第17回 一年中いつでも楽しめる果物のお菓子|くらしの本棚

くらしの本棚

第17回 一年中いつでも楽しめる果物のお菓子

takako@caramel milk tea稲田多佳子さんがお菓子を焼く日々のあれこれを綴るエッセイ。
おまけのおいしいレシピもご紹介します。

例えば、春にはいちご、初夏にはさくらんぼ、夏には桃、秋には洋梨や栗、冬には金柑、柑橘類。その季節ならではの旬のフルーツを使って、その時期にしか作れないお菓子を作るのには、わくわくするような楽しみがあります。今しかないもの、今がいちばんおいしいもの、となると、貴重な素材を扱う感覚で、少しばかり特別扱いしたくなるような、そんな気持ちもふつふつと。

対して、一年中安定して出回っているフルーツを使うお菓子作りには、親しみや安心感にも似た心地よさを感じます。スーパーに行くといつでも必ずあると言っていい、りんごやバナナやキウイ、グレープフルーツ。それぞれにもまた旬はあるものの、比較的いつでもおいしく食べられるから、好きな果物のお菓子を一年中焼いていられ、いつでも食べたい時に食べられることが本当にありがたいし、試してみたいレシピがあって、実際に作ってみて仮に失敗したとしても、トライ&エラーのチャンスは一年中あると思えることが、私にはとても心強くて。こちらもある意味、貴重な素材に値するのかも、ですね。

それらの果物は、そのままでもいただくしお菓子にも使えるしで、すぐに食べる分だけが欲しくてもバラで買うことって少なく、りんごやグレープフルーツなら袋入りで、バナナなら一房でと、何となくまとめて購入しています。だからわりといつも家にあって、りんごが1個あるからタルトにしようかなとか、グレープフルーツの最後の1個はマフィンに焼き込もうかな、みたいに、全く気負いなく緩い感じで付き合っています。

ことに、バナナに関して。食生活においては主人と私、大人二人の我が家。とりあえず一房買って来たバナナ、そのまま生でいただくスピードがバナナの熟して行く速さに追いつけなくなることが多いのだけれど、私にはそれがいいペースでして。
「1本ずつラップでぴっちり包んで、ポリ袋なんかに入れて冷蔵庫で保存すると長持ちするよ。」と、以前教えてもらったことがあるのですが、お菓子に焼き込むのにちょうどいい熟れ加減、充分に甘みが増したことを知らせる黒い斑点、シュガースポットの出現を今か今かと待ち構えているため、常にバナナはそのままで常温保存。シュガースポットが現れた瞬間から、バナナのお菓子フェアが始まる我が家です(笑)

バナナのバターケーキ、バナナのシフォンケーキ、バナナマフィン、バナナスコーンあたりは言わずもがなの定番で、キャラメルバナナにしてチーズケーキやタルトに焼き込んだりするのもかなりのお気に入り。最近では、バナナケーキに抹茶や白餡などの和素材を組み合わせることに、ちょっとはまっています。

お菓子を作るためにわざわざ果物を買いに行くのではなく、食べ切れずに残っている果物がひとつふたつと台所にあるから、それを使ってお菓子でも焼いてみようかな、という角度からの、お菓子作りとの向き合い方。何でもない毎日の中に見つけられる、あるもので愉しむ暮らしの知恵、みたいなものなのではないでしょうか。そんな風に考えると、お菓子を作ることがもっと身近になるんじゃないかな?なんて思う、私なのでした。

**

さて、今回は、一年中おいしく価格もお手頃な優秀素材であるバナナにくるみとメープルシロップを合わせ、バターケーキにしてみました。バナナとメープルの甘みが相まって、こっくりとしたやさしい味わいです。仕上げのアイシングはなくても大丈夫なので、お好みで。リング型がなければ、マフィン型でどうぞ。レシピの分量で、ちょうどマフィン型6個分。オーブンの温度は170℃、焼き時間は25分ほどです。

バナナとくるみのメープルリングケーキ

材料(直径18cmのリング型1台分)

  • A  薄力粉 85g
  •   ベーキングパウダー 小さじ1/2
  •  
  •   バター(食塩不使用) 85g
  •   グラニュー糖 65g
  •   塩 少々
  •   卵 1個
  •   アーモンドパウダー 30g
  •   メープルシロップ 15g
  •   バナナ 100g(正味)
  •   くるみ 60g
  •  
  •   メープルアイシング(粉砂糖25g、メープルシロップ小さじ2~3)

下準備

・バターと卵は室温に戻す。

・バナナは皮を剥き、フォークなどで粗くつぶす。

・くるみは160℃のオーブンで8分ほど空焼きして冷まし、好みの大きさに刻む。

・型にバターを薄く塗る(分量外)。

・オーブンを170℃に温める。

作り方

① ボウルにやわらかくしたバターを入れ、ハンドミキサーでクリーム状に混ぜ、グラニュー糖と塩を加えて、白っぽくふんわりとした状態に泡立てる。卵を2~3回に分けて加え、その都度しっかりと泡立ててよくなじませる。アーモンドパウダー、メープルシロップ、バナナを順に加え、その都度よく混ぜる。

② Aをふるい入れ、ゴムベラで底からすくい返すようにして混ぜる。粉っぽさがなくなり、なめらかになってからくるみを加えて全体に混ぜる。

③ 型に入れ、型を台などにトントンと打ち付けてならし、170℃のオーブンで30分ほど焼く。熱いうちに型から外し、ケーキクーラーに乗せて完全に冷ます。

④ メープルアイシングの材料をとろりとよく混ぜ合わせ、小さなスプーンなどでケーキの上にかけて仕上げる。

プロフィール

稲田多佳子(著者)
京都に生まれ育ち、現在も京都で暮らす。
HP「caramel milk tea」 で手作りお菓子の写真を掲載したのがきっかけとなり、2004年にお菓子のレシピ本を出版。以来、年に数冊のペースでお菓子やお料理のレシピ本を出版している。代名詞といえば、焼きっぱなしの焼き菓子とロールケーキ。ひとくち食べると思わず心も笑顔になるような、毎日でも食べ飽きず作り飽きることのない、簡単でやさしい味わいのお菓子作りがモットー。
日本茶インストラクター、ティーアドバイザー、ジュニアオリーブオイルソムリエを取得。