2018.05.14
iPadを学校に導入したら、それでうまくいくかというと決してそうではない。デバイスに加え、アップルはそのためのさまざまなソリューションを用意している。
教育現場を常に考えて
アップルは教育現場に向けて、iPadのようなデバイスだけを提供してきたわけではない。学校で生徒や教師にiPadを配るだけでは教育のリノベーションが実現しないことをアップルは熟知している。そのためデバイス、ツール、カリキュラム、プログラムの4つの側面から、さまざまな取り組みを行っている。
デバイスに関しては、iPadやMacなどの直接生徒や教師が利用するもののほかに、教室内のテレビやプロジェクタと接続できるアップルTVや、ワイヤレス接続のためのWi│Fiベースステーションの「AirMacシリーズ」がある。ツールに関しては、iWork(キーノート、ページズ、ナンバーズ)をはじめとする純正アプリをはじめ、教材作成用のiBooksオーサーやプログラミング学習アプリのスウィフト・プレイグラウンドといった教材、さらには世界中の学校の講義を聴講できるiTunes U、そしてアップストアにあるサードパーティ製の豊富な教育アプリを用意。これだけでも、いかにアップルのプラットフォームが教育向けに適したものであるかがわかる。
教師向けのツールも
さらに、カリキュラムやプログラムに関しては、「アップル・ティーチャー」や「エブリワン・キャン・クリエイト」といった教師をサポートする取り組みにも積極的だ。また、アップル製品を実際に学校に配備するうえで重要となるMDMへの登録を自動化し、デバイスの初期設定を簡単に済ませることが可能なDEPや、アプリの一括購入の仕組みである「VPP」、さらには教育機関向けのデバイス、アプリ、 アカウント管理ツールの「アップルスクールマネージャー」や、教員向けの各種アプリも提供する。
このようにアップルが提供する教育向けソリューションは実に多彩で、その全体像や詳細がややわかりにくいのも事実だ。ここでは、3月開催されたスペシャルイベントで追加されたアップルの新しいソリューションも含め、詳しく見ていこう。
Appleの主な教育向けソリューション
生徒のiPadを大型スクリーンに
Apple TV 4K
【価格】32GB:1万9800円/64GB:2万1800円(1080pモデルは32GB:1万5800円)
教室においてiPadと並んで重要な役割を果たすアップルデバイスが「アップルTV」だ。ホームエンターテインメントのイメージが強い同製品だが、ハイビジョンTVやプロジェクタとHDMIケーブルで接続することで、iPadの画面をワイヤレスで投写できる。
また、「アップルスクールマネージャ(以下ASM)」を使えば、iPad同様にアップルTVもMDM(モバイルデバイス管理)サーバに自動登録し、構成を細かく設定できる。これにより、アップルTVが搭載するtvOSに対して、リモートで特定のアプリを非表示にして機能に制約を与えたり、アップデートを夜間に実施したりといった管理を行える。ASMへの手動登録はアップルコンフィギュレータ2で行える。
教室にApple TVを設置することで、生徒のiPadの画面を大型スクリーンなどに表示して学習成果などを発表できる。
新しい学習体験を生み出す電子ブック
iBooks + iBooks Author
【価格】無料
iPadとMac共通の電子ブック閲覧アプリ「iBooks」は、学校教育の分野でも重要な役割を果たす。教師にとっては、学習プログラムや指導案の管理ソフトとして、生徒にとっては動画や音楽などのインタラクティブな要素を含んだ「電子教科書」としての利用や提出する課題のリーダアプリとしての活用が行えるからだ。
さらに、この電子ブックを編集する無料のMac用オーサリングソフト「iBooksオーサー(iBooks Author)」を利活用するシーンも増えてくるだろう。なぜなら、今回のイベントでiPad版「ページズ」のEPUB3形式の書き出し機能強化やテンプレートの追加、アップルペンシルのサポートが実施されたからだ。
iBooks Authorは電子ブックの作成と編集ができるMac用のオーサリングソフト。PDF形式での書き出しや、iBooks用に出版できる。
生徒のiBooksアプリに書き出された「電子教科書」では、グラフィックや音楽などこれまでにない学習体験を得られる。
アップルプロダクトを支える言語
Swift Playgrounds
【価格】無料
「スウィフト(Swift)」は、アップルが提唱するモダンプログラミング言語で、iOSアプリやMac用のソフトなど同社のアプリ開発にも広く利用されている。スウィフトは無料で利用でき、オープンソースライセンスのもとで利用できるので、開発者のみならず多くの教育機関での採用が広まっている。
アップルでは、スウィフトを通じてプログラミングの基礎を学習できるiPadアプリ「スウィフトプレイグラウンド(Swift Playgrounds)」を提供しており、「エブリワン・キャン・コード」により誰でも着実にアプリ開発までの歩みを進めることができる。アップルはこのスウィフトを軸に教育市場からビジネス市場まで一貫したエコシステムの構築を進めている。
Swift Playgroundsだけでは実際にデバイスで動くアプリ開発はできないが、学習したコードはMacの統合開発環境「Xcode」の開発に役立てられる。