音に妥協しない無線ヘッドフォン「B&W P7 Wireless」|MacFan

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音に妥協しない無線ヘッドフォン「B&W P7 Wireless」

文●栗原亮

アップル製品を手厚くサポートするメーカーの新製品を徹底取材。今回はBowers & Wilkinsの新ヘッドフォンに迫ります。

二極化するワイヤレス

iPhone 7シリーズからアナログオーディオのミニジャック端子が廃止されるなど、ポータブルオーディオの世界にワイヤレス化の波が押し寄せている。その代表格はブルートゥース接続のイヤフォンやヘッドフォンであり、ケーブルなしで音楽を気軽に楽しめる点、ワイヤレスでも高音質で楽しめる点から人々に支持され始め、今ではさまざまな製品が店頭にラインアップされている。

英国名門のオーディオブランド・B&W(Bowers & Wilkins)の国内輸入代理・販売業務を行うディーアンドエムホールディングスの小菅幸一さんに話を聞くと、ワイヤレス化への変化は必然であり、歓迎すべきだと答える。

「ブルートゥースに代表されるワイヤレスオーディオの世界は二極化しています。ハイファイ(Hi-Fi)と呼ばれる高品質なサウンドを求める層と、(音質にはそこまでこだわらないが)ワイヤレスの利便性や機能性を求める層です」

こうした市場の変化を的確に捉え、B&Wもいち早く製品のワイヤレス化に着手した。2015年7月には有線モデルの「P5シリーズ2(P5 Series 2)」を改良した同ブランド初のワイヤレスヘッドフォン「P5ワイヤレス(P5 Wireless)」を、2016年9月にはハイエンドのオーバーイヤーヘッドフォン「P7ワイヤレス(P7 Wireless)」を投入している。このP7ワイヤレスの外観は、すでに販売を終了した有線モデルの「P7」と大きく変わらないように見えるが、実はワイヤレス化に合わせてドライバユニットを新規設計したり、ワイヤレスコーデックを追加するなど意欲的なモデルとなっている。

「ワイヤードのモデルを単にワイヤレス化しただけでは、高品質サウンドを求める人には退化と受け止められ兼ねません。P7ワイヤレスの最大の特徴は有線端子も備えることでシリアスなリスニングをするときは有線で、通勤時などそこまでの音質を求めない環境では使い勝手のよいワイヤレスで楽しめる点にあります。特に日本市場では高品質でデザインがよく、技術トレンドを押さえた製品が好まれるので、アップルのお客さんともオーバーラップしています」。Hi-Fiとポータビリティの「いいとこ取り」を実現したのが、P7ワイヤレスなのだ。

 

 

B&W P7 Wireless/P5 Wireless

【発売】ディーアンドエムホールディングス
【価格】オープンプライス
【実売価格】5万6000円前後(P7 Wireless)、4万2000円前後(P5 Wireless)
【URL】dm-importaudio.jp/?
【PRODUCT SPEC】[P7 Wireless]インターフェイス:Bluetooth 4.1、3.5ミリステレオミニプラグ 周波数帯域:10Hz~20kHz インピーダンス:22Ω 感度:111dB/V@1kHz サイズ:190(W)×192(H)×70(D)ミリ 重量:323グラム

 

COMPANY

2002年5月にデノンと日本マランツの経営統合で設立されたディーアンドエムホールディングスは、欧米の有力オーディオブランドの輸入代理・販売を一手に引き受けるディストリビューター営業部を2011年に発足し、各種のプレミアムなAVソリューションを展開している。英国の名門オーディオブランドBowers & Wilkins(B&W)の輸入販売業務もその1つだ。

 

ワイヤレスだからこそ音質に妥協していません

国内営業本部 ディストリビューター営業部 部長
小菅幸一さん

 

 

ワイヤレスでも高音質の理由

厳密に言えばブルートゥースは有線接続のクオリティに及ばないと言われている。だが、サウンドコーデックに通常のSBCに加え、AptX(Standard Latency)やAACを採用することで、有線からワイヤレスに切り替えたときに音質の差で「がっかりさせない」自信があると小菅さんは語る。

「普及品のブルートゥース製品のようにモコモコした音にならないのはP7ワイヤレスを聴いていただければわかると思います。また、ブルートゥースはコーデックが共通化されチップも数社しか選択肢がないためどれも同じだと考える人もいますが、それは誤解です。自動車でも同じエンジンを積んだ車がすべて同じ性能にならないように、ワイヤレスオーディオも実装のテクニックやチューニングで出てくる音に違いが生じるのです」

B&Wは、もともとスタジオなどで用いられる大型スピーカの音響エンジニアによる音響設計をそのままヘッドフォンなどにも適用することで定評のあるメーカーだ。ヘッドフォンだからといって高音や低音を不自然に強調するような味付けはせず、楽曲のジャンルを選ばずニュートラルな音質を、有線だけでなくワイヤレスでも追求するのはB&Wならではのこだわりと言えるだろう。

特にワイヤレスでの音質向上に寄与しているのは新設計のドライバだ。使用するパーツの素材や構造まで、いちから見直されているという。

「多くのヘッドフォンで用いられるサウンドドライバはマイクロフォンの構造と共通で、プラスチックベースのマイラー素材を用いて一体成型しています。小型で安価というメリットはあるのですが、コーンとそれを支えるハウジングの境界が曖昧なため、音の発生源であるボイスコイルの振動によってコーンに歪みが生じて音に悪影響を与えます。P7ワイヤレスではコーンを強度が高く、固有の振動数が鳴りにくいハイブリッド素材にしています。また、境界部分がゴム製のロールエッジになってサスペンションとなるため、コーンがそのままの形状で振動します。つまり、Hi-Fiスピーカと同じ構造をしているのです」

コスト面では不利なものの、音質には一切妥協しないP7ワイヤレスのこだわりはそれだけではない。イヤーパッド部分には硬度が異なる2層のフォームを入れることで、耳との密着度と柔軟性を保ちつつ吸音や反射など音響的な調整もなされている。また、耳に直接触れる部分は長時間のリスニングでも快適なシープ(羊)レザーで覆われている。

音と素材にこだわり、普遍的でクラシカルな外観とワイヤレスの利便性を両立させたP7ワイヤレスはこだわりのあるアップルユーザの琴線に触れることは間違いない。

 

レビューを読んだら、イベントや店舗で聴いて確かめてください

国内営業本部 ディストリビューター営業部 課長
狩野徹也さん

 

 

シンプルな中にクラシカルな味わい

肌触りの質感が高いブラックのシープレザーとメタル素材を組み合わせたB&Wらしいデザインを踏襲している。シンプルさの中にクラシカルな曲線を用いたデザインは、多くのオーディオ愛好家の心を掴むことだろう。

 

シーンに応じて有線と無線を使い分け

マグネット式のイヤーパッドを外すと2.5ミリのケーブルを着脱できる。外出時は手軽なワイヤレスで、自宅ではパワフルなアンプに有線接続して音楽をじっくり味わうといった使い分けが可能となる。

 

新設計のドライバでスピーカ

P7ワイヤレスではコーンの形状を素材レベルから見直し、一般的なヘッドフォンで多く用いられるマイラー素材ではなく、ナイロンとペーパーの複合素材を採用している。直径40ミリのドライバユニット周縁にあるサスペンション部と分離することで正確に振動し、歪みを極力抑えた大型スピーカ同様の音響特性を実現。

 

ワイヤードの密閉型ヘッドフォンも人気

有線タイプのポータブルヘッドフォンの最上位モデル「P9 シグネチャー(Signature)」も2016年10月より販売を開始。B&W 50周年記念モデルということもあり注目を集める。高級なブランドバッグで用いられるイタリア製サフィアーノ・ レザーとアルミの外装は格別の風格だ。