2016.10.05
iPhone 7の発表で沸いたアップルのスペシャルイベントには、新型Macの姿はなかった。今年はアップルがインテル製CPUを初めて採用してから10年目の節目だが、今年出たMacはMacBook(Early 2016)1機種のみ。例年のロードマップを考えると異例の事態だ。アップルとインテルに何が起きているのか?
新型Macが出ない!
インテルの次世代CPUに採用される第7世代コア「カビーレイク(Kaby Lake)」が、8月30日に正式に発表された。最初に市場に投入されるのは発熱の少ないMacBookエアやMacBook向けのCPUであり、MacBookプロに載るようなパワー重視のCPUは2017年1月以降に投入される見込みだ。
第7世代コアが発表される一方で、MacBookエアやMacBookプロの新モデルは2016年に入ってから1機種も出ていない。MacBookエアには第5世代コア「ブロードウェル(Broadwell)」、15インチのMacBookプロ・レティナに至ってはまだ第4世代コア「ハスウェル(Haswell)」が搭載されており、新しいCPUのアーキテクチャを貪欲に取り込む姿勢が感じられない。アップルは、なぜここまで新モデルの投入をしないのだろうか?
アップルの新機種が出ない理由を考えるに、ここ数年のインテルの戦略変更が挙げられる。「CPUの世代が新しくなっても、性能は代わり映えしないから」という結論に飛びつく前に、現在のインテルと、開発中のCPUを取り巻く状況を整理してみることにしよう。
まず最初におさえておきたいのは、インテルの開発サイクルだ。今までのインテルは、1年目でプロセスルールを微細化した新型コアを発表し、2年目でそのコアのアーキテクチャを改善するという開発サイクル、いわゆる「チクタク戦略」を取っていたが、半導体製造技術のハードルが上がったことで、この戦略を見直さざるをえなくなってきた。
戦略をシフトするきっかけは第4世代から第5世代コアへの移行の難しさだった。14ナノメートルを初めて採用すると謳った第5世代コアの開発は難航を極め、その結果として2014年には第4世代コアのマイナーチェンジ版「ハスウェル・リフレッシュ(Haswell Refresh)」が発売された。第5世代コアのブロードウェルは、超低電圧版のコアMが2014年に発売されたが、主力製品であるコアiの開発に難航し、発売は2015年。半年もしないうちに第6世代コア「スカイレーク(Skylake)」が発売。意地悪な見方をすれば、第5世代コアは株主に対する公約を守るために出した製品のようにも見えてしまう。
そこでインテルは今後のCPU開発サイクルを「微細化→改善」の2段階ではなく、「微細化→改善→最適化」の3段階に変更すると宣言した。つまり、第5世代に微細化を行い、第6世代ではそのアーキテクチャを改善、そして先日発表された第7世代は、第6世代では盛り込めなかった要素をプラスして“最適化”する製品となる。