2019.03.05
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写真、ビデオ、アート&デザイン、プログラミングなどを無料で学べる「Today at Apple」がリニューアルされた。「スキル」「ウォーク」「ラボ」の3つのフォーマットで、参加者が効果的にスキルアップしていけるようにプログラムを改善。新たに加わったセッションにも注目だ。
直営店に求められるもの
1月末より、アップルストアで同社製品の使い方を無料で学べる無料プログラム「トゥデイ・アット・アップル(Today at Apple)」がリニューアルされた。リピーターが多いことで知られる同プログラムに、新しいセッションが追加され、内容のブラッシュアップが図られている。
トゥデイ・アット・アップルは2017年4月にスタートした。アップルストアにおける店内セッションというと、2001年のストア誕生以降、さまざまなワークショップが開かれてきたわけだが、それとは異なる。トゥデイ・アット・アップルは新世代のアップルストアのコンセプトである「タウンスクエア」に基づいたプログラムだ。アップルのリテール事業の原点といえる構想である。
一般的に電化製品の小売り店というと、価格や製品情報を前面に、製品販売を最大化するようにデザインされているイメージだろう。しかし、アップルストアには最初からスタッフに販売ノルマはなく、コミッション制度(歩合制度)も存在しない。“人々の生活を豊かにする場所”がスティーブ・ジョブズの思い描いたものだったからだ。来店者が製品に触れ、スタッフと会話し、サポートを受けたり、使い方を学ぶことを通じて、カタログやネットからでは取得できないものを得る。その体験が、ひいてはアップル製品のリピートにつながる。
モバイル時代になってネットで情報を集め、ネットで買い物を済ませるのが当たり前になり、販売店として実店舗の存在意義が問われるようになった。アップルによるとストアを訪れる人の約8割が事前にWEBサイトで製品について調べており、来店者の多くは製品情報の説明を必要としていないのだという。それよりも製品を実際に使ってみたり、サポートやアドバイスといったことを求めているということだ。
だから、アップルはストアの原点に戻り、タウンスクエアという「公共広場」をイメージさせるコンセプトで2016年からストア改革に乗り出した。ストアもアップルの体験の一部であり、同社はアップルストアを「最大のプロダクト」と表現する。その街にある意義、人と人が交わる場所としての機能とデザインを盛り込んだ建物がハードウェアなら、店内での体験がソフトウェアであり、その中核を担うのがラーニングプログラムのトゥデイ・アット・アップルなのである。
製品やサービスの使い方を教えるワークショップも、今やネットに情報があふれ、自宅で受けられるオンライン講座だって簡単に見つけられる。知識を得たり、学ぶためにわざわざ外に出かける必要はない。しかし、創作は1人でやり続けるものではない。ちょっとしたテクニックやアイデアを交換したり、誰かと協力して大きなプロジェクトに挑戦、または作品を見せ合うといった交流が楽しく、刺激になる。トゥデイ・アット・アップルは、そうしたネットからでは得られない人と人が交流する価値にフォーカスしている。
テクノロジー企業によるワークショップというと、エンジニアのような講師が登場してアプリケーションの使い方をあれこれと教えてくれるイメージだと思う。でも、アップルにそれは当てはまらない。トゥデイ・アット・アップルは学校ではない。たとえるなら、好きな部活やサークルに参加するのに近い。