食のトレンドが生まれる町のありえないこだわり|MacFan

アラカルト フツウを変える、フツウをつくる

食のトレンドが生まれる町のありえないこだわり

文●三橋ゆか里

米国LA在住のITライター・三橋ゆか里氏の最新テックトレンドウォッチ!

日本に住んでいた頃、海外から遊びにきた友人が「クール!」と感動するものの1つに立体駐車場がありました。最初はその理由が謎だったのですが、カリフォルニアに来てみて、北米に立体駐車場がない理由がわかりました。土地が有り余っているため、立体にする必要がないのです。なんせ、日本列島はカリフォルニア州にすっぽり収まってしまう大きさ。立体駐車場は、日本の“土地がない”という課題に対するソリューションなのです。

街のつくりからサービス業の種類にいたるまで、ありとあらゆるものは、その土地土地のニーズに応じてつくられるもの。たとえば、同じアメリカでも都心部は事情が違っていて、狭いニューヨーク市内のアパートには洗濯機や乾燥機がありません。そのため、洗濯をまるまるクリーニングに出す習慣があり、「クリーンリー(Cleanly)」や「フライクリーナーズ(FlyCleaners)」といったオンデマンドクリーニングサービスがいくつも存在します。

その土地にある課題を解決するためのソリューションが生まれるのは、リアルな場面だけでなくアプリやWEBサービスも同じ。最近遭遇したそんなアプリの1つが、レストラン検索アプリ「テイストフル(Tasteful)」です。日本の「食べログ」のようなものですが、レストランを包括的に網羅する北米の代表的なアプリといえば「イェルプ(Yelp)」。一方、テイストフルの特徴は、同じレストラン検索アプリでも“ヘルシーな食事”に特化していることです。

カリフォルニア州は、北米全体の果物や野菜などの約半分に当たる量を供給しているのだとか。特にロサンゼルスは、ハリウッドの影響で見た目に気を使うヘルスコンシャスの人がとても多く、スーパーフードを含む健康的な食のトレンドが次々に生まれる場所です。また、一言でヘルシーといっても、ベジタリアン、ビーガン、パレオ、グルテンフリー、低炭水化物など、人の食習慣はさまざま。ロスは、ほかの都市に比べてベジタリアンにフレンドリーなお店が多いものの、それでも自分の食習慣に合ったレストランを見つけるのは容易ではありません。

そんな食のニーズに合わせて、現在地付近でそれに合った食事が食べられるレストランを教えてくれるのがテイストフルで、北米の8000都市にまたいで、25.2万件以上のレストランを網羅しています。頼もしいのは、レストランのみならず、メニューレベルでそれがわかること。なんと350万以上のメニューが検索できるそうです。たとえば、本来なら“ヘルシーな食事”の圏外にありそうなステーキ屋さんに、ベジタリアンでも食べられるメニューがあるかどうかも教えてくれます。

また、ベジタリアンやビーガンといった大きなカテゴリだけでなく、最大19種類の食べ物を対象または対象外にする機能もあります。お肉、甲殻類、卵、穀物、ピーナッツ、グルテン、揚げ物、大豆など特定の食材を選ぶことで、たとえばピーナッツアレルギーの人はピーナッツが入ったメニューを除外した選択肢を見つけられます。登録した食事の好みをもとに、各レストランで該当するメニューの数が一目でわかるため、外食先を決めるのがぐんとスムースになります。

先日実際にアプリを使ってみましたが、ハンバーガー屋さんに「インポッシブルバーガー(Impossible burger)」というベジタリアンバーガーがあることを発見。“まるで肉のような”というコピーには及ばないものの、アプリがなければ素通りしていたお店を発見することができました。グルテンアレルギーの友だちや肉を食べないインド人の友だちとの食事など、特定のダイエットにならう人と食事すると、どうしても同じお店にばかりになってしまいがち。テイストフルのようなアプリがあれば、選択肢がぐんと広がりそうです。

 

 

Yukari Mitsuhashi

米国LA在住のライター。ITベンチャーを経て2010年に独立し、国内外のIT企業を取材する。ニューズウィーク日本版やIT系メディアなどで執筆。映画「ソーシャル・ネットワーク」の字幕監修にも携わる。【URL】http://www.techdoll.jp




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