アラカルト “M世代”とのミライ

「Clubhouse」に 期待すること

文●松村太郎

音声SNSアプリ「クラブハウス」(Clubhouse)が2021年1月末から日本でも利用できるようになり、爆発的にユーザを増やしています。招待制であること、アーカイブ機能がないためリアルタイムで聞かねばならないという二重の“限定感”、そして著名人の間でも広がっていることで、彼らの違った一面が知れるという“コンテンツ力”の高さも相まって、世界的なトレンドとなっています。

クラブハウスの創業者の1人であるポール・デイビソンは、コンサルティング企業を経験したあと、スタンフォード大学に戻りMBA(経営学修士)を取得、ピンタレスト(Pinterest)などでの活躍を経て、2020年2月にアルファ・エクスプロレーション(Alpha Exploration Co.)を創業、その2カ月後にクラブハウスをローンチしました。ラジオのような懐かしいメディア体験を持つこのアプリには、いくつもの注目すべき「新しい要素」が詰まっています。

「クラブハウス」のアプリアイコンに注目すると、人物が表示されています。日本で利用できるようになった当初は、ボマーニXというミュージシャンがアイコンの人物に採用されていましたが、2月のアップデートで、今度もまたミュージシャンであるアクセル・マンスールが新たにアプリの“顔”になりました。

彼らはクラブハウス内のルームで音楽を奏でて、コロナ禍における人々の心を癒すという貢献を果たしてきました。讃えるべきユーザをアプリアイコンに据えるというその手法は斬新そのもの。

また、この2人が黒人ミュージシャンだったことも米国社会にインパクトをもたらしました。2020年は、「ブラック・ライブズ・マター(Black Lives Matter)」に象徴されるように、マイノリティへの抑圧と、これに反対の声を上げる活動に注目が集まった1年といえます。そうした背景で、アプリアイコンに黒人アーティストを採用したクラブハウスは、黒人コミュニティへの理解を真っ先に示すこととなりました。米国では黒人のクリエイターやセレブが積極的にクラブハウスに参加しているという話もあります。

こうした動きは、アジア人にとっても、決して他人事ではありません。その理由として、米国におけるアジア人へのヘイトクライム(憎悪犯罪)の横行が挙げられます。筆者が以前住んでいた北カリフォルニアも例外ではないと、現地の友人たちが警告を発しているほど。もはや日本人もヘイトクライムの対象であるという事実に心を痛めるばかりですが、クラブハウスで見た黒人コミュニティの活発さと比べ、アジアコミュニティは非常に対照的だと感じてしまいます。

クラブハウス内では現在、黒人医師を中心に、新型コロナウイルスに関するデマを正す活動が拡がっています。ワクチン接種に対するネガティブで間違った見識を話すルームなど、こうした活動が、米国社会をパンデミックからいち早く立ち直らせる特効薬になるかもしれない。そんな期待すら抱かせてくれます。

日本人がそうした状況において、クラブハウスというツールをどう使うのか?“フォロワー稼ぎ”に興じる前に考えるべきはことはないのか? 自分自身を見つめ直すきっかけになってほしいのです。

「正しいことを正しい」と言える場所は、Z世代(1990年代後半から2000年生まれ)にとって居心地のよい、身を置きたいと思えるコミュニティだと思います。既存のSNSに閉塞感を感じざるを得ない今だからこそ、クラブハウスには改めて、ユーザの“リアルな声”が行き交うプラットフォームになってほしいと願うばかりです。

 

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日本でもユーザ数を増やしている「Clubhouse」。米国では2020年4月にローンチされ、ベンチャー投資家らを中心に利用者を拡大してきました。

 

 

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Taro Matsumura

ジャーナリスト・著者。1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒業後、フリーランス・ジャーナリストとして活動を開始。モバイルを中心に個人のためのメディアとライフ・ワークスタイルの関係性を追究。2020年より情報経営イノベーション専門職大学にて教鞭をとる。



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