2018.12.28
IT、モバイル、デザイン、アートなど幅広くカバーするフリージャーナリスト&コンサルタントの林信行氏が物申します。
ジョナサン・アイブ│アップルの動向に関心のある本誌読者なら、今さら説明は不要だろう。アップルの最高デザイン責任者だ。スティーブ・ジョブズはアップル復帰後、先行きに不安を感じ、しばらく経営に関わるのを拒んでいた。しかし、アイブとの出会いでアップルの未来に希望を抱き、経営トップに返り咲いた。その後、2人は、アップルをデザイン主導で物をつくる組織へと生まれ変わらせた。
新生アップルの最初の製品は21年前の初代iMac。ジョブズはこれを「まるで別の惑星からやってきたようなパソコン。いいデザイナーのいる惑星」と紹介した。技術レベルで言えば、同様のパソコンはインテルも提案していた。しかし、3ステップでインターネットにつながり、机の上に置いたときの設置面積も前後12センチ。そうなるべくブラウン管の形にあわせた卵型で、その形を優先したためにメイン基板は半円形。こんなパソコンはデザイン主導の会社以外からは出てこない、という形だった。その後、たくさんモノマネ品が出てきたが、真似していたのは表層だけだった。
iPodも同様で、技術的には似た製品がいくらでもあったが、「すべての曲をポケットに入れて持ち歩く」というコンセプトからデザインされたことで、あっという間に携帯型音楽プレーヤの代名詞になってしまった。後続製品の中にも、iPodに匹敵する見た目や使い勝手の製品はついに出てこなかった。
技術は真似できるが、デザインの本質は簡単には真似できない。未来を生み出すのは「しっかりとデザインする姿勢だ」とアイブは私に思い出させてくれる。