプションが備わっている。新規登録の場合は、画面の手順に沿って教育機関の詳細情報を入力し、登録を進めていく。Apple School Managerに登録すると、該当する権限を持った学校の職員がプログラムのWEBサイトにサインインし、1つまたは複数のMDMサーバをアカウントに紐付けて、特定のデバイスをMDMサーバの1つに関連付けることができる。デバイスをアクティベートすると、MDM固有の構成と制限が自動的にインストールされる仕組みになっている。

また、Apple School Managerを使えば、iPad、Mac、Apple TVを効率よく設定でき、学校が所有するすべてのデバイスをスムースに配布可能だ。デバイスの自動登録によって生徒や職員の設定もシンプルになるため、デバイスの電源を入れた瞬間からすぐに使い始めることができる。デバイスを登録の際には、学校が所有するデバイスがMDMソリューションに自動的に登録されるので、デバイスに触れずに登録を完了させて、ユーザに手渡すことも簡単になる。設定中の特定の画面をスキップして設定をより素早く行うことも可能だ。

Apple School Managerのデバイス登録が強化されたことにより、これまでは、AppleもしくはApple正規販売店、または通信事業者から購入したデバイスしか、DEPと呼ばれる自動デバイス登録の対象にならなかったが、これからは、「Apple Configurator 2(バージョン2.5)」を使って自動デバイス登録にiOSデバイスとtvOSデバイスを登録できるようになっている。購入方法や購入元を問わず(寄付されたデバイスでも)、すべてのデバイスをApple School Managerに登録して監視することが可能だ。

Apple School ManagerとMDMを組み合わせることで、教育機関はアプリケーションとブックを一括で購入して、デバイスやユーザにワイヤレスで割り当てることができる。管理配布(MDMでコンテンツを管理するためのオプション)を利用すると、デバイスに割り当てたアプリケーションを無効にして、別のデバイスやユーザに割り当てることができるので、購入したアプリケーションの所有権を組織が保持し、コントロール可能だ。

さらに、Apple School Managerから児童生徒と教員の全員分のアプリケーションやブックを一括で簡単に購入もできる。「Appとブック」セクションで直接コンテンツをブラウズし、購入する。購入したコンテンツを「場所」に紐付けできるようになり、同じ場所に所属する購入担当者同士が購入済みコンテンツを互いに確認できるようになったため、購入済みコンテンツを学校または学区全体で整理して簡単に管理できるようになった。

 

管理をすべて1カ所で

Apple School Managerは、学校管理者が「ユーザ」、「デバイス」、「コンテンツ」を管理できるWEBベースのポータルだ。管理対象Apple IDの配布、デバイスの設定、アプリケーションやブックの入手が簡単にできるほか、児童生徒を引き込む学びをつくり出すための教員向けのツールを提供することも、すべて1カ所で行える。

 

管理対象Apple IDを作成する

Apple School Managerで学校の名簿データを読み込むと、管理対象Apple IDが自動的に作成され、児童生徒たちにiCloud Drive、iCloudフォトライブラリ、バックアップ、スクールワーク、共有iPadへのアクセス権が与えられる。

 

名簿データとの連係も簡単

Student Information System(SIS)と直接接続すると、学校の名簿データをApple School Managerに取り込める。SunGard、Infinite CampusやPowerSchoolなどの一般的なSISプロバイダと直接連係可能だ。

 

MDMとの連係も容易

Apple School Managerを使うと、学校のデバイスをMDMに割り当てて、登録と構成を自動で行える。デバイスの種類ごとにデフォルトのMDMサーバを設定することができるため、iPadとMacの割り当ての自動化が簡単だ。

 

クラスルームとスクールワーク

Apple School Managerで生徒のアカウントとクラスの名簿を設定すると、それぞれのクラスが自動的にクラスルームとスクールワークの中に作成される。

 

Apple TVのMDM連係も

Apple School Managerを使えば、Apple TVをMDMに登録することができ、電源やEthernetに接続するだけで完全に構成することができる。

 

 

❷デバイス管理

MDMとは、スマートフォンやタブレットなどのデバイスを大量導入する際に必要となる管理ソリューションである。iPadやMacなどを導入する教育機関においても必須のツール。MDMソリューションはApple以外のプロバイダによって提供されており、国内では「MobiConnect」、「Jamf Pro」の採用例が多い。MDMでできることはデバイスの安全な登録、ワイヤレスでの設定やアップデート、ポリシーの準拠状況の監視、アプリケーションやブックの導入、管理対象デバイスのリモートでのワイプやロックなど多岐にわたるが、基本的な機能はソリューションによって違いはない。インターフェイスや管理コンソールの使いやすさ、教育向けの機能の有無、価格の面から、導入形態や教育機関特有のニーズに合わせて検討すべきだ。また、Appleの最新OSに対応しているか、Appleの教育向けの管理機能に対応しているか、ベンダーのサポートの有無、macOSに対応しているかなども確かめるのがよいだろう。

MDMの教育向け機能例

●メールアカウントをインストール、管理、削除
●Wi-Fiのパスワードなどの設定、パスコードポリシーの適用
●アプリケーションやブックのインストール、設定、管理、削除
●アプリケーションのインストールの許可/禁止
●デバイスの在庫管理、ポリシーの準拠状況の監視
●パスコードの消去、リモートロック、データ消去

 

 

❸教室のためのツール

3つ目の要素の「教室のためのツール」は、教員と生徒の学習を支援するためものだ。前述したクラスルームやスクールワーク、Apple TVなどがそれに当たる。特にクラスルームは教員の有能なアシスタントとして活躍する。授業だけでなく、職員の研修等にも使用でき、学校や教育機関における指導やトレーニングのさまざまな場面で活用されている。ITのサポートやMDMを利用しなくても、教員はクラスルームでクラスごとにデバイスを管理することができるのもメリットの1つだ。すべての教員がすぐに使い始めるべき、授業支援のツールである。子どもたちが授業中にiPadを利用する際に、一つひとつ作業に集中できるようにするためにクラスルームは必須ツールである。

また、Apple TVは手元のiPadの画面を投影し、教員やほかの生徒たちのiPadの画面を共有することに有用なツールである。Apple TVをApple School ManagerとMDMを組み合わせることで、簡単に教室に配備できるようになったのに加え、Appleデバイスを利用して教室の機能を拡張することも手軽に実現可能になった。教室内の学習体験をより一層高めるうえでも、Apple TVの教室への配備は欠かせないだろう。

 

「教室にApple TV」が普通に

Apple TVがあれば、生徒たちのiPadやMacから作業を瞬時に共有できるため、クラス全員へ発表を促すこともできる。

知っておきたい用語

VPP(Volume Purchase Program)
「Volume Purchase Program(VPP)」に登録すると、IT管理者がアプリのライセンスを一括購入して、それぞれのデバイスに割り振ることができ、購入と運用の手間を減らすことができる。MDM経由の管理配布の場合、購入したアプリはIT管理者のApple IDに紐付けられるためアプリの回収・再配布が可能な点、MDMと連係させることで一括で配付できる点、教育機関向けに許可されたアプリは割引が受けられる点、クレジットカードのほかに「VPP Credit(Volume Purchase Program Credit)」と呼ばれる発注書によって購入ができる点など、さまざまなメリットがある。なお、VPPを使って購入できるのは、App StoreのアプリとiBooks Storeで公開されている電子書籍だ。

 

DEP(Device Enrollment Program)
iOSデバイスやMacの大量導入を簡便化するためにAppleが用意しているのが「Device Enrollment Program(DEP)」だ。DEPに対応した販売店からデバイスを一括購入すると、Appleもしくは販売店側でその端末のシリアル番号をDEPに登録する。そして組織内では、DEPに対応したMDMサーバとDEP登録した端末を紐付ける。あとは、MDM等で運用ポリシーに沿った初期設定を定めて構成プロファイルを作成しておけば、Appleデバイス初期セットアップのアクティベーション時に、ネットワーク経由で構成プロファイルが適用され、初期設定を施した状態でデバイスを監視下に置きながら使用できるようになる。

 

 

目的を見誤らないApple導入のために

教育現場におけるICT導入は、教育の2020年問題として話題となっている大学入試改革に対応するためや、文部科学省が推進している3クラスにつき1クラス分の端末整備を実現するために喫緊の課題として挙がっている。しかし、現在の学校や教育機関の対応状況を見てみると、一部のICTに詳しい教員がモチベーション高く導入を牽引していたり、iPadを導入したはいいものの、利活用が進んでいないといった状況がほとんどだ。教育現場のICT化の本来の目的は、いかに学習スタイルや授業に定着させるかである。それが、教員にとって新たに考える必要性が生じ、難易度、手間、時間的制約から、取り組みにネガティブな印象を持たれている。

こうした教育現場の課題に対して、Appleはさまざまなツールやプログラムでアプローチしている。教育現場のICT化を成功に導くために、デバイスの特性やアプリケーション、プログラムなどを理解することは、継続的なApple製品活用には欠かせない。日々進化し続けるAppleテクノロジーを追従し続けるためにも、正しい情報源や適切なパートナーから最新情報を得ることは、学校や教員がApple製品導入を安心して進めるうえでも大事なことである。教育現場がテクノロジーを活かして、教員が授業をデザインすることに注力し、子どもたちが多様な学びの姿勢を身につけるためにも、目的を見誤らないApple製品導入を推進することが成功につながる。