2019.02.04
Mac Fan独自の視点で、アップル周辺の最新ニュースや話題に切り込む!
2015年12月10日に東北エリア初の直営店としてオープンし、13年にわたって地域のファンに愛され続けていた「Apple 仙台一番町」が閉店した。一見、直営店ビジネスの衰退を示すようなニュースに思われるが、これによりアップルの投資戦略に基づく新たなロードマップを読み取ることができる。
杜の都へ別れ
去る1月25日、宮城県仙台市にあったアップルストア「アップル仙台一番町」が、その13年以上の歴史に幕を閉じた。国内では2016年の「アップル札幌」に次ぐ事例であり、これをもって北日本エリアに直営店がなくなったことを意味する。
折しも月初には、アップルが「ティム・クックからアップルの投資家への手紙」と題したプレスリリースを発表し、当初の売上高目標の大幅な下方修正を明かしたばかりだ。株価もここ数カ月で30%も下落しているなど、アップルに関する暗いニュースが続く中での先のストア閉店の一報のため、「日本でもアップルは衰退していくのか」と一抹の不安を抱える読者諸氏もいるだろう。
しかし、本件に関しては事情が別のところにあるようだ。アップル仙台一番町が店を構えていた仙台一番町一番街商店街「ぶらんど~む(VLANDOME)」は、宮城県下のみならず東北地方でも有数のトラフィック量を持つアーケード街である。エルメスやカルティエ、ルイ・ヴィトンなどが集中するいわゆる“ブランド街”などにも隣接する。
これだけを考えれば非常に好条件の立地だが、実際に確保できたアップル仙台一番町の店舗スペースは、お世辞にも十分と呼べるものではなかった。その構造も特殊で、間口は約7メートルほどと狭く、それでいて奥行きは約32メートルという“鰻の寝床”と呼ぶべき物件だ。このようなフロアでは、近年アップルストアが推し進めている「タウンスクエア」コンセプトに基づいた改修工事を行うと設計上無理が生じる。
もちろん、もっと広い場所に移転するというプランも検討していただろう。だが、アップルが直営店をオープンする場所の条件は厳しく、トラフィック量が高いだけでなく「ハイブランドエリアに隣接」「路面店」といった項目もクリアしなくてはならない。アップル札幌が「一時閉店」としながら未だに再開のアナウンスがないのも同様の理由のはずだが、ことアップル仙台一番町に関しては先々の仙台市の都市計画などを検討した結果断念し“閉店”と明言したと推察する。