アップルストアの日本展開を支えた日本語キャッチコピーの制作舞台裏●アップルに学ぶ「刺さる」キャッチコピーの作り方|MacFan

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アップルが信頼した2人のトランスクリエーション・ライター

アップルストアの日本展開を支えた日本語キャッチコピーの制作舞台裏●アップルに学ぶ「刺さる」キャッチコピーの作り方

文●栗原亮小平淳一写真●黒田彰apple.com

プロダクトのみならず、それに付随するキャッチコピーにも並々ならぬこだわりを見せるアップル。英語で書かれたキャッチコピーはどのようにローカライズ(日本語化)されて、私たちの目に届くのでしょうか。今まで語られることのなかったその舞台裏について、制作を担当したトランスクリエーション・ライターに話を聞きました。

 

“アップルのキャッチコピーは、フレンドリーでパーソナル、それでいて知的なコピーばかりです”

 

二人三脚で活動

店頭やアップル公式WEBサイトで私たちが目にするアップルのキャッチコピーに関して、その魅力やテクニックについて解説されることはこれまでもありましたが、その制作現場は“秘密のベール”に包まれており、公に語られることはほとんどありませんでした。

フライヤー池田きみこさん(以下、池田さん)は、夫であるイギリス出身のダグラス H・フライヤーさん(以下、ダグラスさん)とともに、2006年から約5年間日本のアップルストア直営店および公式WEBサイトのキャッチコピー制作を担当するコピーライターとして活動しました。

キャッチコピーの原文は米国のアップルとその代理店で考案されたものですが、それを日本語で展開する際には単なる「翻訳」ではなく、コピーライティングのノウハウを駆使した「ローカライズ」と呼ばれる作業が必要です。具体的な内容に触れる前に、池田さんがこの仕事をするようになった経緯について話を聞きました。

もともとは広告代理店に勤務し、日本市場向けに日本語のコピーライティングをしていた池田さん。英語はそこまで得意ではなかったそうですが、1995年より海外勤務を命じられ、香港に渡ることになりました。主な業務は香港市場で日本のクライアント企業の広告を現地向けに置き換える「アダプテーション(Adaptation)」と呼ばれる内容です。一般的にアダプテーションは「適用」という意味ですが、「脚色、改作」という意味もあり、広告業界では後者の意味合いで用いられています。