2019.02.15
フリーライター・牧野武文氏が消費者目線でApple周りの事象を独自の視点で考察。
アップルウォッチはフィットネスや決済、通知ツールとしてだけでなく、「睡眠トラッカー」としても使えることをご存知だろうか。手首に着けて眠るだけで、睡眠時間を測定し、睡眠の質を分析してくれる。アップルウォッチはいかにして睡眠を把握し、ユーザに何を教えてくれるのか。これが今回の疑問だ。
加速度センサで状態を把握
アップルウォッチは人類に多大な貢献をしたと、数年後に言われるようになるかもしれない。それは「加速度センサ」を手首に着けるという習慣を広めたからだ。スマートウォッチはアップルウォッチだけではないが、腕時計型デバイスを使う習慣を広めたのがアップルウォッチであることに異論を唱える人はいないと思う。
なぜ、加速度センサを手首に着けることが重要なのか。それは加速度センサを手首に着けることで、人間の行動の自動記録ができるようになるからだ。腕というのは、体幹から肩関節と肘関節で接続された2本の棒のような構造をしている。手首はこの構造の制限の中で動くので、手首の運動量から姿勢を推定することができる。つまり、立っているのか、座っているのか、横になっているかがわかる。ちょっと想像をしてみても、立っているときは腕を下に伸ばすのが基本姿勢であり、座っているときは腕を折って膝の上やデスクの上に乗せ、横になっているときは腕を水平に伸ばしていることが多い。そこから構造の制限を受けて、腕が動く。
手首の運動でわかるのは、姿勢だけではない。個人の運動パターンを機械学習させることで、精密な行動記録を自動で収集することができるようになる。アップルウォッチを着けているだけで、自動的にライフログが記録されていくという世界もすぐに訪れそうだ。そうなれば当然、どのような業務をしているかも自動記録できるので、企業で従業員にアップルウォッチを配付し、業務効率の改善に役立てるという事例も登場してくることだろう。
心拍数をもとに睡眠を検出
しかし、手首の運動パターンだけでは、睡眠を判別することはできない。横になって安静にしているのと、睡眠状態になっていることの区別がつかないからだ。そこで、「心拍数」が重要になる。アップルウォッチの心拍数測定の仕組みについては、アップル公式サイト(https://support.apple.com/ja-jp/HT204666)に解説がある。
簡単にまとめると、心臓が鼓動すると血管を流れる血流が一時的に増える。赤い血液は緑色の光を吸収するので、緑色のLED光を照射し、その反射光を測定することで血流量の増減がわかる。これを一定間隔で測定することで、心拍数が推定できるというものだ。
睡眠に入ると、心拍数は安静時よりもさらに少なくなることがわかっている。つまり、加速度センサが手首の運動量から個人の状態を把握、なおかつ心拍数が安静時よりも下がったら睡眠、と判断することができるのだ。
スマートウォッチの睡眠トラッキングは、一般的にはこうして自動で睡眠状態を把握する。「これから寝ます」などとボタンを操作する必要はまるでない。