アップルミュージックは違法ダウンロードを一掃できたのか?|MacFan

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アップルミュージックは違法ダウンロードを一掃できたのか?

文●牧野武文

フリーライター・牧野武文氏が消費者目線でApple周りの事象を独自の視点で考察。

2000年代に収益が大きく落ち込んだ米国の音楽産業。しかし、ここにきて回復の兆しを見せ始めている。アップルミュージックなどのサブスクリプションサービスが軌道に乗るとともに、違法ダウンロードが減ってきたからだ。なぜサブスクリプションサービスは、違法ダウンロードを駆逐することができたのか? これが今回の疑問だ。

 

違法ダウンロードを克服した米国音楽産業

米国の音楽産業が好調だ。2000年頃から「CDが売れない」という底なし沼にはまり、収益は右肩下がりだったが、2010年頃に下げ止まり、横ばいを維持できるようになった。そして、2016年に上昇に転じると、2017年には上昇傾向がはっきりした。

収益が下がった原因、それは違法ダウンロードが横行した影響だ。そして、収益が持ち直した原因。それはアップルミュージック(Apple Music)などのサブスクリプションサービスからの使用料収入だ。

インターネットが一般に普及して20年、音楽産業は違法ダウンロードとの戦いを続けてきた。その長い長い戦争がようやく終結する。開戦のきっかけは、1999年に登場したナップスター(Napster)だった。これはいわゆるP2P型のファイル共有ソフトで、音楽CDからリッピングした音声ファイルを簡単に交換できた。

この違法ダウンロードは世界中に広まり、音楽産業は大きな打撃を受け、収益が下がり始める。しかし、音楽産業は効果的な手を打つことができなかった。なぜなら、当時は法律が追いついておらず、音楽を勝手にダウンロードすることの違法性を明確に問うことができなかったのだ。

この問題を解決しようとしたのがアップルだった。アップルは2003年にiTunesミュージックストア(iTunes Music Store)を開設し、1曲99セントという低価格でのデジタル販売を開始した。当時CEOだったスティーブ・ジョブズは、「誰だって、万引きをした音楽を聴くのは心地良くないはずだ。利便性が高く、価格が妥当なデジタル配信があれば、そちらを利用する」と主張して、iPodの一大ブームを引き起こした。しかし、確かにデジタル配信の収入は増えていったが、それ以上にCD売り上げの落ち込みが激しく、音楽産業はさらに沈んでいく。

これを救ったのが、2008年に登場した聴き放題サブスクリプションサービスのスポティファイ(Spotify)だった。毎月1000円程度を払うだけで、いつでもどこでもどのデバイスからも、世界中の音楽を聴くことができるという「最終兵器」だ。このサブスクの登場により、CD売り上げ減少による収益減を補えるようになり、音楽産業全体の収益は下げ止まった。さらに、2015年にアップルがアップルミュージックを始めると、翌年にはついに収益を上昇に転じることができた。




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