「自分が受けたことのない授業」で生徒の深い学びを実現!|MacFan

教育・医療・Biz iOS導入事例

「自分が受けたことのない授業」で生徒の深い学びを実現!

文●三原菜央

Apple的目線で読み解く。教育の現場におけるアップル製品の導入事例をレポート。

関西学院千里国際中等部・高等部は、インターナショナルスクールと協働する学校として、真に国際的な環境を実現している。同校にて生徒の創造性を育む理科の授業を実践しているのが2017年に入職した岡本竜平教諭だ。同校が母校だという岡本教諭に、生徒の深い学びを実現するICTを活用した実践について話を聞いた。

 

 

日本で唯一の国際的な環境

日本で唯一、インターナショナルスクールと協働する関西学院千里国際中等部・高等部は、一般生徒、帰国生徒、外国籍生徒が3分の1ずつ在籍する、真に国際的な環境を実現している。理念や一部の科目(音楽・美術・体育と一部の英語)、クラブや特別活動を日々共にし、全施設を共同利用しているという。学習面では、1991年の開校当初から「国際バカロレア(IB)」の理念を取り入れた対話型・思考型の学習を重視し、大学との連携により高度な教育を提供している。

そんな同校の卒業生でもある岡本竜平教諭は、6年前の2017年に理科教諭として母校に帰ってきた。岡本教諭が在校生の頃から、ICT教育は盛んであったと振り返る。

「本校は設立時よりコンピュータ教育に力を入れていました。生徒たちは学校専用アカウントを持ち、サーバに自分の課題を保管する仕組みも当初から整備していたのです。それは世界の動きを意識し、テクノロジーの採用でも先行していた大阪インターナショナルスクールと常に情報共有できる環境にあったことが大きかったと思います。2009年には教員・生徒・保護者を対象にGメールを導入し、2012年には高等部ではじめてのタブレット端末としてiPadを導入しました。グーグルドライブを活用した共同作業もこの年から活発になりました」

教育におけるICT活用を先駆的に進めてきた同校の高等部は、2015年には文部科学省からスーパーグローバルハイスクール(SGH)の指定を受ける。採択を機に、高等部の生徒から、自身のパソコンを学校で使いたいという要望が急増し、2017年に高等部でのBYOD(Bring Your Own Device)がスタート。現在では、中等部生のBYOD環境も整いつつある。

 

岡本竜平教諭

関西学院千里国際中等部・高等部理科教諭/専門的成長主任。関西大学中等部・高等部にて6年間勤務した後、2017年より母校である関西学院千里国際中等部・高等部へ。中学では理科、高校では化学を担当。日本だけでなく世界の教育者と交流を深め、広い視野を持って教育を行う。日々の授業ではICTを活用しながら、創造性を育むような実践を展開している。Apple Distinguished Educator 2015。

Apple Distinguished Educator(ADE)…Appleが認定する教育分野のイノベーター。 世界45カ国で2000人以上のADEが、Appleのテクノロジーを活用しながら教育現場の最前線で活躍している。

 

 

デバイスに制限をかけない

同校では授業はもちろん、学校教育のあらゆる場面で日常的にグーグル・フォー・エデュケーション(Google for Education)を活用している。ICT端末は先述のとおりBYODで整備しているが、約8割の生徒がアップルデバイス(主にMac)を使用しているという。岡本教諭も、アップルの標準機能/アプリをおすすめのテクノロジーとして紹介することが多いそうだ。

「アップルの標準機能/アプリは、やはり教育との親和性が高く、素晴らしいんです。たとえば、協働学習の場面ではエアドロップ(AirDrop)を活用して、無線でのデータ共有をスムースに行い、発表の場面ではエアプレイ(AirPlay)で自分のデバイス画面をプロジェクタに無線投影することで、ダイナミックなプレゼンテーションを行うことができます。また、プログラミングを学ぶなら『スウィフト・プレイグラウンズ(Swift Playgrounds)』があるし、コロナ禍で楽器を演奏できないときも、音楽の授業で初心者でも音楽制作ができる『ガレージバンド(GarageBand)』を活用している場面も見受けられました。プレゼンテーションなら『キーノート(Keynote)』が使えますし、こうしたクオリティの高いアプリが1つのデバイスで完結するのが素晴らしいと感じる理由です」

学校でタブレットやスマートフォンを使用する際には、MDM(モバイルデバイス管理)を通じてセキュリティ対策をかけたり、一定のルール、制限を設けたりする学校が多い中、同校ではまったくそうしたことを行っていないという。

「ルールを敷いて制限をかけたり、禁止したりすることは簡単ですが、適切に積極的に活用しようというコンセプトのため、一切制限はかけていないです。ただ、テクノロジーの『善き使い手』になるという意識を生徒一人ひとりが持つために、本校では独自の『デジタル・シティズンシッププログラム』を導入しています」

そのような意識を持ちながらテクノロジーを学校生活のさまざまな場面で利活用している生徒たちは、授業においても深い学びを実現しているそうだ。岡本教諭が担当する中学部の理科の授業の中では、「植物はどのように子孫を残すのか?」という問いに答えてもらう形で、花の構造について説明する動画をグループごとに制作した。

「よりわかりやすい動画を作るためには、花の構造を正確に理解しなければなりません。そのために、生徒たちは何度も教科書を見返したり、実験を繰り返したりなどのアクションを起こしていました。動画制作においては、あまり制約を設けずに自由度を大事にしたところ、説明をわかりやすくするために立体の模型を作るなどの工夫が見られました。生徒のアウトプットを意識し、その過程を大切にした授業を実践することによって、花の構造についての知識がしっかりと生徒に定着したと感じています」

 

教員にこそ必要な創造性

同じく中学部で実践した「お天気情報番組をつくろう」では、日本の天気の特徴を科学的に説明できるようになることを目標に、オリジナルの「お天気情報番組」をグループごとに制作した。番組制作の過程で、天気に関する知識が体系化されることを狙った実践だ。完成した作品は、クラスで共有し、生徒間で相互評価を行った。

「テクノロジーを活用することで新たなアウトプットを経験することができ、作品の中に生徒自身の視点が加わることで、これまでの学びが自分ごとへと変化し、深い学びにつながっていきました。学習内容を自分ごととして捉えられるような仕組みを取り入れ、日々の学習活動の中で生徒のクリエイティビティが育まれるように、これからも生徒とともに授業を作り上げていきたいと考えています」

「自分が受けたことのない授業をつくること」を意識しながら、授業を計画していると語る岡本教諭は、今年度新たに新設された校務分掌に挑戦している。「専門的成長主任(Head of Professional Growth)」という肩書きで、教員の専門性を伸ばし、レベルアップを図るための企画・運営を担っているそうだ。

「ほかの学校でいうところの研究主任のような立場です。まだ手探りでやっているところもありますが、自分も含め本校の先生方のレベルをさらに上げていくために何ができるかという視点で、さまざまな取り組みに挑戦しています。具体的には、今年から職員会議がなくなりました。その代わりに週に1回、先生方の専門性を上げるワークショップを『アイデアフォーラム』という名称で1時間、放課後に実施しています。アイデアフォーラムの日は生徒のクラブ活動も休みにして、ちゃんと教員が集まれるように管理職も場を整えてくださいました。私は『each one is unique』という言葉が好きなのですが、他人との違いは個性であり、その個性が潰れることなくさらに伸ばすことが学校教育に必要だと考えます。そのためには、教員にこそ創造性が求められると感じています。そして、さまざまな教育者やクリエイターたちとアイデアをシェアし、コラボレートを図りながら、教育活動に創造性を持たせられるようにしていきたいと思っています」

 

 

ICT端末をBYODで整備する同校の高等部。約8割の生徒がAppleデバイス(主にMac)を使用している。中等部生のBYOD環境も整いつつあるそうだ。

 

 

同校では独自のデジタル・シティズンシッププログラムを導入。テクノロジーを自身の学習に適切に活用する意識を持つ生徒たちは、授業においても深い学びを実現している。

 

 

理科の授業の中で、花の構造を説明するビデオ制作に取り組んでいる中等部生と岡本教諭。説明をわかりやすくするために、生徒自らの発案で立体の模型を作るなどの工夫が見られた。

 

 

理科の授業の中で、日本の天気の特徴を科学的に説明できるようになることを目標に、オリジナルの「お天気情報番組」をグループごとに制作。グリーンバックを使用した本格的な撮影が行われた。

 

岡本竜平教諭のココがすごい!

□テクノロジーを活用し、主体的で対話的な深い学びを実現している
□ 「自分が受けたことのない授業づくり」に挑戦し続けている
□ 専門的成長主任として、教員の専門性を伸ばす場を構築している