教育・医療・Biz iOS導入事例

Appleデバイスは“正解のない問題”に取り組む助け

文●山田井ユウキ

Apple的目線で読み解く。教育の現場におけるアップル製品の導入事例をレポート。

現在注目を集めているSTEAM教育にはICTが欠かせない。そんな信念を持って、iPadやMacを活用した授業カリキュラムの開発に携わるADEの品田健氏。氏の授業を取材しながら、時代とともに変わる教育のあり方について話を聞いた。

 

 

 

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Apple Distinguished Educator
品田健氏

桜丘中学・高等学校(東京都北区)で副校長、次世代教育開発担当参与として、ICT教育を推進。以来iPadやMacを活用したICT教育の第一人者として知られる。 ADEの認定を受けたのは2015年。同校を退職後、2017年4月より聖徳学園中学・高等学校(東京都武蔵野市)の学校改革本部長・エグゼクティブICTディレクターに就任。2017年5月にスタートした「Apple Teacher」プログラムにもいち早く挑戦。Apple Teacherとなり、校内での普及にも取り組む。

 

 

板書は生徒の休憩時間?

昨今、教育の現場で注目されているSTEAM教育。科学、技術、工学、芸術、数学の頭文字をつなげた用語で、これまでの学校教育ではカバーできなかった、21世紀を生き抜くためのスキルを磨く学際的な教育を指す。2020年に小学校で必修化されるプログラミング教育もその一環だが、教育者不足や多忙を極める教員の職場環境など課題も多い。

そんな中、精力的にSTEAM教育に取り組んでいるのが、聖徳学園中学・高等学校(以下、聖徳学園中高)で教鞭をとる品田健氏だ。同校の学校改革本部長・エグゼクティブICTディレクターとして、iPadやMacを活用した教育を行っている。実際に品田氏による情報の授業を取材することができた。

授業が行われるのは、生徒の自主学習にも使われる多目的スペース「ラーニングコモンズ」だ。完成後間もない建物の一階にあり、壁面はガラス張りで開放的な雰囲気。外から授業の様子が見えるように配慮されたもので、同校のオープンな校風が垣間見える。

授業に集まったのは高校1年生の男女30名ほど。開始のチャイムがなると、生徒たちは真っ先にキャビネットに駆け寄り、中からMacBookプロを取り出していく。高等学校では、共用デバイスとして80台のiPadと、40台のMacBookプロを導入しており、授業時には1人1台行き渡るようになっている。

今回の授業は、キーノート(Keynote)でのプレゼン作成。生徒たちはMacを使って、「誰かを幸せにする」をキーワードにしたスライドを作成していた。作業を見守り、ときにアドバイスや使い方のヒントを与えるのは、品田氏を含め2名の教員と支援員。教員が教壇に立つ一般的な授業とは異なり、生徒たちが主体的に学ぶ光景が印象的だ。

品田氏がiPadやMacの持つ教育ツールとしての可能性に気づいたのは、初代iPadが発売されたときだという。実験的に授業に導入したところ、たちどころにその教育効果を実感した。

「たとえば板書です。生徒がノートをとるのは大事ですが、教員が板書に時間を使うのは意味がありません。単なる生徒の休憩時間です(笑)。それをiPadとプロジェクタでサッと出せるだけでも授業が効率的になります」

iPadやMac導入の効果は効率化だけではない。受け身にならざるを得ない一斉授業から、生徒が主体的に参加する授業への転換にもつながるのだという。

「最近行っているのが、正解のない問いについて対話させるという授業です。デバイスを使うと、生徒が進んで情報を取りに行って、積極的に議論し、問いを深めるようになるんです」

アップルのプログラムを活用

こうした教育方針で授業を行うきっかけになったのはADEに選ばれたことだと語る品田氏。2015年に認定を受け、他国の教育者も参加するADEインスティテュートに参加した際に、世界と日本の差を知りショックを受けたという。

「シンガポールのインスティテュートに参加したとき、うちは生徒に1人1台iPadを持たせて活用していますと言ったら、他国の先生方はそんなの当たり前といった反応だったんです。日本のICT教育の遅れを実感しました」

少しでも世界に追いつきたい。そう考えた品田先生は、帰国後、より精力的に取り組みを進めた。同時に、教育者としての意識が広がり始めたことも実感する。

「自分の活動ばかりではなく、教育や学校、世界を変えていきたいと思うようになりました。そんなふうに考え始めたのはADEになってからです」

また、品田氏はアップルが提供する教育者向けプログラム「アップルティーチャー(Apple Teacher)」の認定も受けている。これは、iPadやMacといったアップルのテクノロジーを教育に活用するためのノウハウが学べる教育者向けプログラムで、専用サイトでのクイズに合格すれば取得できるというもの。設問レベルも含め、決してそのハードルは高くはない。「ツールの基本的な使い方はもちろん、具体的な活用シーンを想定した課題もあり、実践的で役立つものが多い」と内容を評価する品田氏は、ほかの教員にもアップルティーチャーを取得するよう呼びかけ、自らそのサポートを行っている。その結果、一学期で50%の教員の取得を目指すとした目標を見事に達成。現在、2学期中に80%の取得率を目指してさらなる活動を続ける。

 

 

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開放的な雰囲気で行われる情報の授業では、品田氏自身が教鞭をとる。今回取材した授業は生徒が「誰かを幸せにする」をテーマにプレゼン資料を作るという内容で、2名の教員・支援員はあくまでもアドバイスに徹していた。高等学校では共有マシンとして40台のMacBook Proが用意されており、この授業でも活用されていた。

 

 

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全員の教員が参加した「Apple Teacher」研修会の様子。同プログラム公開後すぐに挑戦し、その効用を実感した品田氏は、校内での研修会を主宰。ほかの教員が同プログラムを修了させ、Apple製品を幅広く授業に活用させる活動を続ける。

 

 

思考を深めるための場所

同校に務めて約半年、まだまだやりたいことや課題は山積みだと語る品田氏。

「短中期的には『STEAM教育といえば聖徳学園』と言われるようにしていきたいですね。ただ、ICTの可能性に気づいていない教員がいるのも事実です」

たとえば、小中高の授業内容を1万本以上の動画で視聴できる学習アプリ「スタディサプリ」。講師による解説を何度でも見直すことができ、さらに生徒が自分に合った授業を選べる。また、前任校で試用した、人工知能が適切な問題を出題し生徒の数学理解を助ける「キュビナ(Qubena)」。こうしたツールを試験導入したところ可能性を実感しているが、多くの教員にまだそうした教育環境の変化が伝わっていないのが現状だという。iPadやMacの導入、アップルティーチャーなどのプログラムをとおして、まずは聖徳学園中高をSTEAM教育の模範校にすることが品田氏の当面の目標だ。

「テクノロジーの発展で、学校という場は間違いなく変わる」と語る品田氏。

「皆が同じ場所で、同じように知識を得る意味はなくなります。ICTを活用すればはるかに効率よく行えます。学校は知識を得るためだけではなく、対話をとおして思考を深めるような場になっていくべきです」

 

 

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聖徳学園中学校ではBYODによるiPad1人1台体制を確立。写真の国語の授業では、iPadを使って俳句の鑑賞を互いに紹介している。

 

 

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高校3年生のSwift Playgrounds使ったプログラミング授業の様子。高等学校では、現在iPadの1人1台体制をとっていないが(来年度入学生から実施予定)、一部授業では、こうして共用のiPadやMacBook Proを活用する。Apple製品を授業に取り入れることで、生徒たちの能動的な学びが深まっていると実感するという。

 

品田健氏の取り組みをもっと知りたい方へ

(1)『iPadを使ってみたい教員へのFirst Step』

iTunes U >教育指導

品田氏がまとめた、効果的なiPad導入のための「入門書」であり「実践集」。導入によってどのように授業や生徒が変わったのかがわかり、閲覧する教員にとって参考にしやすいものになっている。

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(2)『桜丘iPadの導入と活用』

iTunes U >教育指導

桜丘中学・高等学校のiPad導入について、かつて品田氏が行った発表のスライドを元に作成されたiTunes Uコース。

 

(3)iTeachers TV

【URL】https://www.youtube.com/channel/UCJO6AH4V-nZI_MGNkc1JNLQ

品田氏が参加する教育者チーム "iTeachers”が提供する、教育ICT実践プレゼンテーションチャンネル。

 

 

品田健氏のココがすごい!

□高校生のマシンはMacBook Pro。ICTを活用して課題解決型の授業を実践する。
□「Apple Teacher」プログラムの研修会を開き、教員全員のICTリテラシー向上に取り組む。
□学習効率を高めるツールを積極的に試験導入。効率化の先に新しい学校像を描く。

 

 

Apple Distinguished Educator(ADE)
Appleが認定する教育分野のイノベーター。世界45カ国で2000人以上のADEが、 Appleのテクノロジーを活用しながら教育現場の最前線で活躍している。



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