Appleデバイスが企業DXに適している3つの理由|MacFan

教育・医療・Biz iOS導入事例

Appleデバイスが企業DXに適している3つの理由

文●牧野武文

Apple的目線で読み解く。ビジネスの現場におけるアップル製品の導入事例をレポート。

今、腰が重かった日本のDXが動き始めている。以前は、省力化とコストダウンを目的としてDXを進める企業が多かったが、コロナ禍を経て、ITによるビジネスモデルの変革に挑戦する企業が増え始めている。Appleデバイスは企業ユースに適合する特性を備えるため、この状況下でより活用される可能性が大いにある。

 

 

動き始めた日本のDX

DX(Digital Transformation)についての意識が日本企業の間で変化し始めている。日本情報システム・ユーザー協会がまとめた調査報告「企業IT動向調査報告書2022」(2021年度調査では東証一部上場企業とそれに準ずる企業4499社にアンケート調査を実施。有効回答数は1132社)によると、2020年度はコロナ禍の影響によりDXが広く普及し始めたものの、喫緊の課題だったテレワーク環境整備に集中したきらいがあった。しかし翌年の2021年度は、コロナ後のニューノーマル時代を見据えたDXにシフトをしていることが窺えるという。

この報告書の読みどころは、DXを「業務やサービスのデジタル化」という曖昧な捉え方ではなく、成熟度を段階的に区切った「3つのステップ」で定義し、各ステップの進捗状況や課題を調査しようとしている点。3つのステップとは、①単純自動化(老朽化したシステムの刷新/ワークスタイルの変化に伴うコミュニケーションツールの展開/紙媒体の電子データ化)、②高度化(分散したデータの統合や戦略的活用/IoTやAIなどを用いた業務の高度化)、③創造・革新(顧客への新たな価値の創造/ビジネスプロセスの標準化や刷新)を指している。

一見、このなかでもっとも簡単そうに見えるのは「単純自動化」かもしれないが、実はこれがDXにおける最大の関門でもある。なぜなら、これを念入りに行わないと、それ以降のステップである「高度化」や「創造・革新」を目指すことができず、無理に次のステップに進めようとすると失敗に終わってしまうケースが多いのだ。

 

コロナ禍での企業意識の変化

実際にDXを推進している企業は、この点をしっかり認識しているようだ。同調査において、IT投資で解決したい中長期的な経営課題を複数回答で尋ねたところ、非常に特徴的な結果が得られた。コロナ以前の2019年度は、DXの目的の圧倒的な1位は「省力化、業務コスト削減」だった。しかし、コロナ以降の2020年度、2021年度はこれが大きく減少。代わりに「ビジネスモデルの変革」「顧客重視の経営」が上昇した。DXに対する企業意識が、コスト削減のための「単純自動化」からビジネスに変革をもたらすための「創造・革新」に移っていることがはっきりと窺えるのだ。

この変化の理由は2つ想像できる。ひとつは、コロナ禍において「単純自動化」が急務になったこと。これが一定程度進んだ、あるいは見とおしが立てられるようになったことで、より高度なDXに視点が移り始めているのではないだろうか。もうひとつは、コロナ禍における業績の移り変わりやワークスタイルの変化だ。今までと同じビジネスモデルでは太刀打ちできないと、変革への必要性が痛感されるようになったのだと思われる。

 

アップルデバイスが適す理由

このような状況下では、Macを中心としたアップルデバイスがより多く活用されるようになるだろう。実は、アップルデバイスは企業DXに適した特性をいくつも備えているのだ。

その理由のひとつは「操作の互換性」だ。macOSやiOS、iPadOSは、メジャーアップデート前後でも高い互換性を保っている。OSをまたいでも基本的な操作体系が大きく変わらないため、企業がDXの計画を立てやすくなるのだ。たとえば、従業員500人の企業が1人1台にデバイスを付与しており、使用期間を5年に設定したとする。毎年100台ずつを新機種に置き換えていきたい場合でも、アップルデバイスであれば導入台数を平準化できる。ウィンドウズのメジャーアップデート時のようにOSの操作体系が大きく変わる場合はこのような平準化が難しいほか、異なる操作体系のデバイスが混在すると現場の作業プロセスに混乱が生じて負担が多くなる。

また、技術仕様が異なるOSの混在を避けようとしてOSのバージョンアップを先延ばしにすると、サポート終了前など差し迫ったタイミングで一斉にバージョンアップを行う必要が出てきてしまう。これは社内業務を滞らせるだけでなく、担当する情報システム部門の作業負荷も大きくなるのが問題だ。

2つ目の理由は、キッティング(業務で使える状態まで初期セットアップを行うこと)を自動化する仕組み「ADE(Automated Device Enrollment)」をアップルが提供していることだ。ADEは、アップルの法人向けサービス「ABM(Apple Business Manager)」をとおしてMacやiPhone、iPadを法人購入することで利用可能。購入したデバイスの電源を入れてネット接続を行うと、指定した内容で自動的に設定が行われるほか、システムを統合的に管理できる各種MDM(Mobile Device Management)ツールも紐づけてくれる。業務で使用するソフトやツールなどをMDMで指定しておけば、それらも自動的にインストールされるのだ。つまり、情報システム部門はデバイスの電源を入れて放置し、すべての設定が完了したら社員に配付すればよい。また、デバイスが梱包されたまま社員に配布して、社員自身が電源を入れるセルフ導入やゼロタッチ導入を行うことも可能だ。担当者がデバイスを手動でキッティングしていたケースでは、手動で設定を行うのは非生産的で待ち時間も長かった。その業務負担は計り知れなかったが、アップルデバイスであれば、情報システム部門が非生産的なキッティング作業から解放され、3つのステップで言うところの「創造・革新」に関わる業務に集中できるようになる。

3つ目の理由は、アップルデバイスの残存価値が高いことだ。アップル自社開発のM1チップが登場したためインテルMacの残存価値は下落しているが、これは例外的。総じて、残存価値は高く維持されている。販売業者によっては、残存価値を見越した残価設定型ローンやリースなどの仕組みを用意しており、これをうまく活用すれば、デバイスの導入における初期コストは大きく下げられる。

 

中小企業にこそアップルが合う

アップルデバイスは「マイクロソフト・オフィス(Microsoft Office)」が初期搭載されていないなどの理由で、長い間ビジネスシーンに入りづらかった。しかし、企業DXが進めば進むほど、ソフトに関わる問題は重要ではなくなる。現在のDXは、SaaS(Software as a Service)、クラウドツール類を自社の戦略と合致させて、いかにうまく使いこなすかが鍵になってきているからだ。そのため、近年では従業員がアップルやウィンドウズPCなど、都合のよいデバイスを選べるCYOD(Choose Your Own Device)制度を採用する企業も多くある。

先述の「企業IT動向調査報告書2022」によると、DXは大企業で進み、中小企業では遅れていることが見て取れる。しかし、Macは管理が楽であるため、小規模であれば従業員それぞれで管理運用することも可能。アップルデバイスであれば、遅れをとった中小企業のDXにうまくはまる可能性は高いと思われる。また、企業規模を問わずとも、日常業務とは別ラインで動くチームなど、小規模な単位での導入も向いているだろう。

日本のDXはコロナ禍をきっかけに考え方が変わり、本格的に始動しつつある。その中で、アップルデバイスは日本のDXにうまくはまる特性を持っているため、今後もこの連載の中で素晴らしいアップル導入成功例を紹介していきたい。

 

ステップ別のDX推進状況

DXの3ステップ別に見た推進状況については、入り口にあたる「単純自動化」は6割程度の企業が着手済みで、成果も上がり始めている。日本のDXは、次のステップである「高度化」や「創造・革新」に着手する段階に進んでいるのだ。

 

ビジネスモデル別のDX推進状況

ビジネスモデル別にDXの推進状況を調査した結果。BtoB、BtoC企業で大きな違いはなかったが、BtoB/BtoCのハイブリッド型企業ではDXが大きく進んでいる。表は、日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査報告書2022」より作成(以下3点も同様)。n数をはじめとした資料の詳細は、同協会のWEBサイトから確認できる。 【URL】https://juas.or.jp/activities/research/it_trend/

 

IT投資で解決したい中長期的な経営課題

企業がIT投資で解決したい中長期的な経営課題は、2019年度は「省力化、業務コスト削減」の割合が圧倒的。翌年以降は減少し、代わりに「ビジネスモデルの変革」「顧客重視の経営」が増加した。なお、2019年調査では「セキュリティ強化」の設問は設けていない。

 

従業員数別のDX推進状況

従業員規模別に見たDXの推進状況。5000人規模以上の大企業では、DXを推進している企業が半数を超える。一方、小規模の企業では進みが遅いことが見て取れる。

 

Appleビジネスサポート

Appleデバイスのビジネス導入に関する情報は、Apple公式WEBサイト内「Appleビジネスサポート」で詳しく解説されている。デバイスのビジネス導入を考えているなら、はじめに確認しておきたい。また、「Apple at Work」ページでは、海外企業が中心になるものの豊富な導入成功事例が紹介されている。【URL】https://support.apple.com/ja-jp/business

 

Appleデバイス×DXのココがすごい!

□OSのバージョンを問わず、操作体系や仕様に互換性がある
□キッティングを自動化する仕組みをApple自身が提供している
□デバイスの残存価値が高く、導入コストを下げられる可能性がある