2018.06.30
IT、モバイル、デザイン、アートなど幅広くカバーするフリージャーナリスト&コンサルタントの林信行氏が物申します。
ITの首都といえば、シリコンバレーを思い浮かべる人が多いだろう。スマートフォン市場に圧倒的な影響力を持つアップル、世界の検索とインターネット広告で圧倒的地位を築いたグーグル、ソーシャルメディアの定番であるフェイスブックやツイッター、クリエイティブツールをつくるアドビなど今日の我々のITインフラのほとんどはシリコンバレー企業が押さえている。
これをアメリカ西海岸という表現に拡張すると、OSメーカーでビジネスソフトでも圧倒的シェアを持つマイクロソフトやEコマースの頂点に君臨するアマゾンも入ってくる。それだけに今でも「日本のシリコンバレー」を目指す企業が多いし、政府主導のプロジェクトも多い。
だが、ITが1日中画面を覗き込んでいる技術好きの人たちのものだったのは今は昔。今日のITは老若男女を問わず、1次、2次、3次産業を問わず、誰もが1日24時間、なんらかの形で恩恵を受ける重要な社会基盤となっている。そんな中、シリコンバレー一辺倒の時代から少しずつ状況は変わってきている。シリコンバレーは世界の中でも、特にITリテラシーが高い特異な地域。ここでつくられた常識が、無理矢理世界の常識となるのはそもそも無理がある。
この数年台頭してきているのが「La FRENCH TECH」という名前で知られるフランスのテクノロジー業界だ。政府も後押しをしており、CESやSxSWといったテクノロジーイベントでも際立った存在感を放つようになってきた。IoTという言葉が広まってきた頃からフランスのIoTメーカーは、世界的に有名なプロダクトデザイナーのフィリップ・スタルク氏などトップデザイナーと組んだりすることも多かった。人々の生活に入っていこうとするなら、製品の見た目にも魅力を持たせようという考えは、「アップルを除き」シリコンバレーの企業からは欠けている(あったとしても、その嗜好が一般向けではない)。