心理的安全性を可視化しメンバーの成長を促進する「1on1」面談|MacFan

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心理的安全性を可視化しメンバーの成長を促進する「1on1」面談

文●栗原亮(Arkhē)

Apple的目線で読み解く。ビジネスの現場におけるアップル製品の導入事例をレポート。

組織のポテンシャルを高めるためには、「心理的安全性」に基づいた環境での上司と部下間の健全なコミュニケーションが不可欠だ。このための施策として注目されている「1on1」面談をデジタルベースで導入したニューピークスの宇治田智さんに、その目的とチームメンバーに生じた変化について話を聞いた。

 

 

対話でメンバーの成長を促す

上司に都合の悪い報告をしたくないと考える部下は多い。しかし、発生した問題への迅速な対処はプロジェクトの成果を高めるために不可欠と言える。

このような上司と部下のコミュニケーションのすれ違いが生じてしまう背景として、近年ビジネスシーンで注目されるようになった「心理的安全性」の欠如が一因として挙げられる。心理的安全性とは、チームや組織内で個人がリスクを冒しても人格を否定されたりペナルティを与えられることなく、意見や疑問を自由に表現できる環境を指す。

この概念は1999年にハーバード大学ビジネススクールのエイミー・エドモンドソン教授によって提唱され、心理的安全性が高い環境ではチーム内の創造性やイノベーションが促進され、全体のパフォーマンスを高める効果があると期待されている。

では、どのようにして心理的安全性を高めるのか。ひとつのアプローチとしては、上司と部下との「1on1(ワン・オン・ワン)」面談が挙げられる。これは業務の進捗状況だけでなく、キャリア開発や個人の目標などについての個別の対話を定期的に行う施策である。

従来の個人面談と異なり、年に一度の業績評価のような公式のレビューではなく、部下の成長を目指した柔軟で対話的なアプローチを高い頻度で取る点が大きな特徴だ。すでに国内ではLINEヤフーやパナソニックといった企業が導入し、従業員視点に基づいた新たなパフォーマンスマネジメントの手法として普及が進んでいる。

もちろん、1on1面談の必要性は大企業に限られたものではない。動画やイベントのプロデュース・マーケティング事業を手掛けるニューピークスのマネージャー・宇治田智さんは次のように話す。

「2018年の創業当初、従業員は4人のスタートアップでしたが、現在は社員が14人に増えました。事業拡大に伴い新たなメンバーが増えたことで、社内の行動規範を定め、カルチャーの浸透とチームとしての組織力を高める必要性を真剣に考えるようになりました」

また、デザインや映像制作のようなクリエイティブ業務では、メンバーの経験が増えるにつれて業務上のノウハウが属人化してしまったり、業務フローが統一されなくなるという課題も浮かび上がってきた。

「少人数だった頃には感じなかった部下とのすれ違いを少しずつ意識するようになり、マネージャーとして挫折感を覚えることもありました。これまで1on1をする機会はなかったのですが、役員とも相談してメンバー一人ひとりのやりがいや成長に目を向けるため1on1の実施を決めました」

 

従業員視点のマネジメントへ

1on1面談を円滑に実施するためには、いくつかのポイントがある。まず、前述したように週次や月次といった定期的なタイミングで行うこと、そして上司と部下の双方が面談に向けた準備を行い、話し合うトピックを事前に共有することなどが重要だ。さらに、主要なトピックは部下に決めてもらい、面談で話し合われた内容を基に次の具体的なアクションに向けた計画を立てることも施策を持続するためのポイントとなる。

「仕事の進捗や進め方、業務に関する悩みなど、メンバーに面談のトピックを自ら決めてもらいます。そして、期待する対応を教えてもらい、必要に応じて一緒に考えるという流れが基本です」

現在、宇治田さんが直接面談を行っているメンバーは7人だが、オフィスと現場を行き来し、リモートワークを行うクリエイティブ職では、メンバーのスケジュール調整やトピックの事前準備に多くの手間がかかる。そのため、1on1面談に特化したSaaSを比較検討し、2023年4月から「カケアイ(Kakeai)」の利用を開始した。

「ウェビナー支援の依頼をきっかけに縁ができたのですが、カケアイの創業の想いや、1on1に対する考え方に共感したことや、ほかの同様の機能を持つサービスと比較してUI/UXがシンプルで直感的な操作ができる点が選定の理由です」

宇治田さんのチームでは7人のメンバーを2つのグループに分け、奇数週と偶数週で交互に1回30分程度の面談を実施している。スケジュールの調整はグーグル・カレンダーから希望する日時の候補をカケアイに登録し、話したいトピックや期待する対応をいくつかのカテゴリから選択するだけと操作はシンプルだ。

この際、「話を聞いてもらうだけ」や「改善のためのアクションを提案する」などの希望するアクションを選択可能で、マネージャー側は面談までに準備をしたり、関連するテーマについての「Tips」などを参照できる。

なお、1on1面談はオンラインとオフラインの両方に対応しており、ニューピークスでは面談中のメモをリアルタイムで共有できる機能を活用しているため、オンライン面談の使用が多いという。また、話し合いで決めた項目については個別に管理して、履歴を振り返って状況を確認することも可能だ。

「もし話題が見つからないときは、サイコロを振ってランダムにテーマを提案するユニークな機能もあります。ちょっとした話題でも、回数を重ねるごとにお互いの距離が縮まります。非公開のメモも残せるので、プライベートな話題から関係性を深める効果もあります」

さらに、宇治田さんは面談で具体的な指示を出したり、説教のような場にしないことを心がけている。

「ついつい自分から話してしまいがちですが、相手の話をしっかり聞くことが重要です。相談内容は、最初は作業の進め方などスキル向上の話が多かったですが、徐々に話題が広がり、メンバーがモチベーションを上げるためのポイントを聞くことができたり、新たな気づきがあります」

 

マネジメントの成功とは

1on1面談サービスを導入して半年余りが経過したが、宇治田さんはすでに当初の目的であったカルチャーの浸透やモチベーション向上の手応えを感じ始めているという。ここからさらに次のステップに向けた考えを聞いた。

「これまではメンバーが自由に話したいことを中心に1on1面談を実施してきましたが、面談に慣れたこともあり、7月からは四半期ごとに達成したいミッションや、進捗で課題となっていることを一緒に考える時間を面談の最初の10分間で設けることにしました」

業務のアウトプットに関する評価は1on1面談で行わないが、目標をメンバー自身が宣言することによって、成長やキャリア形成に対する意識を高める効果を期待してのことだと、宇治田さんは話す。

「メンバーの成長を促すためにはマネージャーが指導するだけでは足りません。キャリアアップが実現できない場合、メンバーが自ら成長について考えたり、行動する意欲を与えるような組織の仕組みができていないことに問題があるのかもしれません。マネージャーとしては、それぞれのメンバーの成長を妨げる要因をひとつずつ取り除く仕組みを整えることが重要で、メンバーの成長が達成されたのであれば、マネジメントの取り組みの正しさが証明されたと捉えるべきでしょう。カケアイはその仕組みの改善に貢献していると実感しています」

 

 

ニューピークスの創業メンバーでクリエイティブプロデュース事業のマネージャーを務める宇治田智さん。現在のチームに所属し、ウェビナーの運営などのクリエイティブを担当する部下は7人となっている。「クリエイティブを担当するメンバーのほとんどはMacを使っています」。

 

 

ニューピークスは、オンラインイベントのプロデュースやライブ配信、デジタルマーケティングなどを手掛けるクリエイティブスタートアップ企業だ。【URL】https://www.new peaks.co.jp

 

 

Kakeaiは、MacやiPhoneなどのWebブラウザから利用できる。参加メンバーは次の面談のスケジュール調整や話したいトピックの選択、上司に期待する対応などを事前に行える。また、設定により上司と部下以外の1on1設定も対応可能だ。

 

 

ニューピークスで導入している1on1支援ツール「Kakeai」は、部下の本音を聞けないといった課題を解決できるBtoBソリューション。従業員数や業種・業態に関わらず多くの組織に導入可能だ。【URL】https://kakeai.co.jp

 

 

面談における上司の対応や感想を部下が匿名でフィードバックする機能も備わっている。部下からの評価データははAIに集約されて分析が行われ、上司がマネジメント能力を客観的に把握することも可能となっている。

 

 

1on1面談中は認識のずれが生じないように、リアルタイムでお互いのメモを共有できる。また、面談の内容の履歴を保存し、これまでの経緯や必要なアクションを確認可能だ。

 

ニューピークスのココがすごい!

□1on1面談を小規模のチームでも導入できた
□マネジメントを管理視点から従業員視点に転換
□企業カルチャーの浸透とメンバーの成長を実現