iPad Proで創造性を高める音楽家「☆Taku Takahashi」|MacFan

アラカルト 林檎職人

洗練された楽曲とスタイルで日本の音楽シーンを牽引

iPad Proで創造性を高める音楽家「☆Taku Takahashi」

文●らいら写真●黒田彰

アップル製品を使いこなすプロフェッショナルたち。彼らの仕事場にフォーカスし、その舞台裏を取材します。

 

 

( 職人とその道 )

 

☆Taku TakahashiDJ 音楽プロデューサー

1974年生まれ、横浜市出身。1998年にVERBAL、LISAとm-floを結成し、「come again」などのヒット曲を生み出す。個人では国内外のアーティストのプロデュースやRemix、アニメのサウンドトラックの監修、DJプレイなど幅広く活躍。エレクトロサウンドを中心としたネットラジオ局「block.fm」を主宰するほか、クラウドファンディング「CAMPFIRE」顧問も務める。

 

 

手書きメモが脳を刺激

1998年に音楽ユニット「m│flo」を結成し、活動休止を経て2017年に完全復活。個人としても、日本を代表する音楽プロデューサー/DJとして国内外で活躍するのが☆Taku Takahashi(以下、☆Taku)氏だ。m│floの未来的でスタイリッシュなビジュアルと、ジャンルレスなサウンドは、多彩なJ│POPシーンの中でも異質。同時に、唯一無二の絶対的な存在感を放つ。

2018年はm│floインディーズデビュー20周年、今年の7月はメジャーデビュー20周年を迎える節目の年となる。そんなメモリアルイヤーに精力的に活動する☆Taku氏の仕事道具には、Macをはじめとするアップル製品が欠かせない。

☆Taku氏は18歳の頃からMacを愛用しており、アップル製品使用歴は26年を超える。今は第2世代のiPadプロ、iMacプロ、MacBookプロを使って仕事をしているという。

特に、最近仕事でもプライベートでも活躍しているのが、11インチのiPadプロだ。ベゼル幅が狭くなったことで画面を広く感じた点や、☆Taku氏が好きなiPhone 4/4Sを彷彿とさせるデザインに惚れたのが購入の理由だという。また、iPadプロと組み合わせてアップルペンシルも活用している。

「僕は文字を書くのが好きなんです。アイデア出しのときなど、手書きだと結構インスピレーションが湧くことがあって、一つ前の世代からアップルペンシルは使っています。手書きの経験が少ない世代には当てはまらないかもしれませんが、僕はなにかしら脳の刺激のされ方が違うと思うんです」

手書きのメリットを感じる☆Taku氏は、以前から何冊もノートを買って、いたる場所でメモをとっていた。しかし、ノートを管理していなかったため、書いたあとは置きっぱなしになっていたという。「僕の場合はデジタル化しないと、どこに物があるかわからない」と☆Taku氏は笑う。

現在は、iPadプロの手書きメモはすべてアイクラウドで管理している。メモアプリの内容は自動で保存されるため、ノートの管理が苦手なユーザにも最適だ。

また、☆Taku氏はデバイス同士のアイクラウド連係にも魅力を感じている。たとえば、アイクラウドを使えば、iPadでメモした内容がiPhoneやMacに自動的に反映される。作業を途中まで進めて、同じアイクラウドでログインしている別のデバイスで再開するなど、シームレスな体験が可能だ。

「皆ハードウェアのほうに向きがちですけど、アイクラウドはすごくよくできています。モバイルで使いたいときはiPadで、曲を作りたいときはMacBookプロでと、アイクラウドによっていい役割分担ができます」

アップル製品を使っているとそれが当たり前のように感じてしまうが、ハードウェアとソフトウェア両方を開発するアップルならではの強みであることは間違いない。

「仕事でも、DJするときにiMacにしかその音楽データが入っていなかったんです。それをデスクトップにポンッと置いて、あとで別のMacで開いたら、同じものがこちらのデスクトップにもある。どのデバイスを使っても、同じ環境のように仕事ができるんです。アップルユーザにとってはそれが普通になっているんだけど、考えれば考えるほど実はエクスペリエンスとしてすごく便利だし、今の時代にフィットしていると思いますね」

 

音楽の現場ではMac

新しいiPadプロは、スペックだけを見れば、もはやミドルクラスのMacBookプロにも匹敵するパワーを持つ。しかし、音楽のプロの制作現場ではまだMacが主役の場合がほとんどだ。☆Taku氏も、iPadプロはメモや仕事上のメッセージのやりとり、海外ドラマ鑑賞での用途が多く、音楽制作で使うことは少ない。その理由は2つあり、1つは☆Taku氏が愛用するトラックメイク用のコントローラ「エイブルトンプッシュ2(AbletonPush2)」がiOS未対応であること。もう1つがファイル管理の難しさにあるという。

「シンセサイザーだけで作曲するなら、iPadだけでもいけます。ですが僕の場合、さまざまな楽器の音声ファイルを扱うんです。そうなると、macOSのほうがドラッグ・アンド・ドロップで簡単にデータを管理できるんです」

音楽制作では1曲あたり1GB近く消費するうえ、DJプレイのために扱う曲もあるため、音楽ファイルのデータ量は膨大になる。☆Taku氏のMac
BookプロのSSDは1TBあるが、それでも足りない。アイクラウドのストレージプランも最大の2TB(月額1300円)だ。

「曲制作専門もしくはDJ専門だったら、1TBでも足りるかもしれません。両方となると4TBは欲しい。だから、自宅のMacは4TBのiMacプロにしたんです」

自宅ではiMacプロだが、カフェや海外遠征先で曲を作るときにはMacBookプロを使う。今や世界を熱狂させる音楽が、カフェで生まれる時代なのだ。

 

( 職人と環境 )

 

 

仕事やプライベートで11インチのiPad Proを活用する☆Taku氏。「インスピレーションはApple Pencilでメモを書いたり、楽器アプリで遊んだりすることで湧いてきます」。

 

☆Taku氏が現場で使用しているPioneerのDJソフト「rekordbox」。音楽制作やDJプレイなど、Macが必須の現場も多い。「僕のMacBook Proの容量は1TBですが足りないです。DJのために曲をたくさん入れていて、中身はほぼ音楽ファイルです」。

 

☆Taku氏が主宰するネットラジオ「block.fm」の収録ブース。天井にはPHILIPSのスマートライト「Hue」が設置されており、自由に照明の色や明るさを変えられるようにしている。

 

仕事場の壁にはレトロなゲーム機や児童向けの音楽本など、☆Taku氏私物の雑貨や書籍が並べられている。雑貨はデザインに惹かれて衝動買いすることも多いという。。

 

iPhoneケースは「GRAMAS」を愛用。「スーツケースブランドの『RIMOWA』が好きで、似ているなと思って使ってみたらとても丈夫で気に入っています」。

 

 

「ガレージバンド」を絶賛

DJイベントでも、使用するのはMacBookプロだ。iPadプロでもスペック上は可能だが、ライトニング端子やUSB│C端子と互換性のある機材や、iOS対応のソフトウェアが少ない現状がある。また、DJの入れ替わりのスムースさや、置き場所の有無などの物理的な問題もあり、iPadは今の段階では現場向きではない。しかし、同時に大きなポテンシャルも感じるという。

「『djay』や『Tractor』など、iPad向けのDJアプリはすごく出来がいいんです。画面の触り方でいろいろなエフェクトをかけたり、音を加工させたり、iPadでしかできないプレイも実際に存在します。技術的にはできるので、あとは皆がどのくらいそこに予算を投資できるか。そのためにはユーザ数が必要ですが、今はまだiPadでDJプレイする風潮ではないですね」

一方、iPadでもプロレベルの曲が作れるソフトとして☆Taku氏が推薦するのが、アップル純正の音楽制作ソフト「ガレージバンド(GarageBand)」だ。

アップルが公開している教育者向けガイド「エブリワン・キャン・クリエイト(Everyone Can Create)」の音楽編では、ジャスティン・ティンバーレイクが登場し、ガレージバンドで音楽を手軽に制作する楽しさを伝えている。☆Taku氏も最近ソフトを起動する機会があり、初期と比べてクオリティの向上を感じたという。

「素人でも楽しく作れる工夫がされているし、最近はめちゃくちゃ音色もよくなっています。浅く楽しんでもいいし、今のガレージバンドならプロレベルの曲も作れます。目指したいゴールがあれば、誰でもたどり着けますよ。無料で使えるので、そこから試すのもありなんじゃないでしょうか」

 

( 職人と作品 )

 

 

m-floの最新デジタルシングル「epic」(2018年12月19日配信リリース)。スマホ時代ならではの、恋愛のときめきとドキドキ感をテーマにした楽曲だ。【URL】https://m-flo.com/

 

m-floが初のオリコンチャート第1位を獲得した2005年の4thアルバム「BEAT SPACE NINE」。加藤ミリヤ、BENNIE K、和田アキ子など豪華アーティストをゲストボーカルに迎えた1枚。

 

アイドルグループ・NEWSの10thアルバム「WORLDISTA」では、「Digital Love」「インビジブル ダンジョン」のプロデュースなどを担当。【URL】https://www.johnnys-net.jp/page?id=artistTop&artist=12

 

韓国のガールズグループ「EXID」の日本1stアルバム「TROUBLE」(2019年4月3日発売)。リード曲「TROUBLE」は☆Taku氏プロデュースによる書き下ろしで、1月23日より先行配信中だ。 【URL】https://exid-official.jp/

 

気鋭のシンガーソングライター・向井太一の2ndアルバム「PURE」では、収録曲「Break up」をプロデュース。恋人同士のすれ違いと別れ、そこから始まる新しい一歩を描いた楽曲。 【URL】http://taichimukai.com/