第18回 今昔、わたしのワッフル事情|くらしの本棚

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第18回 今昔、わたしのワッフル事情

takako@caramel milk tea稲田多佳子さんがお菓子を焼く日々のあれこれを綴るエッセイ。
おまけのおいしいレシピもご紹介します。

甘芳ばしいバターの香りが漂うテイクアウト専門の小さなワッフル屋さんで売られていたリエージュタイプのワッフルと、お洒落に盛り付けられたプレートが目にもおいしかったお洒落なカフェのアメリカンタイプのワッフルに、感激したことが始まり。「こんな可愛くておいしいお菓子を自分で作って、焼きたてを家で食べられたら幸せだろうなー。」という思いに背中を押され、ワッフルを焼き始めました。

当時、私の知る限りではワッフルのレシピを扱う日本の書籍ってそんなに出ておらず、現在のようにインターネットでレシピを検索すればいとも簡単に、しかも山のようにヒットするような時代ではなかったので、洋書を見たり、ワッフルメーカーに付属していたレシピを参考にしたりして、試行錯誤。明らかにこれはワッフルではないよね、というものが出来上がったりして落胆したこともありましたが、それはそれでまた、楽しい思い出(笑)。

そんな甲斐あってか、今ではわりと安定して自分の思う味を自由に焼けるようになり、ワッフルが食べたい気分になる度、戸棚にしまってあるワッフルメーカーをごそごそと出して来て、時間がある日や差し入れおやつにはそのまま食べておしいよう生地自体に味をつけたリエージュタイプ、サクッと軽い生地にクリームをたっぷり乗せて味わいたい時にはシンプルな味のブリュッセルタイプ、発酵の時間が待てない、1分1秒でも早く用意したい時にはアメリカンタイプをと、状況に応じていろいろなワッフルを楽しんでいます。

ワッフルの代表的な生地について、少しお話しますね。イーストを使って生地をこねてまとめ、2次発酵までさせるという、パン作りにも少し似たプロセスで作るものが、リエージュタイプ。一般的に「ベルギーワッフル」とも呼ばれ、ややしっかりとした食べ応えの感じられる生地になります。
リエージュタイプと同じでイーストを使うけれど、こねずに泡立て器で材料を混ぜ合わせて生地を作り、1次発酵までで焼けるのが、ブリュッセルタイプ。外側にサク味があり軽やかで、内側は雲のようにふわっとしています。
アメリカンタイプは、イーストではなくベーキングパウダーで膨らませるため、発酵時間が不要。さっくりとしたホットケーキのような、カジュアルな印象の生地。ホットケーキやパンケーキの生地をワッフルメーカーで焼いて、アメリカンタイプのワッフルとされることも多いんじゃないかな。

それからもう一つ。小さな楕円に焼いた、赤ちゃんのほっぺみたいにふわふわで柔らかな生地を二つ折りにして、クリームを挟んだもの。表面は格子状ではないけれど、ワッフルと呼ばれていますよね。京都にある「欧風堂」という洋菓子屋さんのワッフルがちょうどそれで、ちょっと懐かしい昭和のお菓子みたいな雰囲気。粉と卵とミルクの風味が素直に感じられるやさしいおいしさはどなたにも喜ばれるので、私の手土産レパートリーのリストに入っています。

ワッフルを焼くには、ワッフルメーカーが必要不可欠。大昔の記憶をたどると、初めて購入するに当たって熱源は直火か電気かでずいぶん迷い、結果、選んだのが、電熱式でした。一度に両面が焼ける、全体がまんべんなく加熱されるため焼きムラが少ない、ホットサンド用の付け替えプレートもついているからワッフルに飽きても安心(笑)、等の点が、電熱式を選んだポイントだったと思います。そうして迎え入れたワッフルメーカーはビタントニオ社のもので、プラグをコンセントに差し込むといきなり電源がオン、抜くと電源オフという、シンプルかつワイルドな設計。プラグがスイッチを兼ねているの?と最初驚きでしたが、ただただおいしいワッフルをひたすら焼きます!という真っ直ぐな姿勢も好ましく、10年ほど愛用していました。現在使っているワッフルメーカーは2代目になり、同じくビタントニオ社のものです。

どのタイプのワッフルも好きで、わりと偏りなく焼いているのですが、最近特に気に入っているのがブリュッセルタイプ。口当たりがとても軽く食べ心地のよい生地は、はちみつやメープルシロップ、キャラメルソース、チョコレートソース、生クリーム、アイスクリーム、ジャム、フルーツ、スパイスなど、何を合わせても間違いがない。パンケーキやクレープを扱うような感覚で、焼き上がってからの皿盛りアレンジを幅広く楽しめるところが本当に楽しいです。

加えて作りやすいのがまた魅力的でして、ワンボウルで材料をぐるぐる混ぜたらラップして放置、膨らんだら後は焼くだけ。発酵を待つ間、他の用事をしながら時々様子を覗きに行く感じで進めています。案外あっという間なんですよ。急ぐ時は、家の中で暖かくなる場所に置いたり、オーブンの発酵機能を使えば、発酵時間の時短も可能。これから季節は夏に向かいます。気温も上がって来るので、こういった発酵菓子が作りやすくなりますね。

今回は、そんな魅力いっぱいの、ブリュッセルタイプのワッフルレシピをご紹介します。休日のブランチやおやつの時間に、のんびり気分で作ってみてくださいね。

ブリュッセル風プレーンワッフル

材料(4枚分)

  • A  薄力粉 40g
  •   強力粉 40g
  •   インスタントドライイースト 小さじ1/2
  •   グラニュー糖 20g
  •   塩 ふたつまみ
  •  
  •   牛乳 110g
  •   プレーンヨーグルト 30g
  •   卵 1個
  •   バター(食塩不使用) 30g

下準備

・卵は室温に戻す。

・牛乳とプレーンヨーグルトを合わせて電子レンジで人肌程度に温める。

・バターは電子レンジか湯煎にかけて溶かす。

作り方

① ボウルにAを入れ、泡立て器でよく混ぜてふるい合わせる。牛乳とプレーンヨーグルト、卵、溶かしたバターを加えてよく混ぜる。なめらかな状態になればOK。

② ラップをかけて室温に置き(季節にもよるが、1時間ほど)、生地が2倍くらいに膨らんで、表面にプツプツと泡が立つまで発酵させる。

③ 熱したワッフルメーカーに生地を流し入れ、色よく焼く。

④ 皿にのせ、粉砂糖をかけたり、泡立てた生クリーム、はちみつ、ジャムを添えるなど、お好みのスタイルでどうぞ。

プロフィール

稲田多佳子(著者)
京都に生まれ育ち、現在も京都で暮らす。
HP「caramel milk tea」 で手作りお菓子の写真を掲載したのがきっかけとなり、2004年にお菓子のレシピ本を出版。以来、年に数冊のペースでお菓子やお料理のレシピ本を出版している。代名詞といえば、焼きっぱなしの焼き菓子とロールケーキ。ひとくち食べると思わず心も笑顔になるような、毎日でも食べ飽きず作り飽きることのない、簡単でやさしい味わいのお菓子作りがモットー。
日本茶インストラクター、ティーアドバイザー、ジュニアオリーブオイルソムリエを取得。