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世界初のCarPlay搭載 大型プレミアムツアラー「Honda Gold Wing」

文●熊山准

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Honda Gold Wing

【URL】http://www.honda.co.jp/GOLDWING/

 

初のカープレイ搭載バイク

2018年4月、ホンダのフラッグシップモデルである大型バイク「ゴールドウイング」が17年ぶりのフルモデルチェンジを果たした。バイク(二輪車)では唯一となる1800ccの水平対抗6気筒エンジンを搭載しながら、先代比で38キログラムもの軽量化や、1リッターあたり7キロの燃費向上を図り、なおかつ7速のオートマチックモデル(DCT)が選択できるなど、長距離ツーリングはもちろん普段使いにも対応できるオールラウンダーとして話題を呼んでいる。

ただ、何よりの─とりわけiPhoneユーザや多くのライダーにとってのトピックは、第6世代のゴールドウイングがバイクとして世界で初めてアップルのカープレイ(CarPlay)に対応したことだろう。車にiPhoneを接続すれば、運転中でもSiriによる音声指示でのナビやオーディオの操作をはじめ、メッセージ送信やメモまで取れるカープレイ。分厚いグローブにヘルメットを装着したうえ、四肢が操作系統にほぼ拘束され、ちょっとした油断が大事故に直結するバイクは、車に比べてよりシビアな集中力が求められるだけに、ハンズフリー対応は悲願であったと言える。

 

苦難続きだった開発過程

世界初のバイク用カープレイの開発に至った経緯や課題は何だったのか。開発を担当した本田技術研究所二輪R&Dセンターの研究員・菊池裕氏に話をうかがった。

「開発のタイミングですが、実はカープレイが『iOSイン・ザ・カー(iOS in the Car)』と呼ばれていた頃から注目していました。そのうえで搭載する車両をどれにするのかを探っていまして、やはりフラッグシップのモデルであり、2006年に世界初のバイクナビを内蔵したゴールドウイングが最適だろうと」

iOSイン・ザ・カーの発表が5年前の2013年6月。世界初のバイクナビ誕生からわずか7年後に検討が始まっていたのには理由がある。

「ここ10年ほどで我々が思っていた以上にスマホが普及したことですね。ビルトインのバイクナビも、あれはあれで良かったんですが、電話はつながらなかったし、音声操作もできなかった。地図データも頻繁には更新できません。それらの課題をスマホは全部解決してしまいます。ただ、グローブをしたままだとタッチ操作ができないし、炎天下は見えづらくなります。もっと使い勝手が良く安価なものを二輪メーカーとして提供しなくてはいけない。それがカープレイだったんです」

バイク乗りの筆者も、初めて所有した大型二輪にはオプションの専用ナビを装着していた。2000年代はスマホが普及していなかったため、バイクでもナビが使える利便性と、頑強な防塵防水性能、グローブをしたままでも操作できるボタン類は非常に頼もしかったが、その導入コストは本体と取り付け料で10万円と非常に高額だったことを記憶している。

「おっしゃるとおり、バイクナビにはコスト面の課題もありました。ゴールドウイングはアメリカが主要なマーケットで、日本での販売台数は年間500台程度。その台数で日本専用のナビを開発して、地図データの更新までケアし続けるのは困難です。その点、カープレイを搭載すれば自前でデータを持たなくてよいわけですから、メーカーとしてはディスプレイと操作スイッチ(ヘッドユニット含む)を用意すれば、最新のデータを活用したシステムが提供可能となります」

こうして始まった世界初のバイク用カープレイ開発プロジェクト。しかしその道のりは簡単なものではなかったようだ。

「まずはカープレイをバイクにも使用させてください、と交渉するところから始まりました。幸い我々は四輪車メーカーでもあるのでつながりがあったんですが、そこから承諾をいただくまでが長かったですね。特に課題として挙がったのが、バイクには内蔵マイクがないこと。当然ヘルメットにブルートゥースヘッドセットを装着してSiriを使わざるを得ないんですが、カープレイはワイヤレスでのマイク使用を想定していなかったんです。運転中に使うものなので通常より音声認識に対して求める仕様がシビアでした」

たとえワイヤードだったとしてもバイクの場合、静かな四輪車の車内と違いエンジン音や風切り音がマイクに侵入してくる。とはいえ利便性を考えればワイヤレスは捨てがたい。問題山積みの中、アップルにブルートゥースでのカープレイ利用を認めてもらうべく打った手はなにか。

「そもそも当時のバイク用のブルートゥースヘッドセットのマイクには、出力8KHzのサンプルしかなかったんです。これだとバイクとの接続が心もとないということで、メーカーさんにお願いして規格上限の16KHz対応のファームウェア(プログラム)を新たに作ってもらうことにしました。私たちも栃木県のテストコースで取ったデータを提供したりして、なんとかOKをもらったのです」

こうしてマイク問題は解決したものの、前例のないバイク対応カープレイに際し、もうひとつクリアしなければいけないポイントがあったという。

「車だとディスプレイをタッチすることでもカープレイが使えますが、バイクは運転中ハンドルから手を離せません。そこで停車中に使えるセンターコンソールのコマンダに加え、運転中にハンドルから手を離さずに使える専用スイッチの二系統のコントローラを用意したんです」

こうして、幾多の問題を経てカープレイに対応した世界初のバイクが開発されたが、その使い勝手はどんなものか。実際に車両を借り、小一時間ほど都内をクルーズしてみた。

 

運転に集中せざるを得ない 二輪だからこそハンズフリーの CarPlay対応は必然だった

 

 

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株式会社本田技術研究所二輪R&Dセンター研究員・菊池裕氏。

 

 

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炎天下でも視認性が高い7インチの液晶ディスプレイをはじめ、センターコンソールのコマンダ、ハンドル左手元の専用スイッチなどCarPlay用の装備が目を引く。




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