2017.07.17
フリーライター・牧野武文氏が消費者目線でApple周りの事象を独自の視点で考察。
皆さんはiOSデバイスで多くのアプリを使いこなしていると思うが、最近は企業で使われる業務用アプリの「WEBアプリ」化が進んでいる。WEBアプリとは、アプリのように使えるWEBサイトのこと。なぜ企業は業務ツールとしてWEBアプリを使うようになり始めたのだろうか。これが今回の疑問だ。
アプリ化していくWEBサイト
2007年に初代iPhoneが登場して、あっという間に定着した新語が「アプリ」だ。英語圏でも「App」という新語が急速に普及した。言うまでもなく「アプリケーションソフトウェア」の略語だが、アプリはまったく別物と考えられ、略語ではなく独立した言葉として定着した。
このアプリは主にモバイル端末向けとして捉えられることが多く、その内部の仕組みによって大きく3種類に分類できる。ネイティブアプリ、WEBアプリ、ハイブリッドアプリの3つだ。ネイティブとは私たちが普段アップストアからインストールして使っているアプリのことだ。オブジェクティブC(Objective-C)言語などで開発され、主要な処理が端末内で行われるため、動作が高速でオフライン利用もできるメリットがある。
WEBアプリは定義が曖昧な部分もあるが、主要な機能がサファリなどWEBブラウザ上で実行されるサービスのことだ。HTMLとCSS、ジャバスクリプト(JavaScript)で開発されるなど、WEBサイトとの共通性が多い。
そして最後のハイブリッドは、ネイティブアプリの形で配布されているが、中身はWEBページを表示している中間型だ。
WEBアプリのもっともわかりやすい例は「グーグル・マップ」だろう。サファリでアクセスすると、ネイティブアプリとほぼ同じ感覚で地図を操作できる。
「動作が鈍い」も用途次第で問題なし
だが、WEBアプリよりもネイティブアプリを好む人のほうが多いだろう。なぜなら、WEBアプリにはいくつかの欠点があるとされてきたからだ。1つは、WEBベースのためグラフィック系の操作が重くなりがちなこと。たとえば、グーグル・マップでは地図の拡大/縮小や移動などがネイティブアプリに比べるとぎこちない。
もう1つは、アカウントやパスワードなどの情報を記憶してくれない設計になっているものが多いこと。WEBでもクッキー(Cookie)などを利用すればブラウザに認証情報を保存できるが、マルウェアによりクッキーにアクセスされる危険性もあり、セキュリティ上の問題から記憶しない設計にしているところが多い。
そしてもう1つ言われることが、iPhoneの機能と連係しづらい点だ。だが、ここはアップルがiOSのAPIの公開を徐々に進め、WEBでも標準のHTML5でかなり改善された。たとえば、WEB上に電話発信ボタンを設置して、タップでそのまま電話をかけることは簡単に行える。
つまり「動作が遅い」ことが一番の問題だが、これも検索やニュースのように簡単な情報の表示や入力が主体のサービスであれば、大きな欠点にはならない。
また、WEBアプリであっても[ホーム画面に追加]を選ぶと、ホーム画面にアイコンが作成され、ネイティブアプリと同じ感覚で使える。グーグル・マップなどでは、出張や旅行のときに出先の地域を表示させた状態でホーム画面にアイコンを追加すれば、その地域の地図をワンタップだけで見られる。不要になったら、アイコンを削除してしまうだけでいい。