「Apple Watch可」はフィットネスクラブ改革のほんの始まり|MacFan

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「Apple Watch可」はフィットネスクラブ改革のほんの始まり

文●牧野武文

Apple的目線で読み解く。ビジネスの現場におけるアップル製品の導入事例をレポート。

首都圏と近畿圏を中心にフィットネスクラブ展開する東急スポーツオアシスは、Apple Watchのプール内での利用を可能にした。また、意欲的なアプリも積極的に展開しながら、フィットネスクラブの在り方を「施設から体験」へ変えようとしている。

 

 

やっとプールで使える

時間を確かめるための腕時計としてアップルウォッチを見てしまうと、その良さはいまひとつ実感できないかもしれない。しかし、特定の目的を持って使うと、途端にそれはかつてない便利なツールとなる。特に、さまざまなアクティビティトラッカーを内蔵したアップルウォッチは、スポーツやフィットネスにおける最強のパートナーだ。

「アップルウォッチシリーズ2は50メートルの防水性能を備え、スイミングワークワウトを計測してくれます。これが実に優れていて、プールの長さや距離などの目標値を決めて泳いでみると、泳法によって消費カロリーやターン数などを記録することができます」(東急スポーツオアシス・ホームフィットネス事業本部・竹尾賢二氏)。

ところが、現在の多くのプールではアップルウォッチだけでなく、金属部分のあるリストバンドをつけることを禁止していることが多い。水泳中に他人に当たると怪我を招く危険性があるからだ。

そんな中、全国に34店舗を展開するフィットネスクラブ・東急スポーツオアシスは全店のプールでアップルウォッチを含むウェアラブルデバイスの利用を可能とするルール改定を2017年8月に行った。安全面を考慮し、専用のシリコンバンドを装着することで利用を認めたのだ。

「アップルウォッチを使いたいというお客様の声を真摯に受け止めた結果です。フィットネスクラブにおいてもICTの進化は避けられないテーマですから、少しでもお客様の利便性を高められればと考えました」

東急スポーツオアシスは、国内でもっともICTの利活用に積極的なフィットネスクラブである。たとえば、専用のNFCリストバンド。利用者はこれを用いることで、フィットネスクラブ内でのさまざまなアクティビティを記録できる。ランニングマシンを使えば走った距離が、マシンを使えば消費カロリーが会員専用アプリ「オアシスリンク(OASIS LINK)」に記録され、アプリ上で目標に達したかどうかを一目で確かめることができる。また、オアシスリンクでは体重や体脂肪率などの自分の身体の情報を記録できたり、オリジナルのエクササイズメニューを作成したり、スマホを持ち歩くことで日常の歩数と歩行カロリーを計測したりもできる。

「これまで水泳だけはお客様に手入力してもらうしかなかったのですが、これからはアップルウォッチをつけて泳いでいただければ、その計測データも自動でオアシスリンクに取り込まれます」

このように東急スポーツオアシスがICTを積極的に取り入れるのには理由がある。現在、フィットネスクラブに通う人は全人口の約3%、400万人といわれている。客層は、自分の健康が気になる30代、40代の男女が中心。だが、この世代は働き盛りの世代でもあり、仕事が忙しく時間がない。そのためジムに通いたいという気持ちはあっても、実際に通うことをためらってしまう人も多い。

また、せっかく入会をしても継続できずにやめてしまう人も多い。時間と場所などの問題で、続けることが難しくなってしまうのだ。フィットネスクラブ全体の産業規模は約4000億円といわれており、この数字はこの10年、20年ほとんど変わっていない。こうした背景の中、東急スポーツオアシスではビジネスの拡大を図るため、ICTの利活用を含めたさまざまなサービスを積極的に展開している。

 

 

東急スポーツオアシスでは、プールの中でもApple Watchの利用が可能となった。専用のシリコンカバー(写真右)をApple Watchの上から巻きつけて利用する。

 

 

東急スポーツオアシス・ホームフィットネス事業本部・コンテンツ事業・マネージャー、竹尾賢二氏。アプリ開発やApple Watch導入など、同社におけるICT活用をこの1年で急速に推し進めた。

 

 

いつでもどこでもエクササイズ

東急スポーツオアシスでは、本格エクササイズからストレッチまでプロが丁寧に指導してくれる400種類以上の動画コンテンツを収録した「WEBGYM」というアプリもリリースしている。これは、フィットネスクラブの最大の課題である「ジムに行かなければならない」「時間が取れない」という問題を解消し、「ジムに来なくても」「時間が少ししかなくても」エクササイズができるようにしたアプリだ。パソコンやスマホがあれば、誰でも無料で利用開始でき、自宅や職場など好きなときに好きな場所でエクササイズを行える。

そして、ここでもアップルウォッチが活躍する。WEBGYMアプリでは、アップルウォッチからほとんどの操作を行えるのだ。エクササイズをしようと思ったらiPhoneを見えるところに立てかけ、アップルウォッチからメニューを選びスタート。そして、iPhoneに表示される動画に従って、エクササイズを進めていく。こうして計測されたデータはWEBGYMアプリで確認できるのはもちろん、iOSの「ヘルスケア」アプリの中にも記録されるので、東急スポーツオアシスの会員であればオアシスリンクとも連動する。実に利便性の高いサービスである。

利用者との目標の共有が鍵

こうした“いつでもどこでもエクササイズ”が可能になると、フィットネスクラブの存在意義も変わっていくに違いない。従来は、エクササイズができる場所、施設を提供することがフィットネスクラブの主な使命だった。しかし、今後はそれだけでは足りない。プロフェッショナルのトレーナーが指導をすること、とりわけ利用者と目標を共有し、一緒に目標を達成していくということが大切になってきている。

「多くのお客様は、最初に入会するときに、体重を10キロ落としたいなどの目標を持って来られます。でも、これが真の目標なのかはわからないことが多く、話をよく聞いて見たら実はキリマンジャロに登頂したいという夢をお持ちになっているということがわかってきたりします。そうしたお客様一人一人の目的をいかに理解し、そのためのパーソナライズしたトレーニングを提供できるかが重要になってきます」

トレーナーと利用者の信頼関係を築き、カウンセリングを丁寧に行い、本当の目標を深掘りをしていく。真の目標が共有できれば、利用者に強いモチベーションが生まれエクササイズを継続できるようになり、再びフィットネスクラブに加入する人も増えるかもしれない。

現在のフィットネスクラブ人口は、全人口のわずか3%にすぎないが、フィトネスクラブに通った経験がある人の割合はかなり多いと思われる。つまり、新規の流入が多くても、離脱率も高い構造になっていると想像できる。逆に言えば、“継続できる”強い仕組みが導入できれば、そのフィットネスクラブは成長をしていくことができるということだ。そして、それよりももっとも重要なのは、深層に隠されていた「夢を実現する」という掛け替えのない人生体験をサポートできる可能性が生まれているということだ。

フィットネスクラブは、場所や施設を提供するだけのビジネスから、体験を提供するビジネスに変化をしていく。東急スポーツオアシスでは、その変化を起こすツールとして、まずアップルウォッチをいち早く手に取った。

 

 

東急スポーツオアシスでは、Apple Watch Series 2と会員プランがセットになった「Oasis Device Member」を募集している。ネット限定200名。Apple Watchでエクササイズを始めたい方は今すぐチェック!【URL】http://www.sportsoasis.co.jp/devicemember/

 

 

WEBGYM
いつでも、どこでも手軽にジムのレッスン・トレーニングができます!

【開発】tokyusportsoasis
【価格】無料
【場所】App Store>ヘルスケア/フィットネス

 

 

会員専用の健康サポートアプリ「OASIS LINK」。マシンを使ったエクササイズでは、消費カロリーなどがマシンからOASIS LINKに転送される。Apple Watchによって、プールでのエクササイズデータもOASIS LINKで一元管理できるようになった。

 

 

WEBGYMアプリ。東急スポーツオアシスのインストラクターが、実際にジムで行われているエクササイズやストレッチのプログラムを丁寧に指導してくれる。フィットネスクラブに通うことなく、手軽にエクササイズを始められる。ユーザ同士の交流機能もある。

 

 

Apple WatchからWEBGYMの動画コンテンツを操作して、エクササイズを開始できる。

 

東急スポーツオアシスのココがすごい!

□プールでのApple Watchの利用を国内でいち早く可能に。
□ICTを積極的に導入し、利用者の利便性を高める。
□フィットネスクラブの在り方を再定義。業界の革新に挑戦する。