アラカルト “M世代”とのミライ

2030年の存在許可証明

文●松村太郎

毎年4月22日はアースデイです。冬から春に季節が移り変わり、木々が花を付けたり、新緑が芽吹いたりと、4月は自然の豊かさと力強さを感じることができる時期でもあります。自然の恵みを感じる日として、地球のことを考えようという機運が毎年大きくなっています。

若者世代に注目すると、スウェーデンの若き環境活動家グレタ・トゥンベリの「気候変動抗議運動」への共感が、世界中に拡がっています。たとえば米国のティーンエイジャーは、環境負荷が高いとされる牛肉をハンバーガーチェーンで避けるようになり、店側は代替肉のバーガーを用意して、なんとか足を向けてもらおうと躍起になっています。スーパーマーケットでも、牛肉は売り場面積が削られているともいいます。

そうした世代が消費者の中心になるミライは近づいています。「今の10代から存在を許可される企業になろう」。アップルはそんな焦燥感をにじませながら、iPhoneが牛肉のように毛嫌いされないため、必死になって実績を積み上げているように映ります。

アップルはアースデイに合わせて、世界の主要な直営店で、ロゴのリンゴの葉の部分を緑に装飾し、またスタッフも期間限定のグリーンのシャツを着て、アースデイへの賛同を表しています。

3年前の2018年、すでにアップルは世界中のオフィスや直営店で使う電力を100%再生可能エネルギーに転換しました。サプライヤーについても、2030年までに100%再生可能エネルギーへの転換を目標に掲げています。iPhoneのデザインから製造に至るまでの過程で、温室効果ガスを出さないことを目指しているのです。

またiPhoneの箱は2020年モデルで半分近くまでサイズが小さくなりました。これで、飛行機でより多くの台数を運べるようになり、輸送時の燃料と、そこから出る温室効果ガスを削減できます。

アルミニウムやプラスチックの再生素材利用も進んでいます。大量の電気を消費し、二酸化炭素を放出することが常識だったアルミニウムの精錬方法は、代わりに酸素を放出する技術を発見し、仲が悪いアメリカとカナダの大手企業の手を組ませ、実用化へ向けて投資しています。

アップルで環境問題を担当するバイスプレジデント、リサ・ジャクソンには、ほぼ毎年インタビューで、アップルと自身の環境問題への取り組みとその意義について聞いてきました。2017年2月、アップルパークのビルディング6ではじめて彼女と対面したときに印象的だったのは「環境問題が、現在アップルの中でもっともクリエイティブな仕事」と言い切ったことでした。

リサのもとには、世界中の社員から新しい環境のアイデアが集まってきます。時にはシリコン設計チームが電力効率について報告してきたり、アップルストアのスタッフから製品パッケージについての提案もあるそうです。アップル社内はすでに、環境負荷を減らすために人々の知恵が使われる状態になっているのです。

ティム・クックCEOのもっとも大きな功績のひとつは、オバマ政権で環境保護庁長官だった女性を、2014年に引き抜いたことだと思っています。誰のことかは説明不要ですよね。

アップルにおけるクリエイティブは、ジョナサン・アイブ(2019年退社)らインダストリアルデザインチームによって「あるべき姿を与える」ことから、「地球に存在してよい企業であり続ける」ことへの転換を果たしました。では、皆さんの身近な企業はどうでしょう。あるいは、皆さんの日々の行動や意識は、2030年にどうなっているでしょうか。

 

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アースデイになると、Apple Storeのリンゴの葉が緑色に染まります。ストアを訪れるだけで、自然と地球環境を意識するのです。

 

 

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Taro Matsumura

ジャーナリスト・著者。1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒業後、フリーランス・ジャーナリストとして活動を開始。モバイルを中心に個人のためのメディアとライフ・ワークスタイルの関係性を追究。2020年より情報経営イノベーション専門職大学にて教鞭をとる。