iPhoneとアプリが実現する「スマートダイエット」のすすめ|MacFan

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iPhoneとアプリが実現する「スマートダイエット」のすすめ

文●朽木誠一郎

Apple的目線で読み解く。医療の現場におけるアップル製品の導入事例をレポート。

食事管理アプリは、アドバイスを実行するだけで食事の摂取量が減少する。アクティビティ・トラッカーは、「着けるだけ」で健康に効果がある。「ガジェット好き」が、どのように日々のダイエットや健康管理と向き合えばいいか、紹介していく。

 

 

DXされるダイエット

5~6月は健康診断シーズン。そろそろ手元に案内が届いた頃ではないだろうか。そして、そんな知らせにギクリとした人も多いはずだ。勤め人であれば、1年に1回訪れる健康の総決算。しかし実は、本誌読者にとっては恐るに足りないものでもある。というのも、今はiPhoneやそのアプリ、さまざまなガジェットを活用した「スマートダイエット」により健康な身体を作りやすい時代だと言えるからだ。

大前提になるのが「レコーディング」の強みだ。かつてレコーディング・ダイエットなるものが流行したのを覚えているだろうか。これは「食事の内容をノートに記録していく」というシンプルな方法。しかし、その効果は医学的にも証明されている。記録することで、客観的に自分の生活習慣を確認、内省できることがその理由だ。これはメンタルクリニックなどで提供される認知行動療法の一種であるとも言える。

一方で、ネックになるのが「記録」という行為そのものの面倒くささだった。この最大の障壁は、しかしながら、DX(デジタル・トランスフォーメーション)により過去のものとなった。

たとえば「あすけん」「カロママ」といった食事管理アプリでは、食事の写真を撮影すれば、AI(人工知能)が自動的にメニューを判定、カロリーや成分をアプリに入力してくれる。アップルウォッチ(Apple Watch)は各種センサが歩数や心拍数、消費カロリー、睡眠状態などを測定し、自動的にiPhoneの「ヘルスケア」にデータを登録。フィットビット(Fitbit)やガーミン(Garmin)などのアクティビティ・トラッカーも同様だ。

レコーディングに効果があるのは、それだけ人間の主観と客観には大きな差があることの証明でもある。「今日はたくさん動いた」と思った日ほど実は消費カロリーが低かったり、「今日はあまり食べていない」と思った日ほど、むしろ摂取カロリーが高かったりするのだ。

一方、こうしたアプリやガジェットは実際に人を健康にするようだ。2020年に発表されたアイルランドの研究では、妊娠中の肥満女性にアプリを介してアドバイスを行ったところ、食事の摂取量が減少した。国内でも、2022年の食事管理アプリを使った研究で、保健師がアプリを介して食事指導を行うことで、やはり食事の摂取量が減少した。

また、アクティビティ・トラッカーについては、つけるだけで身体活動量、体組成、フィットネスレベルを改善し、それは1日1800歩の歩数の増加、40分以上のウォーキング時間の増加、1キロの体重の減少に相当したことが医学研究によりわかっている。

 

習慣化にもアプリが効果的

さて、便利なアプリやガジェットがあって、それらがいかに手軽でも、継続的に使用しなければ健康にはなれないだろう。ここで、人が健康になるために必要なものを示す「健康行動理論」がある。それによれば、いい生活習慣を継続するためには、「周りからサポートが得られること」が大きなポイントになる。

しかし、リアルの世界に必ずしも同じ目標の仲間がいるとは限らない。特に一定以上の年代になると、健康診断のために一緒にダイエット、というのも恥ずかしいものがある。

そんなときもやはりアプリが力になる。ここで紹介したいのが「習慣化アプリ」で、代表的なものに「みんチャレ」がある。同アプリでは同じ目標を持つユーザ同士が最大5人で1チームを組んで「習慣化」に取り組み、自分の挑戦した内容を、証拠写真とともに「チャレンジ」として1日1回、チームに投稿するのが決まりだ。メンバーに空きのあるチームを探すか、新たにチームを作成して参加できるので、リアルに仲間がいなくてもサポートが受けられる。開発元のエーテンラボが2020年の日本公衆衛生学会で発表した結果によれば、その成功率は「1人で挑戦する場合の2倍」だったという​​。

SNSを習慣化アプリ的に活用するというのも一つの手だ。たとえば、自分のアカウントで「これからダイエットをする」と宣言してしまうこと。コミットメント効果という心理学的効果により、言うなれば「あとに引けなく」なり、結果的にダイエットは成功しやすい。また、「いいね」はモチベーションを高め、サポートになり得る。投稿するため、より「いいね」をもらうために工夫すると、ゲーミフィケーション効果によりさらに継続しやすくなる。

有名な心理学の実験では、習慣が身につくまでの平均時間は「平均66日」や「18日から254日まで」などと幅があった。難しい習慣ほど長くかかるため、習慣化アプリのような新しいサポートを取り入れて向き合う必要があるだろう。

 

「趣味」が最強の健康法

ここまでアプリやガジェットによるスマートダイエットの方法を具体的に説明してきた。ここで一つ、不都合な真実として、医学的には不健康な人に「もっと健康にいい行動をするべきだ」と言っても、健康的な行動をしないことがわかっている。不健康な生活をしていることには、仕事のストレスや過労、ハードな育児など、社会経済的な理由があり、正論だけでは変えられないのだ。

人が本当に健康になるには、誰に言われなくても自らする行動と健康が結びついている必要がある。すなわち「趣味」である。

わかりやすい例として、2016年頃から流行しているゲームアプリ「ポケモンGO(Pokemon GO)」がある。ゲームのプレイ要素の中に「歩行」「移動」が盛り込まれたもので、「ドラクエウォーク」アプリなども同様だ。

ゲームが楽しくて好きになればなるほど自ら歩くようになり、健康にもいい影響がある。「夜中までゲームをしてしまった」があり得るように、「昨日はポケモンGOのために20キロも歩いた」があり得るのだ。

食事管理アプリをきっかけに、ヘルシーかつ満足できるような料理が趣味になることも、アップルウォッチやアクティビティ・トラッカーを導入したことで、ジョギングやサイクリングが趣味になることもあるだろう。現代人が健康になるためには、このように「好きなもの」を見つけることが大事になる。

その入口として、世界のありとあらゆるコンテンツやサービスにつながるiPhoneはうってつけだ。本誌読者もまた、こうしたテクノロジーが好きという時点で、健康になる大きなポテンシャルを有すると言えるだろう。

 

 

Garmin Connect

【開発】Garmin
【価格】無料
【場所】App Store>ヘルスケア/フィットネス

Garminのトラッカーで計測したある日の筆者の身体活動量。サイクリングが趣味なので基礎代謝は2000キロカロリー以上と多めで、長めのライドにより運動の消費カロリーも大きい。運動内容の詳細な分析も可能。

 

 

あすけん

【開発】asken inc
【価格】無料(App内課金あり)
【場所】App Store>ヘルスケア/フィットネス

無料ユーザでも多くの機能を使える「あすけん」アプリ。食事メニューを入力するとAI管理栄養士からのアドバイスがもらえる。この日は魚料理を中心にしたが点数はイマイチ(写真左)。摂取した栄養素の内訳も確認できる。

 

 

筆者の場合、体重はこの数年間、体重計と連動したアプリで管理している。傾向を掴むことで、太ってきた自分に気がついたら戻す、といったことが可能になる。

 

健康診断で「運動してますか?」と言われたら最初に読む本

多くの人が健康にいいと思っている行動は、ほとんどがムダな努力。必要なのは、医学的に有効な“ルーティン(習慣)”を生活に取り入れること。これだけで、健康診断の結果が良い方向に変わる。本書では付け焼き刃でも、理想論でもなく、誰でも簡単に運動習慣が身につき、理想の体型になる方法を紹介している。
【著】 朽木誠一郎
【刊】 KADOKAWA
【価】 1650円