文●松村太郎

米国時間2021年4月20日のスペシャルイベントで、アップルは新しいiMacを発表しました。このデザインを見て、私は2つの“懐かしさ”を感じたのです。

1つ目は24インチというサイズ。ここ数年のiMacのディスプレイは、21.5インチと27インチの2種類が定番化していますが、iMac(Early 2009)までは24インチディスプレイもラインアップされていました。もちろん、新しいiMacの本体サイズは2009年モデルと比べると軽量・薄型化されており、奥行きは「20.7センチ」から「14.7センチ」、重量は「11.5キロ」から「4.48キロ」まで減少しています。

2つ目は7色展開というカラフルさ。ブルー、グリーン、ピンク、シルバーという基本4色、アップル直営店とオンラインストア限定のイエロー、オレンジ、パープルの3色を加えた豊富なラインアップを誇ります。さらに、付属する純正キーボードやマウス、トラックパッドのアルミパーツも、ボディカラーに合わせてコーディネートされているのです。

それだけでなく、外箱の持ち手や電源ケーブル、付属するUSB-Cライトニングケーブルまでも、ボディカラーと同じファブリックがあしらわれているという徹底さ。購入して持ち帰る瞬間から、自分が選択したカラーで彩られるという演出になっています。

そもそもiMacは、オールインワンデスクトップとして1998年8月に登場。1999年1月に発売されたバージョンから「キャンディカラー」として、タンジェリン、グレープ、ライム、ストロベリー、ブルーベリーの5色が用意されました。これにより、「コンピュータもカラフルでいい」という新しい価値観をもたらすことに成功したのです。

約20年の時を経て、再び多色展開されるiMac。この半導体不足が叫ばれる今日において、あらゆる面で負荷がかかる7種類のバリエーションのリリースは、アップルにしか決断できなかったでしょう。その裏には、徹底した調達・製造・在庫・販売のマネジメントがあります。

一方で、少し異なるアプローチも読み解くことができます。それは、「新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)からの回復のお供にしてほしい」というアップルからのメッセージです。

日本にいると、まだまだ感染拡大が収まらないという認識の人が多いことでしょう。しかし、ワクチン接種が進む欧米では、すでに収束後へ向けた動きが加速しており、行動制限やマスクなどが取り払われる段階にまで達しつつあります。

とはいえ、リモートを取り入れるライフスタイルは変わらず続きます。コロナ後の世界を、少しでも明るく過ごしたい。仕事や学習のために、毎朝起動するコンピュータを華やかに彩ることによって、家の中から、新しい生活を豊かにしたい。こうした強烈にポジティブなマーケティングメッセージを、7色のiMacから読み取ることができます。

アップルは新型コロナウイルスが世界中で蔓延した2020年も、成長を続け、好決算で駆け抜けました。その要因はさまざまありますが、DX(デジタルトランスフォーメーション)の徹底がそのひとつではないでしょうか。

ビジネスを止めない、リスクを最小限にする、経営にスピードをもたらす、効率化してコストメリットをも作り出す、変化した世界に素早く対応する、といったさまざまな「DXの効果」がそのまま数字として現れていると分析することができます。

7色のiMacから、現在のアップルの組織の強さと、時代を創る視点の鋭さを感じずにはいられません。

 

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新しい24インチのiMacは、全7色のラインアップ。スペシャルイベントでは、1984年にMacintoshを発表したとき、また1998年にボンダイブルーのiMac G3を発表したときに使われた「hello」の文字とともに、カラフルなiMacが並べられた。

 

 

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Taro Matsumura

ジャーナリスト・著者。1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒業後、フリーランス・ジャーナリストとして活動を開始。モバイルを中心に個人のためのメディアとライフ・ワークスタイルの関係性を追究。2020年より情報経営イノベーション専門職大学にて教鞭をとる。