2017.12.12
●人気放送作家が語るケチとアップルの交差点。
クリエィティブなCMはボクを変えた
コマーシャルが好きだ。初めて意識したのはコカ・コーラだ。今も雑誌で活躍している松本孝美さんがスーツや浴衣でスタイリッシュに瓶や缶を持っていた。
サントリーのCMでは、開高健さんがモンゴルやアラスカを旅していた。それに影響されて、ボクも釣りを始めた。ソニーのカセットテープのCM「オーバーナイト・サクセス」(1984年)では、ブロードウェイを目指す若者の姿を見て、何かボクも表現者になれるのではないかと未来を夢見た。
ウォークマンといえば猿のCMを思い出すが、初代はブルックリン橋の上で踊ったり、浴衣姿の男とレオタード美人がダンスしたりしていて「ステレオが部屋を出た」というナレーションがつけられていた。手に入れて、片思いの相手と学校の片隅で聞いた。
土砂降りの中、ボレロが流れるホンダプレリュードのCMにも心打たれた。大学生のとき、インテグラ(1985年)のCMがスタート。山下達郎さんの「風の回廊」「マーマレレード・グッバイ」が流れた。「夏へつづく道」というコピーと、白いシャツに身を包んだファッショナブルなモデルが織りなす姿に魅了され、ボクも思わず白の3ドアを買ってしまった。
だが、1989年に映画「バックトゥザフューチャー」で大人気のマイケル・J・フォックスが、「カッコインテグラ」とダジャレを言い出してからホンダのCMが一転した。その後、タレントが続々と出演し始めたのである。なんだか残念でホンダから離れた。