2016.09.22
ITの発展で急速に変わりつつある日本のビジネス。そこで生まれる新しい挑戦には、何かしらの問題がつきまとうもの。そんな企業の悩みを「みらいチャレンジ株式会社」の徳本昌大氏と中野秀俊氏が、さまざまな観点から解決していく。今回のテーマは「SNS」。
SNSの普及で情報の伝わり方が変わった!
ー今回のテーマはソーシャル・ネットワーキング・サービス(以下、SNS)です。企業のソーシャルメディア活用が盛んに謳われていますが、中でも一般的なのがツイッターやフェイスブック、インスタグラムといったSNSの運用ですよね。個人利用も含めかなり普及しているとはいえ、これから導入を考えている企業もまだまだ多いと思います。企業アカウントを運用するうえで知っておくべきことを教えてください。
徳本●SNSを運用することにはメリットとリスクがあって、その両方を知っておくことが必要だと思うんだよね。
中野●たとえばどんなメリットですか?
徳本●一言でいうと、マスメディアにできなかった情報発信ができるということ。かつてはテレビ、新聞、ラジオ、雑誌、交通広告を押さえておけば、ほとんどの人にリーチできていた。でも今はもう、従来のメディアは個人にリーチできなくなっているんだ。
中野●その理由がSNSですか?
徳本●そう、最近では「つながりの経済」と呼ばれていたりするんだけど、今は自分の周りの人のSNS投稿から情報を手に入れて、そこから検索して詳しく調べて購入するって流れが当たり前になっている。中野くんは普段、どうやってニュースや情報を見ている?
中野●そう言われると、フェイスブックで知人がシェアしたニュースやブログ記事を見ることが多いですね。テレビはほとんど見ませんし、新聞にはざっと目をとおしますが、それも紙ではなくスマートフォンの画面でです。
徳本●なぜフェイスブックを使うの?
中野●それは、信頼できる知人が紹介する情報だからですね。その人が面白いというなら見てみよう、と思うんです。
徳本●つまり、キュレーションされているわけだよね。これが今の情報の取得方法なんだ。従来のマス(大多数)に向けた広告では、今の中野くんには十分なリーチができない。SNSの普及で、情報の伝達手段が変わってきているともいえるよ。
中野●徳本さんはいつ頃から情報発信の変化を感じていたんですか?
徳本●2008年か2009年頃かな。iPhoneが発売されて、ちょうど同じ頃日本でツイッターが流行り出して、これは情報発信の仕方と受け取り方がまるっきり変わるなという予感があったね。
ーマスメディアではリーチできないところに情報が届けられるメリットがあることはよくわかりました。ただ、結局のところマス向け広告と同じような情報をSNSに載せているだけという企業も多いです。
徳本●それではSNSのメリットを活かせているとはいえないよね。マス向け広告はメーカー視点でもいいけど、SNSで発信する情報はユーザ視点であるべきなんだ。
中野●どう違うんですか?
徳本●たとえば飲料水の広告を打つとして、成分がこれくらいだとか、そういうスペック情報を載せるのがメーカー視点。そうじゃなくて、朝飲むとこういう人にこういう効果があるよと謳うのがユーザ視点。
中野●でも、テレビや雑誌でもユーザ視点のCMを打つことはできませんか?
徳本●ある程度はできるよ。だけど、テレビや雑誌で100パターンの視点に立った広告が作れるかといったら無理だよね。マスメディアは広い層に向けた情報だから、間口を広げて大きくリーチするしかない。一方でSNSはもっと細かく、人々の興味関心に即した情報を流せるんだ。たとえば30代と40代と60代の人が同じクルマに乗っているとして、そのクルマを選んだ理由は決して同じじゃない。趣味嗜好なのか、ライフスタイルに合っているからなのか、千差万別だよね。それぞれの層に合わせて「このクルマを自分の生活に取り入れたい」と思わせるには、生活者に応じて最適な情報をSNSで流すことが必要不可欠になっているんだ。一方でマスメディアには、そのクルマ自体の認知を幅広い層に届ける役割がある。マスメディアとSNSは明確に違う役割を持っているんだ。