アラカルト FUTURE IN THE MAKING

未来を生み出すのは技術ではなくデザイン

文●林信行

IT、モバイル、デザイン、アートなど幅広くカバーするフリージャーナリスト&コンサルタントの林信行氏が物申します。

ジョナサン・アイブ│アップルの動向に関心のある本誌読者なら、今さら説明は不要だろう。アップルの最高デザイン責任者だ。スティーブ・ジョブズはアップル復帰後、先行きに不安を感じ、しばらく経営に関わるのを拒んでいた。しかし、アイブとの出会いでアップルの未来に希望を抱き、経営トップに返り咲いた。その後、2人は、アップルをデザイン主導で物をつくる組織へと生まれ変わらせた。

新生アップルの最初の製品は21年前の初代iMac。ジョブズはこれを「まるで別の惑星からやってきたようなパソコン。いいデザイナーのいる惑星」と紹介した。技術レベルで言えば、同様のパソコンはインテルも提案していた。しかし、3ステップでインターネットにつながり、机の上に置いたときの設置面積も前後12センチ。そうなるべくブラウン管の形にあわせた卵型で、その形を優先したためにメイン基板は半円形。こんなパソコンはデザイン主導の会社以外からは出てこない、という形だった。その後、たくさんモノマネ品が出てきたが、真似していたのは表層だけだった。

iPodも同様で、技術的には似た製品がいくらでもあったが、「すべての曲をポケットに入れて持ち歩く」というコンセプトからデザインされたことで、あっという間に携帯型音楽プレーヤの代名詞になってしまった。後続製品の中にも、iPodに匹敵する見た目や使い勝手の製品はついに出てこなかった。

技術は真似できるが、デザインの本質は簡単には真似できない。未来を生み出すのは「しっかりとデザインする姿勢だ」とアイブは私に思い出させてくれる。

 

 

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Nobuyuki Hayashi

aka Nobi/デザインエンジニアを育てる教育プログラムを運営するジェームス ダイソン財団理事でグッドデザイン賞審査員。世の中の風景を変えるテクノロジーとデザインを取材し、執筆や講演、コンサルティング活動を通して広げる活動家。ツイッターアカウントは@nobi。




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