僕は初代Macの何に感動したのか?|MacFan

アラカルト Macintoshビギンズ

~ガラケーに対するiPhoneに似たMacの誕生~

僕は初代Macの何に感動したのか?

文●大谷和利

Blast from the past ─ あの頃の懐かしい思い出

実世界の当たり前をコンピュータ内で実現

初代Macintoshの誕生前夜にあたる'70年代後半~'80年代初頭のコンピュータの話をするのは、中世の生活について語るのと同じくらい隔世の感がある。

たとえば、コンピュータ雑誌にはたいていBASIC言語やアセンブリ言語(コンピュータが実行する機械語を人間にも理解しやすい英単語略記で置き換えたもの)のプログラムが掲載されており、それを、ホビイストが中心だった当時の読者たちは嬉々として自分のマシンに打ち込んだ(個人用ハードディスクなど存在しなかったので、保存媒体はカセットテープやフロッピーディスク)。かくいう僕も、当時はBASIC言語で記述したお絵描きツールなどの自作記事を書いたりしていた。

その際に、プログラム内で正円を描くコマンドを使っても、画面やプリンタでは楕円として表示・出力されるため、それぞれ補正値を入れるのが常識だった。ディスプレイの1ピクセルの縦横比が1:1ではないうえ、プリンタのDPI(1インチあたりのドット密度)も縦方向と横方向で異なっていたのだ。

初代Macが登場したときには、もちろん縦型のトールボーイデザインや、マウスやアイコンを利用するGUIにも新たな時代の到来を感じた。そして、実際に使ってみて、プログラムでもツールによる描画でも正円が正円として出力されることに逆に驚き、アップルがいかに真剣にコンピュータの在り方を考えているかを理解した。他のコンピュータメーカーでは問題とも思われずに放置状態だったことが、Macでは当然のように解決されていたからだ。

産業革命が世界の近代化の分水嶺だったように、初代Macはパーソナルコンピュータが中世から近代へと移行する変換点となったのである。




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