教育・医療・Biz iOS導入事例

次期OSアップグレードで教育現場のデバイス管理が激変する!

文●氷川りそな

Apple的目線で読み解く。教育の現場におけるアップル製品の導入事例をレポート。

米国時間6月22日からオンライン開催された「WWDC(世界開発者会議) 2020」。基調講演後に開かれた開発者向けセッションでは、教育分野における話題が例年以上に豊富だった。教育現場でのAppleデバイスの利便性が一気に高まる新機能の数々を見ていこう。

 

 

管理者にとっての「充実の年」

教育やビジネスの現場などで使われる大量のデバイスを一括で設定・管理を行うデプロイメント業務は、今や組織の大小に関わらず必須だといえる。その中でも「MDM(Mobile Device Management)」は近年、多様化の一途を辿るユーザニーズに応えるために、欠かすことができないツールだ。アップルはこの分野に関して20年以上の歴史と実績を持ち、こと教育におけるデバイス管理については、近年同社が特に注力しているトピックのひとつだろう。

アップルが開催する年次イベント「WWDC(世界開発者会議)」では、基調講演後の数日間でIT管理者向けにセッションが用意され、MDMに関しても継続的な機能改善を行っている。教育向けのトピックについては、児童生徒のデバイスやユーザの管理を行う「アップル・スクール・マネージャー(Apple School Manager:ASM)」がOSのアップデートに依存しないWEBブラウザベースのツールであることから、近年セッション数は減少傾向にあったが、今年は違った。新しいmacOSである「ビッグサー(Big Sur)」のリリースと並行して大規模なシステム改修が行われ、これに伴ったセッションが豊富に用意されたのだ。

その内容もMDMの初期セットアップに関わるものから、メンテナンスの自動化、ユーザ管理、そしてセキュリティなど、多岐に渡って充実している。これから学校のシステム管理者はどう対応すべきなのか。ここでは特に注目するべきポイントについて解説していく。

 

WWDC 2020で発表された注目トピックをチェック!

MDM機能

教育、ビジネスの現場において、複数台のApple製品を配付、管理、そして運用するうえで欠かせないのがMDMだ。これにより、管理者は導入端末すべてを管理下におき、ネットワーク経由で一元的にコントロールできる。導入時には、各端末をMDMツールに登録する作業が必要となり、その際に使用するのが管理者ポータル「Apple School Manager(ASM)」(ビジネス向けは「Apple Business Manager」)である。ASMを用いることで、端末自動登録プログラム「Device Enrollment」を利用し、購入したApple製品を自動的にMDMの監視下に置ける。これにより導入コストの多くを占める「キッティング(初期設定作業)」が不要になる。

今回の発表によると、セットアップ過程で表示される項目をより柔軟にカスタマイズできるようになるだけでなく、新たにEthernetでネットワークに接続したMacであれば、電源を入れるだけでセットアップを完全に自動化できる「ゼロ・タッチ」構成が導入される。また、モバイルデバイスではアプリ単位でVPN接続を提供し、暗号化されたDNSへの接続管理もMDMで行えるようになる。さらに、従来はアプリの削除を禁止するためにはホーム画面全体をロックする必要があったが、アップデートによって、アプリ単位で制御できる「削除禁止対象マーキング」機能も備わる。

 

 

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「Apple Developer」で公開されているMDMを中心に新機能全般を解説するセッション「Appleデバイスの管理に関する新機能(What's new in managing Apple devices)」は必見だ。 【URL】 https://developer.apple.com/videos/play/wwdc2020/10639/

 

そのほかの新しいMDM機能

●Mac
◦Mac Proが「Lights Out Management」に対応
◦MDMに登録されたMacの管理権限の自動化
◦プロファイルによるソフトウェア・アップデートポリシーの管理
◦管理対象アプリの編集
◦キャッシュサービスがインターネットリカバリーをサポート
◦通常ユーザが変更できる設定項目の見直し
◦管理アカウントをリモートで生成できる「Bootstrap Token」の導入
◦ハードウェア・シリアルナンバーのスクランブル化
●iPhone/iPad
◦Apple Configuratorがロケーション情報に対応
◦セットアップアシスタントのペイロードを導入
◦ショートカットの「Open In」サポート
◦タイムゾーンを使った認証や管理機能に対応
◦MACアドレスのスクランブル化

 

 

スクールワーク

授業運営に欠かせない管理機能を統合している「スクールワーク」はバージョンが2.0となり、インターフェイスデザインが一新。児童生徒に教材を一斉に配布しアクティビティを割り当てたり、課題の進捗状況を確認するといったワークフローが今まで以上に簡単に切り替えられるようになっている。

また、スクールワーク向けに開発されたアプリが利用できる内部フレームワーク「ClassKit」もこのリリースを機にアップデート。これに対応したアプリへと更新することで、「アクティビティセレクタ」ではサムネイルや要約情報が追加されるだけでなく、メタデータも今まで以上に豊富に表示できる。アプリ内に用意されたコンテンツに素早くアクセスすることができる「カタログAPI」なども新設され、アプリの操作に慣れていない教員でも授業を運営しやすいようになったといえる。

 

 

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5月にリリースされたスクールワークのバージョン2.0。デザインが刷新されただけでなく、内部で利用されるClassKitのアップデートによって、利用する学習アプリのメタ情報の拡充や、コンテンツのカタログ検索などが追加された。授業をより円滑に行うための工夫が随所に見られる。

 

 

クラスルーム

教員がiPadを最大限に活用して授業を行うためのアプリケーション「クラスルーム」は、スクールワークと同じタイミングでバージョン2.2へとアップデート。このクラスルームの最大のポイントは、新しくなったASMに統合され、クラスがよりシームレスに利用できるようになったことだろう。管理対象Apple IDでログインすることによって、ASMやスクールワークで作成したクラスが即座に表示されるようになっただけでなく、この秋からはクラスルームからASMやスクールワークで使うクラスを作成することができ、MDMならではの強みが活かせるようになる。

これ以外にもAirPlayのクラスコードボタンをタップするだけでApple TV上で児童生徒とクラス情報を共有できる機能、児童生徒のiPadの画面をピンチズームを使って拡大して調整することができる機能などが追加されている。

 

 

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クラスルームは単独でも利用できるソリューションだが、ASMと組み合わせることで授業ごとのコンテンツ配信が格段に容易になる。さらに、Apple TVを利用することで情報の共有も視覚的に容易になるなど、現場の意見を色濃く反映している。

 

 

共有iPad

学内にある共用のiPadに自分のデータを読み込んで利用できる「共有iPad」機能。ログインするためのアカウントとして管理対象Apple IDを利用するのが一般的だが、今回新たに「Microsoft Azure Active Directory」や「Okta」、「Ping」などの認証ベンダーを使ってアカウント管理とログイン(およびシングルサインオン)を行えるようになる。また、マルチユーザで利用することから、不足しがちなストレージ容量を管理するために各ユーザの使用量を設定したり、推定常駐ユーザ数とクエリ文字列のサイズクォータを追加。共有iPadからすべてのユーザを一度に削除することができるようになるなど、機能追加が行われる。さらに、要望の多かった「テンポラリー(一時)セッション」と呼ばれるログイン機能が提供される。これはサインイン認証情報なしで標準構成の環境が使用できるというもので、使用後にサインアウトするとそのセッション中に作成されたデータはすべて削除される。

 

 

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共有iPadでのログインはActive Directoryに対応したことで、ログイン後のアプリやサービスへのシングルサインオンも可能になる。ゲストログインやストレージ管理なども含め、一連のアップデートの中でも注目するべきポイントが多い機能だ。

 

 

自動評価設定

 MDM管理下のAppleデバイスを使って児童生徒が試験を受ける間、画面共有やユニバーサルクリップボード、読み上げといった機能をアプリ側からロックできる評価用アプリ向けフレームワーク「自動評価設定保護(Automatic Assessment Configuration)」がiOSに続いて、macOSにも対応するようになる。これによってデスクトップ環境などで、より多用途な試験環境を学内に構築することが可能になるだろう。またiOSでは、設定オプションを使用して、試験中に利用可能なシステム機能をカスタマイズすることもできる。

 

 

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テスト受験用に用いられる「評価モード」も待望のMac対応に。iOSとmacOSで同じAPIを用意し、「Catalyst」フレームワークを用いることによって、既存のiPad向けテストアプリをmacOSへと移植させることも容易になっている。

 



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