2018.03.31
米国LA在住のITライター・三橋ゆか里氏の最新テックトレンドウォッチ!
先日、日本語の現地情報誌『ライトハウス』の人生相談コーナーを担当されてきた詩人・伊藤比呂美さんのトークショーに参加してきました。観客の99%はロサンゼルスに住む女性たち。伊藤さんが話す異国の土地で生活することの大変さには、会場から共感が集まっていました。
この大変さを一言でまとめるなら、他所から来た“マイノリティ”として差別されるということに尽きるかもしれません。英語の発音がネイティブ並みなら、さほど違いを意識されることなくやり過ごせるのかもしれませんが、典型的な日本人訛りの英語ではそれも叶いません。
伊藤さんが日常茶飯事の例として挙げていたのが、カスタマーサポートなどに電話をかけるときのこと。相手が目の前にいるなら、口の動きや身振り手振りで理解してもらうこともできますが、電話越しとなると聞き取りづらい英語で頑張って意思疎通を図るほかに方法はありません。
でも、彼女の話を聞いていて、この壁は何も人間を相手にしているときに限らないことに気づかされました。というのも、こちらでは自動音声や音声認識の電話サポートが当たり前だからです。日本にも、電話の目的に応じて番号を押す自動音声サービスはありますが、こちらの自動音声サービスはもう少し高度です。
まず、特に大きな病院からは、予約のリマインダーが自動音声でかかってきます。病院や保険会社に電話する場合も、人間のカスタマーサポートに振り分けられる前に本人確認のために電話番号や住所などを口頭で伝える必要があります。問題は、きちんとしたネイティブ英語でないとロボットに「アイムソーリー」と却下されてしまうこと。
これが人間のカスタマーサポート相手なら、まだなんとか理解しようと努力してくれるかもしれませんし、これまでの経験値からうまく聞き取ってくれるかもしれません。でも、昨今の人工知能(AI)を活用したカスタマーサポートではそうもいかず。顧客満足度アップやコスト削減のために従来のカスタマーサポートをAIで補完または置き換える動きが加速していますが、その聞き取り能力はネイティブ英語にとどまります。
Yukari Mitsuhashi
米国LA在住のライター。ITベンチャーを経て2010年に独立し、国内外のIT企業を取材する。ニューズウィーク日本版やIT系メディアなどで執筆。映画「ソーシャル・ネットワーク」の字幕監修にも携わる。【URL】http://www.techdoll.jp