第5回 幻の柿「禅寺丸」を探せ!|くらしの本棚

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第5回 幻の柿「禅寺丸」を探せ!

秋の果実といえば、柿。今回は神奈川県原産の、鎌倉時代から連綿と続く歴史深い柿「禅寺丸」をご紹介します。現在では栽培数が少なく、神奈川以外では中々お目にかかれない幻の柿です。

なつかしい柿「禅寺丸」

柿が美味しい季節となりました。甘柿の「富有」「次郎」をはじめ店頭に並ぶ柿の種類もさまざまです。柿の品種は1,000種類ほどあるそうで、その地域ならではの柿も多いといわれています。今回は神奈川原産の柿「禅寺丸」を紹介してみましょう。

東京や神奈川県東部の方なら、小田急小田原線の駅に「柿生(かきお)」という、「柿」が名前についた駅があることを知っているかもしれません。柿生(神奈川県川崎市麻生区)周辺は、「禅寺丸(ぜんじまる)」という柿の原産地で有名で、1889年(明治22年)に王禅寺村をはじめとして10村が合併したときに、柿という名前を採って、柿生村が誕生しました。柿生駅は戦前の1927年(昭和2年)、小田急電鉄小田原線が開通したときに、開業した由緒ある駅です。

「禅寺丸」の歴史は古く、1214年(建保2年)に、王禅寺境内で発見されたとされています。昭和30年代までは、禅寺丸は柿生駅から出荷されるなど、秋を彩る代名詞でしたが、だんだんと他の甘柿に押され、市場から姿を消していきました。

農林水産省の「平成26年産特産果樹生産動態等調査」によると、「禅寺丸」の栽培面積は関東地方をはじめたったの10.8ヘクタール。代表的な柿の「富有柿」が3769.2ヘクタールであることを見ると、いかに栽培が少ないかがおわかりになるでしょう。

どこに「禅寺丸」はあるの?

しかし、どこに「禅寺丸」があるのでしょうか。探したのは10月末だったので、10月21日禅寺丸柿の日には間に合いませんでした。柿生周辺の八百屋にあると聞いてでかけたのですが、駅周辺には見当たらず。ネットで調べると、柿生駅の隣駅、新百合ヶ丘駅から分離する小田急電鉄多摩線の黒川駅のJAの販売所にあるといううわさが。しかし到着したのが4時すぎだったので、「禅寺丸」は売れ切れ。1週間後、ようやく「禅寺丸」をゲットしたのでした。

「禅寺丸」は思った以上に小振り。「富有柿」と比べると大人と子ども。お値段はとみると、袋に数個入って、一袋200円か250円。状態のいい250円入り袋を選んで、家路についたのでした。

懐かしい味「禅寺丸」

「禅寺丸」は不完全甘柿。種の有り無し、多い少ないによって成熟時でも渋がのこるものもあるそうです。幸いにも買ったものはすべて甘柿でした。お味はというと、昔懐かしい味。すごく甘くもないのですが、干し柿のような昭和な柿の味。ついつい全部食べてしまったのはいうまでもありません。

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マイナビ出版 山本雅之()