2017.05.05
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2016年9月、ワルシャワで開催された業界カンファレンスにおいて紹介された「バリアブルフォント(Variable Font)」は、アップルを含む4社が共同で開発を進めてきた次世代のフォントテクノロジーだ。この仕組みの基本的な概念や、そのことで享受できるメリット、先行して体験する方法を紹介する。
1つなのに複数
2016年9月、ポーランドのワルシャワで開催されたATpyI(Association Typographique Internationale)カンファレンスで新しいフォントテクノロジーが紹介された。それがアドビとマクロソフト、グーグル、そしてアップルが共同で開発を進めてきた「バリアブルフォント」だ。
このフォントの特徴をアドビのタイプデザイナー、ジョン・ハドソン氏は「1つのファイルでありながら複数のフォントのように動作する」と表現している。これまでのフォントは、ウェイト(太さ)や字幅、斜体などを変更するのに、複数のフォントファイルを用意するのが一般的だった。バリアブルフォントはこれらの属性を1つのデータで無制限に変更できるようにしたのだ。
この改良によって、フォントを使用する製作者側は複数のフォントを指定する手間がなくなる。これは、デザイン作業時のフォント間違いといった人的ミスを減らせるだけでなく、たとえば文字の太さを少しずつ変えてグラーデーションにするような表現も、文字サイズを変えるような感覚で実現できる。こういったデザインの本質とは無関係のシステム的な制約が取り払われることで、デザインの幅は一層広がるだろう。
バリアブルフォントのメリットは、デザイン面だけにとどまらない。WEBの世界ではここ数年「レスポンシブ」という言葉が重要視され、同じコンテンツでもユーザが見るデバイス環境に合わせて最適な画面デザインを提供する手法がトレンドになっている。実はこの中で一番問題視されていたのがフォントだ。すべての環境で「文字の読みやすさ」を提供するにはリソース管理の点からもコストが高く、立ち遅れていた。
これもバリアブルフォントであれば、1つのフォントファイルで調整できるようになる。まさに「ユニバーサルデザインのラストピース」として大きな期待を寄せられている。しかも、活字と異なり動的にデザインを変更できるWEBの世界では、より状況に適し、なおかつ美しい表示を保ったままのフォントデザインを行えるだろう。コンピュータを利用するすべての人にとって有益なこの技術に、高い関心が集まるのは必然ともいえる。
バリアブルフォントでは、1つのフォントデータで、このようにウェイトや字幅を変更できる。設計のベースとなったのは、1990年代にアップルが制作した「TrueType GX」と、アドビの「マルチプルマスターフォント」という2つの規格。当時は最先端すぎて実現不能だった技術だが、ようやく時代が追いついた。【URL】https://www.microsoft.com/typography/otspec180/otvaroverview.htm