2016.11.11
アップストアのシンプルなストア体験は最高だが、フル機能の試用とアップグレード割引がないため、ユーザは高額なソフトの購入に踏み切りにくい。その問題を解決するために試行錯誤を重ねてきたオムニ・グループが、10月に発売した「オムニグラフ7(OmniGraffle 7)」でアプリ内購入を活用した新しい販売方法を採用している。
2つのストアの長所を融合
アップルのアップストアには、アプリを無料体験する仕組みが組み込まれていない。また、アプリがメジャーバージョンアップになったときに、既存ユーザが割引き価格で新バージョンにアップグレードできる仕組みもない。アップルはシンプルな体験を重視しており、同ストアでは簡単にアプリを入手でき、スムースに最新版へアップデートできる。一方で、無料体験など機能を増やすことには慎重である。
PC向けソフトでは当たり前の無料体験やアップグレード割引を求めるユーザは多く、アップストアの規約に従いながら、いかにユーザの要望に応えるかが、同ストアを利用するアプリ開発者の課題の1つになっている。そうした中、オムニ・グループがMac用のアップストアにおいて、これまで有料販売していた図形・描画ツール「オムニグラフ(OmniGraffle)」の無料提供を開始。アプリ内購入を使って無料体験とアップグレード割引も実現、同社はアップルストアで有料アプリを購入する「最善の体験」とアピールしている。
オムニは、プロフェッショナルのニーズも満たすプロダクティビティツールをPC時代から提供し続けている。3~4年のサイクルでメジャーアップグレードを繰り返しながらユーザを増やしていく、PC時代のソフトウェア販売モデルで成功しており、そのため無料体験と有料アップグレードへのこだわりが強い。一方でポストPCへの移行にも積極的で、アップストアでも製品を提供しながら、平行して以前と同様にオムニストアを通じた販売を継続していた。この2つの販売モデルを融合するための試行錯誤を重ねて、たどり着いたのがアップストアのアプリ内購入でのアップグレード販売だ。