教育・医療・Biz iOS導入事例

“Appleテクノロジーで、英語教育はまだまだ“深化”する!

文●神谷加代

Apple的目線で読み解く。ビジネスの現場におけるアップル製品の導入事例をレポート。

テクノロジーを活用すれば、もっとできることが増えるのではないか? 自身の留学経験をもとに、英語教育にApple製品を導入したのが大阪女学院大学の加藤映子学長だ。同大学ではiPadの一人1台環境で独自の英語教育を実践している。

 

始まりはiPod導入

大阪府大阪市の大阪女学院大学・大阪女学院短期大学(以下、大阪女学院)は長年、英語教育に定評のある学校だ。学生数は1学年250名ほどではあるが、少人数制を活かし、独自のカリキュラムを実施している。具体的には言語の4技能を融合させ、21世紀の課題を英語で学ぶ授業を行い、それについてリサーチやディスカッションを行いながら課題解決に取り組む「PBL(Project-based Learning)」を1987年から実施しており、もちろん講義はすべて英語で行われている。

そんな大阪女学院で学長を務めるのが、今回紹介するADEの加藤映子氏だ。加藤学長は大阪女学院の大学が開学された2004年に、iPodを学生が一人1台利用することを提案し、テクノロジーを活用した英語教育の導入を進めた。それ以前から大阪女学院短期大学ではリスニング教材やビデオ教材を自前で開発していたが、iPodを導入することで、それらにいつでもアクセスできるようにしたのである。そのあと、2012年にiPodからiPadへ切り替え、iBooksオーサー(iBooks Author)でマルチタッチブックなどの教材を開発し、独自の英語教育を確立していった。

「これまで“LL教室(言語実習室)に行ってテープを聞きましょう”、“ビデオを見ましょう”と言っていたものが、すべてiPadにまとめられて、いつでもどこでも学習できる環境になることに魅力を感じました。また私たちが行っているPBLの英語教育とも合わせやすいとも思いました。たとえば、ひとつのテーマについて英語の文献を読み、ディスカッションやプレゼンテーションをして、最後にライティングを行うといった活動なども、iPadが1台あることで一連の学習としてつなげやすいのです。以前はリーディング、ライティング、ディスカッションという具合に、それぞれの授業で個別のテキストがあったのですが、iBooksオーサーを使えばクイズやレクチャービデオ、音声教材など、ひとつに盛り込んだ教材を作ることができ、一本化を実現しました」

そして現在、大阪女学院では、大学と短大を合わせて約900台のiPadが稼働しているという。いつでも・どこでも学べる学習環境を提供しつつ、独自の英語教育と情報教育をiPadで実現した大阪女学院は、2017年にADS(Apple Distinguished School)に選ばれている。

 

 

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加藤映子学長

大阪女学院大学・大阪女学院短期大学学長。専門は言語習得とICTを活用した語学教育。2004年に同校でのiPod一人1台、2012年にiPad一人1台の学習環境を構築。その後iBooks Authorに出会い、長年自主作成されてきた1年次共通英語教材をiBooksに移行。2011年にADEに認定される。英語と韓国語を話すトライリンガルの語学力を活かし、世界中のADEと交流を行う。

Apple Distinguished Educator(ADE)…Appleが認定する教育分野のイノベーター。世界45カ国で2000人以上のADEが、 Appleのテクノロジーを活用しながら教育現場の最前線で活躍している。

 

 

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加藤学長は、Apple Books内で電子書籍を公開している。「ICTを活用した英語学習法」では、ICTを活用した英語学習法をまとめているほか、英語学習のためのおすすめのWEBサイトやアプリなども取り上げている。

 

 

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iBooks Authorで作られた大阪女学院の電子書籍。同学院のiPad活用や取り組みは、この1冊にまとまっている。興味のある人はiBooksから無料でダウンロードが可能だ。

 

 

国を超えたADEの交流

そんな加藤学長であるが、ADEに応募したきっかけは、友人の勧めだったという。加藤学長が応募した2011年当時はADEといっても、まだ日本では国内のインターナショナルスクールの教師が多く、日本人の教師は少なかった。その中で、加藤学長は持ち前の語学力を活かして、ADEを育成するボードメンバーにも選ばれるなど、日本人ADEとして活躍を続けている。

「ADEの魅力は、海外の先生とつながって互いに刺激し合えるという点です。私はずっとバイリンガルの環境で仕事をしてきたので、英語を使うのは当たり前ですし、海外の教育や先生にも触れる機会がありました。でも、そういった機会が少ない日本の小中高校の先生たちがADEのカンファレンスに参加するようになり、みるみる変わっていく様子を見て、こういう研修やコミュニティがいかに大切かを実感したんです」

そうしたことから加藤学長は、他国のADEと交流する活動を積極的に行っている。たとえば今年3月は日本のADEの中から有志を募り、韓国のADEが勤務する学校を訪れて、日韓合同の非公式のミートアップを行った。その際には韓国ADEの授業見学も組み入れることができたという。

「韓国の学校での、子どもたちのテクノロジーの活用には驚きました。彼らは私たちに韓国の文化を紹介してくれるとき、自分が言いたいフレーズをグーグル・トランスレータに入力して、日本語に訳された文章を音声で聞いてその場で練習し、それを私たちに伝えてくれたんです。その姿を見たときに、子どもたちも凄いと思いましたし、やっぱりテクノロジーは新しい可能性を与えてくれると思いました」

ほかにも日韓のミートアップでは、韓国でも盛り上がっているプログラミング学習について、互いに授業実践を紹介し合ったり、チームに分かれて動画制作を行うなど協働作業にも挑戦した。

「このようなADE同士の交流では、教師が明日から授業で使えるTipsを学んだり、“自分のクラスにも使えるな”と新たな気づきを得られることが多いのです。韓国のADEからは“教育者同士、言葉の壁を超えてひとつのミートアップをやり遂げられたことに感激した”と言葉をもらいました」

国を超えた教育者の交流で、教師はまだまだ成長できる。それが、ADEが持つコミュニティの強みだという。

 

iPadで学びの選択肢を広げる

このように教育とテクノロジーの可能性を信じて精力的に活動を続ける加藤学長。その原動力になっているのは何なのだろうか。

「英語の論理展開法の習得には時間がかかります。留学時に『フレッドライター(FrEDWriter)』というソフトを使って指導する機会がありましたが、論理展開を導くこのようなソフトの教育利用に興味が湧きました。それをきっかけに、コンピュータを使えばもっといろいろなことができるのではないかと思うようになりました」

大阪女学院では1991年からコンピュータを使った英語教育を実施することになり、真っ先にテクノロジーを活用した授業を開始した。

「英語を学んでいても、日本に住んでいてはなかなか話す機会が限られます。しかし、テクノロジーを使えば日本を紹介する動画を作ることで話す機会が作れるし、単語を暗記するときもテクノロジーを使うと発音が聞けたり、場所や時間に縛られない学習ができます。学びの選択肢や機会を作り出せて、いつでもどこでも学べる。学生にはそんな環境を与えていきたいと思ったのです」

具体的にいうと、大阪女学院では、語彙プログラムとして無料英語アプリ「メムライズ(Memrise)」を活用したり、多読プログラムとして教育機関向けオンライン図書館「エックスリーディング・ヴァーチャルライブラリ(Xreading Virtual Library)」をiPadで提供するなど、学生たちが毎日、英語学習に取り組みやすい環境を築いている。また、学生自身がiBooksオーサーを使用して卒業研究の成果物を作成するほか、アップル製品を利用して学生のクリエイティビティを引き出すコンピュータクラブ「Amigos de Apple」の活動にも力を入れている。

加藤学長はアップル製品の魅力について「キーノートを覚えたら、iBooksオーサーも使えるという具合に、どのソフトも同じような感覚で使えるところが良いです。またエアドロップのように、使いやすくて、教育に役立つ機能が多いと思いますね」と語る。今度も大阪女学院ではiPadやテクノロジーの活用範囲をさらに“深化”させ、新たな学びに挑戦していきたい考えだ。

 

 

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大阪女学院大学・大阪女学院短期大学の特色ある英語教育と教育ICTならびに学生生活でiPadを活用する「いつでも、どこでも学ぶ」の活用内容の多様性や学生自身の取り組みなどが評価され、「Apple Distinguished School 2017-2019」に認定された。

 

 

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加藤学長は韓国ADEのコミュニティとも交流が深く、今年3月には日韓のADEが合同でミートアップを開催した。加藤学長は英語以外にも韓国語を話す。

 

加藤映子学長のココがすごい!

□iPodやiPadなどのITデバイスを活用した英語教育を提案している
□国を超えたADEの交流など、教師が学べる場を創っている
□学生たちに学びの選択肢を与える教育環境の提供に力を入れている



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