第14回 神戸の「juuri」|くらしの本棚

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第14回 神戸の「juuri」

この度、フリーライターの私が、取材の合間に寄り道したり、誰かに連れて行ってもらったり……。
そんなお店をご紹介する連載を始めることになりました。
とは言っても、私は元来マメな性格ではないので、話題の店にすぐ足を運んで……というショップ紹介ではありません。
日本のあちこちに、わあ、なんて素敵な場所だろう……と心を震わすお店がある。そこには、必ず素敵な人がいる。そんな出会いを、ご紹介できたらいいなあと思っています。

神戸の中心地、三宮からJRで10分ほど。
六甲道駅近くに今年4月にオープンした「juuri」は、ひとりでこっそり訪ねたい店です。
ひっそりと見えてくる黒い扉を押して中に入ると黒に近いグレーにペイントされた空間。
まるで小さなミュージアムのようです。

店主の幹さやかさんは、「マーガレットハウエル」や、神戸では知る人ぞ知るセレクトショップ「ダンタン」を経て、自分の好きなものだけを集めたこの店を作ったそう。
「juuri」とは、「根」を意味する言葉なのだとか。
幹さんご自身が、
・佇まいが美しいと感じるもの
・作り手の気配とともに物語が感じられるもの
・暮らしのなかにそっと静かに寄り添ってくれるもの
を集めました。

「この店で出会うものたちが、その人の時間の流れの中で優しくしなやかに根を伸ばしてくれたら……」という願いが込められているのだと言います。

棚に並べられているのは、繊細なアクセサリーから、オリーブオイルや、真っ黒な塩などの食品、グレイッシュな色合いが美しいタオル、ハーブティーなど 衣食住の垣根を越えて同じ視点で集めたれたもの。

ひとつひとつ眺めてみると、背筋がピンと伸びるような凛とした心持ちになります。

決して品数が多いわけではないけれど、
だからこそ、ひとつのモノとじっくり向き合うことができる……。
そして、ほかでは出会えないモノを連れて帰ることができる……。

今度は、どんなモノが待っていてくれるだろう……。
と訪れるたびにドキドキする。
そんなお店です。

juuri
神戸市灘区稗原町1丁目5-1
☎078-862-5815
営 13:00~19:00
月、火曜日定休
http://juuri.jp

プロフィール

一田憲子(著者)
1964年生まれ。編集者・ライター。OLを経て編集プロダクションへ転職後、フリーライターとして女性誌、単行本の執筆などで活躍。企画から編集を手がける暮らしの情報誌『暮らしのおへそ』『大人になったら着たい服』(ともに主婦と生活社)は、独自の切り口と温かみのあるインタビューで多くのファンと獲得。全国を飛び回り、著名人から一般人まで、これまでに数多くの女性の取材を行っている。著書に『「私らしく」働くこと』、『ラクする台所』(ともにマイナビ出版)などがある。