2016.11.22
知っ得 ! 先取り技術レポ
読む前に覚えておきたい用語
アーキテクチャ
システムの論理的構造を「アーキテクチャ」と呼び、この記事では「CPUの命令セットの設計仕様」を指す。命令セット、メモリアドレスモード、レジスタ構成、アドレスやデータの構造などを含む。インテルプロセッサのアーキテクチャは「IA-32」と「インテル64」。アップルのAプロセッサは「ARMv7-A(A6以前)」と「ARMv8-A(A7以降)」を採用する。
IPコア
汎用的な機能を備えた回路ブロックの総称。たとえばCPUコアやGPUコア、メモリコントローラ、システムバスなどがある。SoCの設計では、IPコアと独自回路を組み合わせてシステムチップを完成させる。ARM社ではコアの種類に応じてIPコアの論理設計(RTL)と物理設計(POP)のいずれか、あるいは両方の提供を行っている。
ファブレス
自前の製造工場を持たない企業のこと。半導体製造は設備の維持と更新に莫大な費用がかかるため、開発(設計)と製造の分業化が早くから進んだジャンルである。インテル社は数少ない垂直統合型企業の1つだが、今年8月にARMコアベースのSoC(システム・オン・チップ)向けに、最新鋭の10ナノメートルプロセス製造ラインを提供すると発表し、業界を驚かせた。
インテルとARM両者の戦略の違い
MacのCPUに採用されている「コア(Core)」シリーズ、および「ジオン(Xeon)」シリーズのプロセッサを提供するインテル社は、古くからCPUの開発・製造を行うメーカーであり、長年MacのライバルとなっていたPC/AT互換機メーカーにCPUを提供してきた。インテル社は今となっては珍しい垂直統合型の半導体メーカーで、自社でCPUのアーキテクチャ設計、IPコア設計から、マスク製造、チップ生産までを一貫して行っており、CPUチップを自社で販売しつつ、ほかのメーカーにも提供している。
一方で、アップルの「A」シリーズプロセッサは複雑なプロセスを経て開発・製造される。アップルはARM社からアーキテクチャ(ARMv8-A)のライセンス提供を受け、これをベースに自社開発したCPUコアなどのIPコアと、イマジネーションテクノロジーズ社の「PowerVR」GPUコアなどを統合し、外部の半導体製造企業(TSMCやサムスンなど)に製造委託してAシリーズSoCを生産している。